4-1 標本(サンプル)
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「痛い思いをさせましたね。もう済みましたよ」
どのくらい時間が経ったのかもわからなくなった頃、身体が抱き起こされる感覚とともに耳元で的場さんの声がした。
気づけば痛みは消えている。
気を失うことさえできないと思っていたけれど、知らぬ間に意識が飛んでいたようだ。
「翼にだけは傷をつけてしまいましたが…ああ、もう治ってますね」
あまり触れられた経験がないのもあり翼に触れられるのも嫌なのだが、疲れすぎて翼をしまうこともできず、大人しく的場さんに身を預ける。
「妖怪を傷つけずに生け捕りにするための術を施した矢なんですが、本当に君にも効くとは驚きというか、さすがというか…」
目を細めてまた羽根を指ですく。
…あんまり…触らないでください…
疲れ過ぎて声が出ない。
「身体だけ固定すると、羽ばたいて床に翼を打ちつけてしまうので…でも動けないのは動けないで苦しかったですよね」
抱き上げられて陣の外へ連れ出される。
「もう痛いことはしないので、安心して休みなさい」
瞼が重くて、的場さんの表情は見えない…。
昔からわりと何にでも興味を持つタイプだったが、蝶の標本は嫌いだった。
小さい頃、1羽の標本の蝶の羽がぼろぼろになってとれているのを見て、怖くなった。
羽ばたいても羽ばたいても逃れられない自分に重なって、怖かった。
しばらく経って、標本の蝶は昆虫針で刺されて、傷つかないように展翅板(てんしばん)に羽を固定されて乾燥させられてから標本箱の中に入れられると知った。
本当は羽ばたくことさえできないのだ。
今の、そしてこれからの私のように。
一体どちらが幸せなのだろうか。
後者の方がいいと思うのは、省エネ気質のせいか、わずかな希望を打ち砕かれるより絶望の中にいる方がマシだと思うからか、それとも…
どのくらい時間が経ったのかもわからなくなった頃、身体が抱き起こされる感覚とともに耳元で的場さんの声がした。
気づけば痛みは消えている。
気を失うことさえできないと思っていたけれど、知らぬ間に意識が飛んでいたようだ。
「翼にだけは傷をつけてしまいましたが…ああ、もう治ってますね」
あまり触れられた経験がないのもあり翼に触れられるのも嫌なのだが、疲れすぎて翼をしまうこともできず、大人しく的場さんに身を預ける。
「妖怪を傷つけずに生け捕りにするための術を施した矢なんですが、本当に君にも効くとは驚きというか、さすがというか…」
目を細めてまた羽根を指ですく。
…あんまり…触らないでください…
疲れ過ぎて声が出ない。
「身体だけ固定すると、羽ばたいて床に翼を打ちつけてしまうので…でも動けないのは動けないで苦しかったですよね」
抱き上げられて陣の外へ連れ出される。
「もう痛いことはしないので、安心して休みなさい」
瞼が重くて、的場さんの表情は見えない…。
昔からわりと何にでも興味を持つタイプだったが、蝶の標本は嫌いだった。
小さい頃、1羽の標本の蝶の羽がぼろぼろになってとれているのを見て、怖くなった。
羽ばたいても羽ばたいても逃れられない自分に重なって、怖かった。
しばらく経って、標本の蝶は昆虫針で刺されて、傷つかないように展翅板(てんしばん)に羽を固定されて乾燥させられてから標本箱の中に入れられると知った。
本当は羽ばたくことさえできないのだ。
今の、そしてこれからの私のように。
一体どちらが幸せなのだろうか。
後者の方がいいと思うのは、省エネ気質のせいか、わずかな希望を打ち砕かれるより絶望の中にいる方がマシだと思うからか、それとも…
