お伽話の法則
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「じゃあ、そろそろ帰るね」
安心して穏やかに過ごせる時間というのはどうしてこうもあっという間に過ぎるのだろう。
心配して来てくれたんだと思っていたのに、思いの外あっさり帰っていく姉と、それに付いて来た妹をどう引き止めようかと考えをめぐらしてみたが、何も思いつかないまま門まで来てしまった。
「なんか挨拶くらいして帰ったほうがよかったかな?」
と言う姉にすかさず
「今お客さんと話してるから、話し終わるまで待ってる?」
と期待を込めて聞く。私の期待をよそに
「でも電車の時間あるから…。もうちょっとちゃんと見たかったけど、チラ見した感じではそんなに極道っぽくないしね。ま、よろしく言っといて」
相変わらず軽い姉。
最近任侠映画にハマっているらしく、家を見た彼女の第一声は「ホントに極道の家だったの!?」だった。
ホントにも何も、私は一度も「極道の家」なんて言ってないのに。
たしかに私も初めて来た時はそれっぽいと思ったけど。
「じゃね!よし、行こっか」
私を少しの間だけ強く抱きしめてから妹の手を引いて門を出ようとする姉。
「あ、私も…」
思わず口走ってしまう。しかしその続きは
「もうお帰りですか?」
という突然の声に阻まれ、喉元でせき止められた。
振り返ると声の主が立っていた。
この家の主で、的場一門の頭首、そして私の夫となる的場静司…さん。
「何もおかまいできずにすみません」
彼は一瞬だけ私に厳しい視線を向けると、すぐにいつもの穏やかな微笑をたたえて歩いてくる。
「いえいえ、こちらこそ急に押しかけてしまって…」
「またいつでもいらしてください。さやぎが喜びますから。もちろん私も」
さり気なく私の肩を抱き、自分の方に引き寄せることで私を一歩下がらせる。
「はい。では、妹をよろしくお願いします。あ、私の連絡先を…」
紙切れを取り出し、的場さんに手渡す。カタツムリのメモ帳。
「ありがとうございます。私の方の番号もお渡ししておきますね」
さり気なく私をまた一歩下がらせて私の肩を放し、取り出したメモ用紙に番号を書く。
姉が何か的場さんに話しているが、何を言っているのかは聞こえない。私に聞かれない話し方を姉は心得ている。
一緒に行けたらいいのに、という思いが寂しさを引き立てる。
的場さんからメモを受け取った姉は彼に一礼すると、妹と一緒に私に手を振って帰っていった。
「『私も』何と言おうとしたんですか?」
2人が見えなくなると、的場さんは笑顔で振り向いた。
やっぱり聞かれていた。笑顔で咎める彼に言い訳など通用しない。
見抜かれたとドキリとしたが、その感覚はすぐに胸の痛みに埋もれていく。
「君の帰るところはここです。帰す気も逃がす気もありませんから」
「帰りたい…と、言おうとしたわけではないんです。ホームシックになろうにも…最初から、帰りたい家なんてなかったから…」
いつも、家にいたくなかった。すぐにでも、家を出ていきたかった。
でも、他にいたい場所も行きたい場所もなかった。
どこにもいたくないし、どこにも行きたくない。
涙をごまかすように空を見上げたが、もとより涙なんて出ていなかった。
「私も」何と言おうとしたのか、自分でもわからない。
お姉ちゃんと妹ともう少し一緒にいたいと思っているのは確かだけれど。
「そうですか。…雨が降りそうですね。もう入りましょう」
彼はそれ以上追求せずに、また私の肩を抱いて邸の方へ向かう。
強い力ではないが、逃れることを許さないとでも言うようにぴったりと寄り添って歩く。
お姉ちゃんと妹と一緒に行きたかった。
いや、それは嘘ではないが言い訳で、本当は不安から逃げたいだけかもしれない。
何かを探すようにもう一度空を見上げたが、どこまでも曇り空が広がっているだけだった。
安心して穏やかに過ごせる時間というのはどうしてこうもあっという間に過ぎるのだろう。
心配して来てくれたんだと思っていたのに、思いの外あっさり帰っていく姉と、それに付いて来た妹をどう引き止めようかと考えをめぐらしてみたが、何も思いつかないまま門まで来てしまった。
「なんか挨拶くらいして帰ったほうがよかったかな?」
と言う姉にすかさず
「今お客さんと話してるから、話し終わるまで待ってる?」
と期待を込めて聞く。私の期待をよそに
「でも電車の時間あるから…。もうちょっとちゃんと見たかったけど、チラ見した感じではそんなに極道っぽくないしね。ま、よろしく言っといて」
相変わらず軽い姉。
最近任侠映画にハマっているらしく、家を見た彼女の第一声は「ホントに極道の家だったの!?」だった。
ホントにも何も、私は一度も「極道の家」なんて言ってないのに。
たしかに私も初めて来た時はそれっぽいと思ったけど。
「じゃね!よし、行こっか」
私を少しの間だけ強く抱きしめてから妹の手を引いて門を出ようとする姉。
「あ、私も…」
思わず口走ってしまう。しかしその続きは
「もうお帰りですか?」
という突然の声に阻まれ、喉元でせき止められた。
振り返ると声の主が立っていた。
この家の主で、的場一門の頭首、そして私の夫となる的場静司…さん。
「何もおかまいできずにすみません」
彼は一瞬だけ私に厳しい視線を向けると、すぐにいつもの穏やかな微笑をたたえて歩いてくる。
「いえいえ、こちらこそ急に押しかけてしまって…」
「またいつでもいらしてください。さやぎが喜びますから。もちろん私も」
さり気なく私の肩を抱き、自分の方に引き寄せることで私を一歩下がらせる。
「はい。では、妹をよろしくお願いします。あ、私の連絡先を…」
紙切れを取り出し、的場さんに手渡す。カタツムリのメモ帳。
「ありがとうございます。私の方の番号もお渡ししておきますね」
さり気なく私をまた一歩下がらせて私の肩を放し、取り出したメモ用紙に番号を書く。
姉が何か的場さんに話しているが、何を言っているのかは聞こえない。私に聞かれない話し方を姉は心得ている。
一緒に行けたらいいのに、という思いが寂しさを引き立てる。
的場さんからメモを受け取った姉は彼に一礼すると、妹と一緒に私に手を振って帰っていった。
「『私も』何と言おうとしたんですか?」
2人が見えなくなると、的場さんは笑顔で振り向いた。
やっぱり聞かれていた。笑顔で咎める彼に言い訳など通用しない。
見抜かれたとドキリとしたが、その感覚はすぐに胸の痛みに埋もれていく。
「君の帰るところはここです。帰す気も逃がす気もありませんから」
「帰りたい…と、言おうとしたわけではないんです。ホームシックになろうにも…最初から、帰りたい家なんてなかったから…」
いつも、家にいたくなかった。すぐにでも、家を出ていきたかった。
でも、他にいたい場所も行きたい場所もなかった。
どこにもいたくないし、どこにも行きたくない。
涙をごまかすように空を見上げたが、もとより涙なんて出ていなかった。
「私も」何と言おうとしたのか、自分でもわからない。
お姉ちゃんと妹ともう少し一緒にいたいと思っているのは確かだけれど。
「そうですか。…雨が降りそうですね。もう入りましょう」
彼はそれ以上追求せずに、また私の肩を抱いて邸の方へ向かう。
強い力ではないが、逃れることを許さないとでも言うようにぴったりと寄り添って歩く。
お姉ちゃんと妹と一緒に行きたかった。
いや、それは嘘ではないが言い訳で、本当は不安から逃げたいだけかもしれない。
何かを探すようにもう一度空を見上げたが、どこまでも曇り空が広がっているだけだった。
