3-2 白黒のアドレッセンス・後編
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「図書館では何か調べ物でも?小さい図書館ですが、何かいい本はありましたか?」
あれ?この人は、私の居場所はわかっているけど、何をしているのかまでは把握していない?
私の行動の全てが筒抜けだと思いっていたので、ついしげしげと的場さんの顔を見てしまった。
「何か?」
と彼は首を傾げる。
「…私が何をしているかもわかるのかと思っていました」
正直に言おうか2秒だけ迷って、思ったことをそのまま口にした。
「どこにいるのかは大体把握していますが、何をしているかまではわかりません、残念ながら」
大体ってどのくらい?その大まかさが、書架にいるかパソコンスペースにいるかわからないということなのだろうか。
「本を調べていたわけではないんですか?」
本も調べていた。けれど、パソコンで得た情報のほうが多い。それが想定に入っていない時点で、彼が私の本質を全く理解していないということがわかる。
いや、私の本質?私の本質って何だろう?IQ高めでEQとSQ低め、探究心強めで過集中傾向、それが私。だけど、それも私の一側面に過ぎない。
翼があって、妖力が強くて、珍しい音羽の女。それも私の一側面に過ぎない。
そう、ただそれだけ。
ああ、ほんとに思春期みたいだ。
「ん?」
考え事をしている私の顔を興味深そうに的場さんが覗き込む。
「…内訳としては郷土史と民話の本を17分、パソコンに58分です」
「ああ、なるほど。君の携帯を預かったままでしたからね。誰かと連絡を?それとも調べ物ですか?」
「両方です」
「何を調べたんです?」
「高校の口コミとか…的場さんのこととか…」
「……口コミか、確かに今どきの有効な調べ方ですね。私のことはパソコンで何かわかることなんてありましたか?」
珍しく少し考え込むような不思議そうな顔をしたので、最初は何か違うことを言おうとしてやめたような気がした。
「…お姉ちゃんに『妖怪祓いをしている人って、高い壺とか売ってるかんじ?』と訊かれたけど…どちらかと言うと高い壺買ってる人なんだなということがわかりました」
運転手がプッと吹き出して、咳払いで誤魔化した。的場さんも笑っている。
「あはは、そうですね、どちらかと言うと高い壺買ってる側ですね」
「ボス、笑い事じゃないでしょう、今の話は」
助手席の七瀬さんが笑いを堪えたような表情で振り返る。
「ええ、わかってますよ。…そう、笑い事じゃない点が2つ」
彼は笑いながら七瀬さんに応えてから、スッと表情を変えて私を見つめて言う。
「1つ目は、私達が思っていたより君が祓い屋について知らないようだと今気がつきました。君のお母様方のご実家が祓い屋なので当然知っているものと思っていましたが、きちんと説明すべきでしたね、すみません。」
「ただ、その前に、2つ目。パソコンでどうやって高い壺を買っていることがわかるんですか?」
「……プログラムの組み方とか、アプリの作り方からですか?あ、スクリーンセーバの解除の仕方?」
どこから説明を求められているんだろう?
「…ええと、まずその情報は何からわかるんですか?」
「銀行の明細と確定申告と税務調査と売った相手の情報とかからわかります。現金のやり取りが多いと、クレジットカードや振り込みよりも手間がかかりますが」
「…その情報はどうやって入手するんです?」
少し難しい顔で訊かれた。
「自作のツールを使って、該当の情報の保管場所に合わせた手段でシステムに侵入して、欲しい情報を見ていくというかんじです」
「…もしかしてハッキングということですか?」
「…世間一般に言うハッキングというかんじです。正確には不正アクセスとかになるんでしょうか」
「…バレないんですか?」
「侵入されたことに気づかれるところには手を出さないです」
犯人がわからなくても捜査や謝罪させられて、不正アクセスされた企業はきっといい迷惑だ。
「……どうやら私は君を誤解していたようですね。人並外れて頭がいいのはわかっていましたが、記憶力のいい大人しい眠り姫かと思っていました。その実、天才ハッカーだったんですね。もしかして、現実世界にあまり興味なかったりします?」
「… そんなことはないつもりです…」
ネット環境がないと寝てばかりいるから、サイバースペースの引きこもりだと思われたかな?
「すみません、なんとなく、天才ハッカーというとパソコンに張り付いていて現実世界にはあまり興味がない人というイメージでした」
「私としては単なる情報入手の手段ですし、世の中のハッカーの大半は金銭入手とか現実的な目的が多いんじゃないかと思います」
「たしかに」
「ああ、でもたしかに飛び抜けて高い技術を持ったハッカーほど、趣味としてネットワークの監視をしている人やハッキングのスリルとかゲーム性に没頭しがちな人も多い気はしますね。あながちそのイメージも間違いではないかもです」
「なるほど、世の中いろんな人がいますからね」
にこやかに納得の意を示す的場さん。
あれ?この人は、私の居場所はわかっているけど、何をしているのかまでは把握していない?
私の行動の全てが筒抜けだと思いっていたので、ついしげしげと的場さんの顔を見てしまった。
「何か?」
と彼は首を傾げる。
「…私が何をしているかもわかるのかと思っていました」
正直に言おうか2秒だけ迷って、思ったことをそのまま口にした。
「どこにいるのかは大体把握していますが、何をしているかまではわかりません、残念ながら」
大体ってどのくらい?その大まかさが、書架にいるかパソコンスペースにいるかわからないということなのだろうか。
「本を調べていたわけではないんですか?」
本も調べていた。けれど、パソコンで得た情報のほうが多い。それが想定に入っていない時点で、彼が私の本質を全く理解していないということがわかる。
いや、私の本質?私の本質って何だろう?IQ高めでEQとSQ低め、探究心強めで過集中傾向、それが私。だけど、それも私の一側面に過ぎない。
翼があって、妖力が強くて、珍しい音羽の女。それも私の一側面に過ぎない。
そう、ただそれだけ。
ああ、ほんとに思春期みたいだ。
「ん?」
考え事をしている私の顔を興味深そうに的場さんが覗き込む。
「…内訳としては郷土史と民話の本を17分、パソコンに58分です」
「ああ、なるほど。君の携帯を預かったままでしたからね。誰かと連絡を?それとも調べ物ですか?」
「両方です」
「何を調べたんです?」
「高校の口コミとか…的場さんのこととか…」
「……口コミか、確かに今どきの有効な調べ方ですね。私のことはパソコンで何かわかることなんてありましたか?」
珍しく少し考え込むような不思議そうな顔をしたので、最初は何か違うことを言おうとしてやめたような気がした。
「…お姉ちゃんに『妖怪祓いをしている人って、高い壺とか売ってるかんじ?』と訊かれたけど…どちらかと言うと高い壺買ってる人なんだなということがわかりました」
運転手がプッと吹き出して、咳払いで誤魔化した。的場さんも笑っている。
「あはは、そうですね、どちらかと言うと高い壺買ってる側ですね」
「ボス、笑い事じゃないでしょう、今の話は」
助手席の七瀬さんが笑いを堪えたような表情で振り返る。
「ええ、わかってますよ。…そう、笑い事じゃない点が2つ」
彼は笑いながら七瀬さんに応えてから、スッと表情を変えて私を見つめて言う。
「1つ目は、私達が思っていたより君が祓い屋について知らないようだと今気がつきました。君のお母様方のご実家が祓い屋なので当然知っているものと思っていましたが、きちんと説明すべきでしたね、すみません。」
「ただ、その前に、2つ目。パソコンでどうやって高い壺を買っていることがわかるんですか?」
「……プログラムの組み方とか、アプリの作り方からですか?あ、スクリーンセーバの解除の仕方?」
どこから説明を求められているんだろう?
「…ええと、まずその情報は何からわかるんですか?」
「銀行の明細と確定申告と税務調査と売った相手の情報とかからわかります。現金のやり取りが多いと、クレジットカードや振り込みよりも手間がかかりますが」
「…その情報はどうやって入手するんです?」
少し難しい顔で訊かれた。
「自作のツールを使って、該当の情報の保管場所に合わせた手段でシステムに侵入して、欲しい情報を見ていくというかんじです」
「…もしかしてハッキングということですか?」
「…世間一般に言うハッキングというかんじです。正確には不正アクセスとかになるんでしょうか」
「…バレないんですか?」
「侵入されたことに気づかれるところには手を出さないです」
犯人がわからなくても捜査や謝罪させられて、不正アクセスされた企業はきっといい迷惑だ。
「……どうやら私は君を誤解していたようですね。人並外れて頭がいいのはわかっていましたが、記憶力のいい大人しい眠り姫かと思っていました。その実、天才ハッカーだったんですね。もしかして、現実世界にあまり興味なかったりします?」
「… そんなことはないつもりです…」
ネット環境がないと寝てばかりいるから、サイバースペースの引きこもりだと思われたかな?
「すみません、なんとなく、天才ハッカーというとパソコンに張り付いていて現実世界にはあまり興味がない人というイメージでした」
「私としては単なる情報入手の手段ですし、世の中のハッカーの大半は金銭入手とか現実的な目的が多いんじゃないかと思います」
「たしかに」
「ああ、でもたしかに飛び抜けて高い技術を持ったハッカーほど、趣味としてネットワークの監視をしている人やハッキングのスリルとかゲーム性に没頭しがちな人も多い気はしますね。あながちそのイメージも間違いではないかもです」
「なるほど、世の中いろんな人がいますからね」
にこやかに納得の意を示す的場さん。