3-1 白黒のアドレッセンス・前編
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書類系を見終えて、消していなかった写真を再び開く。
卒業アルバムの製作社をハッキングしたのか、今より若い的場さんの写真。髪ももっと短く、片目も隠していない。
『あと、最近右目に何かつけてるみたいだけど?』
『うん、でも何かはわからない』
『そこ何も説明しないの?ってか、訊かないの?』
普通は訊く?訊いたほうがよかったのか?
返事を入力せずに白い駒を進める。
複数のサーバを経由してダミーのパソコンを遠隔操作して、顔認証でヒットする映像を見ていく。
同時進行で医療記録を洗っていく。お抱えの医者がいるようだから調べにくい。
レセプトや医薬品の購入・処方履歴を見ていく。
怪我かな?
呪いに麻酔や鎮痛剤って効くのかな?
名前と顔がわかる的場一門の関係者の情報を拾いながら白い駒を左に進める。
『手籠にされたの?』
黒い駒が2マス進む。
『されてないけど』
白い駒を後ろに下げる。
『これからされるから逃げてきた?』
白い駒を1つ取られた。
『そういうわけじゃないけど』
白い駒を新しく置く。
どちらかと言うと、逃げたから手籠にされるかもしれない…。
『種付けするために連れて来てるんだから、遅かれ早かれ手は出すんだろ』
身も蓋もない言い方だけどたしかにそうだ…。
置いたばかりの白い駒が取られた。私の悪手だった。
うーん…痛いのはいやだなぁ、怖いなぁ。
メッセージなしで白い駒を置く。
『逃げるなら助けるよ、囚われのお姫様』
キングに当たる黒い駒が前進する。
王が出向いてやろうかというアピールだろうか、それとも私が読めていないゲーム上の戦略だろうか。
『ネズミ1匹殺すのに核兵器使いそうだから、あなたには頼まないわ』
白い駒を前進させる。
『ちぇっ笑』
黒のキングが元の位置に引っ込んだ。
『いろいろ調べてるけど、調べるために出てきたの?逃げるために出てきたの?』
私のターンなので駒なしでメッセージだけが表示される。
つまりは、帰るのか逃げるのかという問い。
『何かのためじゃないけど、なんか出てきちゃった』
いろんな人が出入りする邸。
悪気はないのだろうけど、みんないろいろ勝手な話をする。
訝しむ声、期待する声、心配する声…
何が嫌?
ああ、またごちゃごちゃしてきた…
『結局さ、そこにいるのは良いの、悪いの?何考えてるの?』
何考えてるの?
『わかんない。私の知らない私の能力、知っていたけど重要視していなかった一面にやたらと注目されて居心地悪い。期待が重い。妖力って何なんだろう?痛いことされるのが嫌。妖力取られるの苦しいから嫌だ。でも、そうしないと最近妖怪に見つかりやすくて狙われやすくなってる。妖怪、物理法則無視してくるから元々意味わかんないと思ってたけど、最近は私も自分のこともわかんない。IQ高めでEQとSQ低め、探究心強めで過集中傾向、それが私の特徴だったはずなのに、妖力がどうとか翼がどうとか…。大人の都合に振り回されてばっかりよ。ドイツに帰りたいわけじゃない。叔母さまの家に帰りたくもない。的場さんの家にもいたくない。行く宛もないし、行きたい場所もないし、もうどこにもいたくない。』
頭の中身をひっくり返すように、思いついたことを思いついた順に書き連ねて白い駒と共に盤上に叩きつけた。
こんなに感情的になったのはいつぶりだろう。
『そういうの何て言うか知ってる』
すぐに黒い駒と共にメッセージが置かれた。
『何?』
白い駒を進める。
『思春期』
進めた駒を取られた。
『なるほど』
たっぷり5秒考えて、今日最初に置いた白い駒を右前に前進させた。
『落ち着いた?』
駒なしでメッセージ。
『少し』
ここから近い教会を検索しながら答える。
大小さまざまな教会一覧。
『で、教会行くの?』
黒い駒が1マス進む。
『なんか、窓の外に大きい何かがいて、中に入ってきそうな気がするから、とりあえず避難』
幸い徒歩圏内にカトリック教会がある。
『教会には入ってこないの?』
『わかんないけど、カトリックの学校内には入って来なかったから』
『へー。Toi,toi,toi !』
『きっと失敗するわ』
『古風だね』
『案外古典的な対応が有効な気がする』
ゲームアプリや調べるために開いていたウインドウを全て閉じ、USBを取り出し、パソコンの履歴を消して、上から改竄した履歴を入れて、デスクトップが表示されたのを確認して席を立つ。
卒業アルバムの製作社をハッキングしたのか、今より若い的場さんの写真。髪ももっと短く、片目も隠していない。
『あと、最近右目に何かつけてるみたいだけど?』
『うん、でも何かはわからない』
『そこ何も説明しないの?ってか、訊かないの?』
普通は訊く?訊いたほうがよかったのか?
返事を入力せずに白い駒を進める。
複数のサーバを経由してダミーのパソコンを遠隔操作して、顔認証でヒットする映像を見ていく。
同時進行で医療記録を洗っていく。お抱えの医者がいるようだから調べにくい。
レセプトや医薬品の購入・処方履歴を見ていく。
怪我かな?
呪いに麻酔や鎮痛剤って効くのかな?
名前と顔がわかる的場一門の関係者の情報を拾いながら白い駒を左に進める。
『手籠にされたの?』
黒い駒が2マス進む。
『されてないけど』
白い駒を後ろに下げる。
『これからされるから逃げてきた?』
白い駒を1つ取られた。
『そういうわけじゃないけど』
白い駒を新しく置く。
どちらかと言うと、逃げたから手籠にされるかもしれない…。
『種付けするために連れて来てるんだから、遅かれ早かれ手は出すんだろ』
身も蓋もない言い方だけどたしかにそうだ…。
置いたばかりの白い駒が取られた。私の悪手だった。
うーん…痛いのはいやだなぁ、怖いなぁ。
メッセージなしで白い駒を置く。
『逃げるなら助けるよ、囚われのお姫様』
キングに当たる黒い駒が前進する。
王が出向いてやろうかというアピールだろうか、それとも私が読めていないゲーム上の戦略だろうか。
『ネズミ1匹殺すのに核兵器使いそうだから、あなたには頼まないわ』
白い駒を前進させる。
『ちぇっ笑』
黒のキングが元の位置に引っ込んだ。
『いろいろ調べてるけど、調べるために出てきたの?逃げるために出てきたの?』
私のターンなので駒なしでメッセージだけが表示される。
つまりは、帰るのか逃げるのかという問い。
『何かのためじゃないけど、なんか出てきちゃった』
いろんな人が出入りする邸。
悪気はないのだろうけど、みんないろいろ勝手な話をする。
訝しむ声、期待する声、心配する声…
何が嫌?
ああ、またごちゃごちゃしてきた…
『結局さ、そこにいるのは良いの、悪いの?何考えてるの?』
何考えてるの?
『わかんない。私の知らない私の能力、知っていたけど重要視していなかった一面にやたらと注目されて居心地悪い。期待が重い。妖力って何なんだろう?痛いことされるのが嫌。妖力取られるの苦しいから嫌だ。でも、そうしないと最近妖怪に見つかりやすくて狙われやすくなってる。妖怪、物理法則無視してくるから元々意味わかんないと思ってたけど、最近は私も自分のこともわかんない。IQ高めでEQとSQ低め、探究心強めで過集中傾向、それが私の特徴だったはずなのに、妖力がどうとか翼がどうとか…。大人の都合に振り回されてばっかりよ。ドイツに帰りたいわけじゃない。叔母さまの家に帰りたくもない。的場さんの家にもいたくない。行く宛もないし、行きたい場所もないし、もうどこにもいたくない。』
頭の中身をひっくり返すように、思いついたことを思いついた順に書き連ねて白い駒と共に盤上に叩きつけた。
こんなに感情的になったのはいつぶりだろう。
『そういうの何て言うか知ってる』
すぐに黒い駒と共にメッセージが置かれた。
『何?』
白い駒を進める。
『思春期』
進めた駒を取られた。
『なるほど』
たっぷり5秒考えて、今日最初に置いた白い駒を右前に前進させた。
『落ち着いた?』
駒なしでメッセージ。
『少し』
ここから近い教会を検索しながら答える。
大小さまざまな教会一覧。
『で、教会行くの?』
黒い駒が1マス進む。
『なんか、窓の外に大きい何かがいて、中に入ってきそうな気がするから、とりあえず避難』
幸い徒歩圏内にカトリック教会がある。
『教会には入ってこないの?』
『わかんないけど、カトリックの学校内には入って来なかったから』
『へー。Toi,toi,toi !』
『きっと失敗するわ』
『古風だね』
『案外古典的な対応が有効な気がする』
ゲームアプリや調べるために開いていたウインドウを全て閉じ、USBを取り出し、パソコンの履歴を消して、上から改竄した履歴を入れて、デスクトップが表示されたのを確認して席を立つ。
