3-2 白黒のアドレッセンス・後編
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出入り口に一番近い駐車スペースに黒い車。
運転手らしきスーツ姿の男の人が、こちらを見て一礼する。礼に応えて七瀬さんが軽く右手を挙げる。
車まであと8m、7m…逃げられるわけでもないのに距離をカウントして高まる緊張。
6m、5m…後部座席のドアが開いて、スーツ姿の髪の長い男性が出てくる。…的場さんだ。
「お姫様を回収してきましたよ」
「ご苦労さまでした」
七瀬さんの軽口に的場さんは笑顔で応える。
「どうぞ。」
と運転手ではなく的場さんが恭しくドアを開けて促す。
べつに無理矢理車に乗せられたわけではないけれど、気持ち的には無理矢理に近い圧を感じる。
怒っているのだろうか?
いつも笑っているような表情だから、よくわからない。
「…っ」
考え事をしていたら、隣に座った的場さんが急にこちらに身を乗り出してきたので驚いて変な声が出た。
「シートベルトをしてください。」
私の右肩側からシート側のバックルに向けてタングを引く。
手元を見ずに私の顔を見ている…。
目を合わせた方がいいのか、じろじろ見るのはよくないのか、あからさまに顔を逸らすのもよくないのか、よくわからなくて顔を動かせずに意味もなく彼の左耳を凝視してしまう。
カチッとタングがバックルにはまる。
自分で外せるシートベルトには何の拘束力もないのに、鍵を掛けられたような閉塞感。
「そんなに硬くならなくても、べつに何もしませんよ。」
ふっと笑って的場さんは座席に座って自分のシートベルトを締める。
「4日ぶりの外の世界はどうでした?楽しめましたか?」
「……」
ゆっくりと駐車場から発進する車。
気怠げにネクタイを緩めてからこちらを向いて微笑む。
どう答えていいかわからずに沈黙してしまう。
「市役所に相談するとは賢いですね。私たちは君の保護者からの同意を受けて君を預かっていて、違法性がないので警察に行っても仕方がないですからね。相談という形で訴えるというのは、正攻法だ。本当に健気でかわいいですねぇ。」
的場さんはくすくすと笑う。
籠の鳥が何とか外に出ようと羽ばたくのを楽しんで眺めているかのように。
「でも残念。いろいろコネがあって私達は市のお偉いさん方に顔が効くんですよ。今の時代でも迷信深い人というのは一定数いるものでね、一般職員にストップをかけられるような権力がある者は特にね。」
不敵な笑みを浮かべているであろう彼の顔を見ずに、自分の手に視線を固定する。
「それより君が教会から出てこない方が私達には困る状況だったんですけどね。キリスト教会は私達の顔が効かない場所ですから」
「とはいえ、私達は君の養育を任せられているので、それを主張すれば勝ち目がないわけでもないですが。」
婚約者が養育者というのは、養育上問題ないのだろうか?基本的に口が上手いし、法律関係を担当している人もいるようなので、その辺は抜け目なしと言ったところだろうけど。
運転手らしきスーツ姿の男の人が、こちらを見て一礼する。礼に応えて七瀬さんが軽く右手を挙げる。
車まであと8m、7m…逃げられるわけでもないのに距離をカウントして高まる緊張。
6m、5m…後部座席のドアが開いて、スーツ姿の髪の長い男性が出てくる。…的場さんだ。
「お姫様を回収してきましたよ」
「ご苦労さまでした」
七瀬さんの軽口に的場さんは笑顔で応える。
「どうぞ。」
と運転手ではなく的場さんが恭しくドアを開けて促す。
べつに無理矢理車に乗せられたわけではないけれど、気持ち的には無理矢理に近い圧を感じる。
怒っているのだろうか?
いつも笑っているような表情だから、よくわからない。
「…っ」
考え事をしていたら、隣に座った的場さんが急にこちらに身を乗り出してきたので驚いて変な声が出た。
「シートベルトをしてください。」
私の右肩側からシート側のバックルに向けてタングを引く。
手元を見ずに私の顔を見ている…。
目を合わせた方がいいのか、じろじろ見るのはよくないのか、あからさまに顔を逸らすのもよくないのか、よくわからなくて顔を動かせずに意味もなく彼の左耳を凝視してしまう。
カチッとタングがバックルにはまる。
自分で外せるシートベルトには何の拘束力もないのに、鍵を掛けられたような閉塞感。
「そんなに硬くならなくても、べつに何もしませんよ。」
ふっと笑って的場さんは座席に座って自分のシートベルトを締める。
「4日ぶりの外の世界はどうでした?楽しめましたか?」
「……」
ゆっくりと駐車場から発進する車。
気怠げにネクタイを緩めてからこちらを向いて微笑む。
どう答えていいかわからずに沈黙してしまう。
「市役所に相談するとは賢いですね。私たちは君の保護者からの同意を受けて君を預かっていて、違法性がないので警察に行っても仕方がないですからね。相談という形で訴えるというのは、正攻法だ。本当に健気でかわいいですねぇ。」
的場さんはくすくすと笑う。
籠の鳥が何とか外に出ようと羽ばたくのを楽しんで眺めているかのように。
「でも残念。いろいろコネがあって私達は市のお偉いさん方に顔が効くんですよ。今の時代でも迷信深い人というのは一定数いるものでね、一般職員にストップをかけられるような権力がある者は特にね。」
不敵な笑みを浮かべているであろう彼の顔を見ずに、自分の手に視線を固定する。
「それより君が教会から出てこない方が私達には困る状況だったんですけどね。キリスト教会は私達の顔が効かない場所ですから」
「とはいえ、私達は君の養育を任せられているので、それを主張すれば勝ち目がないわけでもないですが。」
婚約者が養育者というのは、養育上問題ないのだろうか?基本的に口が上手いし、法律関係を担当している人もいるようなので、その辺は抜け目なしと言ったところだろうけど。