4-2 サンプル(標本)
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「心配しているのは主に生活や学校に関してということですか?」
「…よくわかりません。人間関係でしょうか。私は、恋愛感情を誰かに抱いたこともないし、恋人がいたこともほとんどないし、結婚も結婚式のイメージくらいしかないし…恋人がいるってクラスメイトはいたけど、遠い存在というか…あんまり人と親しい関係を築くのが得意ではないし…。そもそも、私の家は大事な試験の前とか発表会の後とかでもなければキスとかハグとかする家庭じゃないし…そういうことには慣れてないから、みんなどうやって付き合っているんだろうっていつも思ってて…」
言っているうちに何を言いたいのかわからなくなってきた。
利用価値があるからの結婚なのだから、別に恋愛感情関係ないし、そんなこと的場さんに言っても仕方ない。
「何言ってるのかわからなくなってきたので、やっぱり…今の話はなしです」
「……」
頭をブンブン振って今のごちゃごちゃした話を取り消そうとする私を的場さんは少し考え込むような表情で見下ろす。
「あの、こう…ごちゃごちゃしてくるから、自分の内面的なことをあまり言語化して考えたくないんです。だから、今の話はなしで大丈夫です!」
「高い情報収集能力、論理的な推論、合理主義的な考え…本当に精緻な思考を持っているのだと思いますが、心情的には年相応の初心で可愛らしい心配をしているものですね」
私自身もわからない私のごちゃごちゃを理解したのだろうか、的場さんはくすくすと笑う。
「まぁ、私は女性経験はそれなりにありますが、恋人や婚約者がいたことはないので、みんながどうやって付き合っているのかはわかりませんが」
「ホー」
さらりと大人な発言をする彼に何と答えていいかわからず、変なフクロウのような相槌を打ってしまった。
「何とも言えない相槌ですね。女性経験はあるけど恋人がいたことはないという状況について疑問に思ってます?」
意味ありげに的場さんは笑う。
「えっと…彼女がいたことはあるけれど、恋愛対象は男性ということ?」
「違います」
食い気味に否定された。
「壺といい、カルトといい…頭がいいのに、時々推論がとんでもない方向に進みますね。私的には恋愛対象は異性ですよ」
的場さんは軽くため息をついてこめかみに手を当てた。
「そうですか。日本では『付き合って下さい』『いいよ』というやりとりがない限り恋人関係がスタートしないから、たとえ『僕の子猫ちゃん』とか呼んでても恋人ではないとか?」
「プッ…あははははは…」
爆笑…。
「あははははは…ちょっと待って…ははは…」
「…日本は告白文化だと思っていたんですが、もしかして現実では『付き合って下さい』とか言わないですか?」
「いや、そっちじゃなくて…『僕の子猫ちゃん』がパワーワードすぎて君の答えが合っているのか判断つかない…ははは…付き合っていてもいなくても、『僕の子猫ちゃん』はない…そんなセリフ、大抵の女性はドン引きでしょう…ははははは…」
なんか超笑われてる。
心なしか言葉遣いも砕けた感じになっている。
素はこういう人なのかな?
「んー?ドイツでは『僕の宝物』が一番メジャーだけど、『僕の宝物』で家族でも恋人でもないのは流石に違和感だし、ちょっと年配層とか映画のイメージだし…僕の〇〇シリーズでは子猫ちゃんは割と普通な方かと思ったんですが…」
「日本人的には『どんなキザ野郎だよ』って感じですね」
「日本人は人前でイチャイチャしないから聞かないだけかと思っていました」
「二人きりでも多分ドン引きです。いや、人によるか…。英語で言う『マイハニー』的なものってことですよね?」
「はい。『僕のネズミちゃん』のほうがポピュラーですが、日本人的にはネズミはイマイチかなと思って。ウサギとかスズメちゃんとかいろいろあるので、私は心の中で『僕の〇〇シリーズ』と呼んでいました。『僕の砂糖カタツムリ』って謎な呼び方も聞いたことあるけど」
「それ、可愛いと思っているのか謎ですね」
「カタツムリは可愛いとかセクシーとか思われているからなのかなと思うけど、もしかしたら渦巻きパンのことなのかも」
指で宙に渦巻きを描いてみせる。
「私の狭い行動圏内で集めたサンプルでは、先輩カップルの『僕の砂糖カタツムリ』と私が言われた『僕のネズミクッキー』が私の中では二大びっくり愛称なんですが、子猫ちゃんもアウトなんですね…。てっきり『付き合って下さい』は少女漫画やドラマの世界だけだよってことかと思いました」
「いえ、告白して交際を始めるのは日本では普通の流れだと思います。先ほど言ったように私は彼女がいたことがないので、あくまでも同級生達を見た感じですが」
「校舎の裏に呼び出したり?」
「ええ」
「文化祭の後夜祭とかに?」
「ええ」
実際に見たことあるのだろう、にこにこと答える。
「わー少女漫画の世界ですね」
「あこがれますか?」
相変わらずにこにこしているけれど、意味ありげな視線。
「そういうのは外から見ているのがいいんですよ」
「それは同感です」
「『付き合って下さい』『いいよ』のやりとりがないと恋人じゃないというのが日本人の共通認識なんですか?」
「そこまでは言い切れないですが、恋人同士がするようなことをしていて少なくとも恋人同士になりたいなら、『付き合ってるってことでいいんですよね』とか訊くんじゃないでしょうか」
「なるほど…じゃあ、訊かない場合はグレーな関係なんですね。ん?的場さんはグレーな女性関係が多々あるってことですか?」
「あはは…グレーな女性関係はないですよ。恋人関係にはならないというお互いの共通認識の元でしか関係を持ったことがないので」
「…アダルトなかんじですか?」
「ええ、アダルトなかんじです」
にこにこと答えてくれるけれど、サバサバした感じではない。妖艶、とも違う。
…ああ、この人はメリットがないことには手を出さないのか。
「恋愛関係も婚約関係も、結ぶより解消するほうが面倒が多いからですか?」
「ええ、よくお分かりで」
合理主義的なタイプなのだろう。まぁ、家業のために結婚相手を選ぶくらいだ。
「…よくわかりません。人間関係でしょうか。私は、恋愛感情を誰かに抱いたこともないし、恋人がいたこともほとんどないし、結婚も結婚式のイメージくらいしかないし…恋人がいるってクラスメイトはいたけど、遠い存在というか…あんまり人と親しい関係を築くのが得意ではないし…。そもそも、私の家は大事な試験の前とか発表会の後とかでもなければキスとかハグとかする家庭じゃないし…そういうことには慣れてないから、みんなどうやって付き合っているんだろうっていつも思ってて…」
言っているうちに何を言いたいのかわからなくなってきた。
利用価値があるからの結婚なのだから、別に恋愛感情関係ないし、そんなこと的場さんに言っても仕方ない。
「何言ってるのかわからなくなってきたので、やっぱり…今の話はなしです」
「……」
頭をブンブン振って今のごちゃごちゃした話を取り消そうとする私を的場さんは少し考え込むような表情で見下ろす。
「あの、こう…ごちゃごちゃしてくるから、自分の内面的なことをあまり言語化して考えたくないんです。だから、今の話はなしで大丈夫です!」
「高い情報収集能力、論理的な推論、合理主義的な考え…本当に精緻な思考を持っているのだと思いますが、心情的には年相応の初心で可愛らしい心配をしているものですね」
私自身もわからない私のごちゃごちゃを理解したのだろうか、的場さんはくすくすと笑う。
「まぁ、私は女性経験はそれなりにありますが、恋人や婚約者がいたことはないので、みんながどうやって付き合っているのかはわかりませんが」
「ホー」
さらりと大人な発言をする彼に何と答えていいかわからず、変なフクロウのような相槌を打ってしまった。
「何とも言えない相槌ですね。女性経験はあるけど恋人がいたことはないという状況について疑問に思ってます?」
意味ありげに的場さんは笑う。
「えっと…彼女がいたことはあるけれど、恋愛対象は男性ということ?」
「違います」
食い気味に否定された。
「壺といい、カルトといい…頭がいいのに、時々推論がとんでもない方向に進みますね。私的には恋愛対象は異性ですよ」
的場さんは軽くため息をついてこめかみに手を当てた。
「そうですか。日本では『付き合って下さい』『いいよ』というやりとりがない限り恋人関係がスタートしないから、たとえ『僕の子猫ちゃん』とか呼んでても恋人ではないとか?」
「プッ…あははははは…」
爆笑…。
「あははははは…ちょっと待って…ははは…」
「…日本は告白文化だと思っていたんですが、もしかして現実では『付き合って下さい』とか言わないですか?」
「いや、そっちじゃなくて…『僕の子猫ちゃん』がパワーワードすぎて君の答えが合っているのか判断つかない…ははは…付き合っていてもいなくても、『僕の子猫ちゃん』はない…そんなセリフ、大抵の女性はドン引きでしょう…ははははは…」
なんか超笑われてる。
心なしか言葉遣いも砕けた感じになっている。
素はこういう人なのかな?
「んー?ドイツでは『僕の宝物』が一番メジャーだけど、『僕の宝物』で家族でも恋人でもないのは流石に違和感だし、ちょっと年配層とか映画のイメージだし…僕の〇〇シリーズでは子猫ちゃんは割と普通な方かと思ったんですが…」
「日本人的には『どんなキザ野郎だよ』って感じですね」
「日本人は人前でイチャイチャしないから聞かないだけかと思っていました」
「二人きりでも多分ドン引きです。いや、人によるか…。英語で言う『マイハニー』的なものってことですよね?」
「はい。『僕のネズミちゃん』のほうがポピュラーですが、日本人的にはネズミはイマイチかなと思って。ウサギとかスズメちゃんとかいろいろあるので、私は心の中で『僕の〇〇シリーズ』と呼んでいました。『僕の砂糖カタツムリ』って謎な呼び方も聞いたことあるけど」
「それ、可愛いと思っているのか謎ですね」
「カタツムリは可愛いとかセクシーとか思われているからなのかなと思うけど、もしかしたら渦巻きパンのことなのかも」
指で宙に渦巻きを描いてみせる。
「私の狭い行動圏内で集めたサンプルでは、先輩カップルの『僕の砂糖カタツムリ』と私が言われた『僕のネズミクッキー』が私の中では二大びっくり愛称なんですが、子猫ちゃんもアウトなんですね…。てっきり『付き合って下さい』は少女漫画やドラマの世界だけだよってことかと思いました」
「いえ、告白して交際を始めるのは日本では普通の流れだと思います。先ほど言ったように私は彼女がいたことがないので、あくまでも同級生達を見た感じですが」
「校舎の裏に呼び出したり?」
「ええ」
「文化祭の後夜祭とかに?」
「ええ」
実際に見たことあるのだろう、にこにこと答える。
「わー少女漫画の世界ですね」
「あこがれますか?」
相変わらずにこにこしているけれど、意味ありげな視線。
「そういうのは外から見ているのがいいんですよ」
「それは同感です」
「『付き合って下さい』『いいよ』のやりとりがないと恋人じゃないというのが日本人の共通認識なんですか?」
「そこまでは言い切れないですが、恋人同士がするようなことをしていて少なくとも恋人同士になりたいなら、『付き合ってるってことでいいんですよね』とか訊くんじゃないでしょうか」
「なるほど…じゃあ、訊かない場合はグレーな関係なんですね。ん?的場さんはグレーな女性関係が多々あるってことですか?」
「あはは…グレーな女性関係はないですよ。恋人関係にはならないというお互いの共通認識の元でしか関係を持ったことがないので」
「…アダルトなかんじですか?」
「ええ、アダルトなかんじです」
にこにこと答えてくれるけれど、サバサバした感じではない。妖艶、とも違う。
…ああ、この人はメリットがないことには手を出さないのか。
「恋愛関係も婚約関係も、結ぶより解消するほうが面倒が多いからですか?」
「ええ、よくお分かりで」
合理主義的なタイプなのだろう。まぁ、家業のために結婚相手を選ぶくらいだ。
