4-2 サンプル(標本)
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「さて、少しお話ししませんか」
「…はい」
威圧感も強要的なところもない穏やかで丁寧な言い方、仕草、表情。
でも、そっとしておいてほしいとはなかなか言えない。
「まず、ここでの生活で困っていることや聞きたいことはありますか?」
こういう大きな日本家屋って、夜おばけが出そうで怖いというのが一番に浮かんだけれど、祓い屋を家業とする人相手でなくても失礼かと思い直す。
「…爪切りたいんですが…」
「…爪切りなら洗面台の引き出しにいくつか入っているので、手前にある物でも奥の未開封の物でもお好きな物を使って下さい」
「ありがとうございます。明日見てみます」
あまり細かいこだわりがないけれど、細かな気遣いの出来るタイプなのだろう。
「爪切り以外でも、この間案内した範囲内では好きに過ごしていいし、置いてある物は好きに使っていいですよ。退屈ならリビングでテレビを見ていてもいいですし」
テレビは……。
「…どうかしましたか?」
ああ、また顔に心が出ていたかな?
「…退屈って感じたことがない感情です」
考えかけていた内容を別の言葉を発することで打ち消した。
「学校に行き始めるまでやることがなくて暇かと思ったんですが、そうでもないですか」
「考えることが何もない日はないので」
「何を考えているんです?」
「いろいろ…非周期的タイル張りみたいな数学上の未解決問題とか、プライムエディタで使うペグRNAの最適化についてとか」
「…頭の中だけで考えているんですか?」
本当は別のことを訊こうとしたような気がする。『他に考えるべきことがないのか』とか。
「実際サンプルを作って切り貼りしないのかということですか?」
そんなことここで出来るとは思えないけど。
「いえ、思いついたことを書き出したり計算したりしないのかなと。天才に対する単なるイメージですが」
「…何も忘れないから、思いついたことを書き出す必要も筆算や途中式を書く必要もないです。人に説明するとかアウトプットの必要がある時は書きますが」
「なるほど」
何か考えるように的場さんは少し上を見た。
「他に何か訊きたいことはありますか?」
他に…よく知らない人と話すのは苦手だ…訊かれたことに答える方が楽なんだけど…。
「……新しいローマ教皇は決まりましたか?」
「え?ローマ教皇、ですか?…夕方の時点では選出中とニュースで言っていた気がしますが」
質問の選択を間違えたかな。
「そうですか。決まったら…行きたいなと思って…」
「バチカンに?」
「…リビングに」
「ああ、テレビの話か。新しいローマ教皇を見たいのかと思いました」
「ローマ教皇の代替りなんて、そう滅多に見られないけど、わざわざ代替り前後の激混み時に一般謁見するほど熱心ではないです」
「そうですか。それならいいんですが」
そこまで熱心なカトリックではないけれど、新しい教皇の就任みたいな特別なきっかけがあれば、またテレビを見られるようになるかもしれない…。
「…はい」
威圧感も強要的なところもない穏やかで丁寧な言い方、仕草、表情。
でも、そっとしておいてほしいとはなかなか言えない。
「まず、ここでの生活で困っていることや聞きたいことはありますか?」
こういう大きな日本家屋って、夜おばけが出そうで怖いというのが一番に浮かんだけれど、祓い屋を家業とする人相手でなくても失礼かと思い直す。
「…爪切りたいんですが…」
「…爪切りなら洗面台の引き出しにいくつか入っているので、手前にある物でも奥の未開封の物でもお好きな物を使って下さい」
「ありがとうございます。明日見てみます」
あまり細かいこだわりがないけれど、細かな気遣いの出来るタイプなのだろう。
「爪切り以外でも、この間案内した範囲内では好きに過ごしていいし、置いてある物は好きに使っていいですよ。退屈ならリビングでテレビを見ていてもいいですし」
テレビは……。
「…どうかしましたか?」
ああ、また顔に心が出ていたかな?
「…退屈って感じたことがない感情です」
考えかけていた内容を別の言葉を発することで打ち消した。
「学校に行き始めるまでやることがなくて暇かと思ったんですが、そうでもないですか」
「考えることが何もない日はないので」
「何を考えているんです?」
「いろいろ…非周期的タイル張りみたいな数学上の未解決問題とか、プライムエディタで使うペグRNAの最適化についてとか」
「…頭の中だけで考えているんですか?」
本当は別のことを訊こうとしたような気がする。『他に考えるべきことがないのか』とか。
「実際サンプルを作って切り貼りしないのかということですか?」
そんなことここで出来るとは思えないけど。
「いえ、思いついたことを書き出したり計算したりしないのかなと。天才に対する単なるイメージですが」
「…何も忘れないから、思いついたことを書き出す必要も筆算や途中式を書く必要もないです。人に説明するとかアウトプットの必要がある時は書きますが」
「なるほど」
何か考えるように的場さんは少し上を見た。
「他に何か訊きたいことはありますか?」
他に…よく知らない人と話すのは苦手だ…訊かれたことに答える方が楽なんだけど…。
「……新しいローマ教皇は決まりましたか?」
「え?ローマ教皇、ですか?…夕方の時点では選出中とニュースで言っていた気がしますが」
質問の選択を間違えたかな。
「そうですか。決まったら…行きたいなと思って…」
「バチカンに?」
「…リビングに」
「ああ、テレビの話か。新しいローマ教皇を見たいのかと思いました」
「ローマ教皇の代替りなんて、そう滅多に見られないけど、わざわざ代替り前後の激混み時に一般謁見するほど熱心ではないです」
「そうですか。それならいいんですが」
そこまで熱心なカトリックではないけれど、新しい教皇の就任みたいな特別なきっかけがあれば、またテレビを見られるようになるかもしれない…。
