1-1 邂逅
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妖怪は日常的に見ているが、天使を初めて見た。
小さな天窓しかない暗い地下の部屋。
鳥かごのような円柱形の檻の中、床いっぱいに描かれた陣の中に座って、格子越しの天窓に向かって精一杯両手を伸ばす、真っ白な翼の少女。
部屋に入る前から感じていた、膨大な妖力。人間のものとは思えない。
一目見て、欲しくなった。
「そばで声をかけても?」
少女の現在の保護者、という名の所有者である少女の義理の叔母に尋ねると、
「今は話ができないと思いますよ。もともとあまりコミュニケーションがとれない子だけど…。何見てるかわかったもんじゃない、監視カメラみたいで本当に気味悪い子」
と、苦々しげに吐き捨てた。
それでも檻に近づいてみる。
雨上がりの光が差し込む天窓を見上げて、何かを掴もうとしているかのように両手を伸ばす姿、天使というのはこういうものなのだろうかとキリスト教徒でもないのに考えてしまう。
「こんにちは。的場静司と申します。月代さやぎさんですよね?」
一瞬だけ目があったような気がした。ほんの一瞬だけ。
目が合ったと思った瞬間、彼女は床に倒れこみそのまま動かなくなった。
背中の翼は消えている。
長い髪で顔はよく見えないが、眼を閉じて眠っているようだ。
「どうしたのだ」と問うように彼女の保護者を振り返る。
「力を吸い取り過ぎたか、この子自身が頭を使いすぎたか、どちらかだと思いますよ。少し前までずっとかごの中で暴れていたから、単に疲れただけかもしれないけど、もともと突然眠る子だからね…」
この膨大な力をこんな子供だましの術で吸い取り過ぎることがあるかとに苛立つが、見えぬ者に言ってもわからぬことと思い直して黙っている。
現在さやぎのいる月代家は、さやぎの養父の実家で、祓い屋とは一切関係のない一般人の芸術家一家である。
数カ月前に彼女の養母が亡くなったのをきっかけに彼女と彼女の妹を引き取り、主に叔父と叔母が世話をしている。
一応学校には行かせているらしく、私立女子高の1年だが、今までいたドイツでは飛び級して高校卒業・大学入学の資格を取っていたという。
叔母が言うには「頭が良すぎて気味が悪い」「天使のなりをした悪魔の子」。
その翼は、陣の中にさえいれば、一般人にも見ることはできるが触れることはできない。
彼女の意志で出したり隠したりできるが、術などの外的な力で引き出すこともできるらしく、かごの床の陣は知り合いの呪術師に描いてもらったという。
その術者は「人間に妖怪がとり憑いて融合しているか半妖かのどちらかだ」と言ったらしいが、的場に言わせれば、彼女は明らかに人間だった。
身体に妖怪を取り込んだ人間か、人間離れした膨大な力が翼の形をなして体外にはみ出しているのか調べてみなければわからない。
古い書物と噂レベルの言い伝えでしか見聞きしたことのない『音羽の翼』。
特殊な陣を使えばその翼の妖力を他者が使うこともできる、音羽の娘は必ず見える子供を産むなど、様々噂を聞く謎の多い一族『音羽』の直系。
非常に興味深い存在で、単に絵画のモデルにしているなど宝の持ち腐れもいいところだ。
身体的な問題なのか力のせいなのか、時々体調を崩して一切話さなくなるらしく、今はちょうどそういう時期のようだ。
「いつ頃になれば話ができますか?」
「さあね…3日もすれば話すようになるんじゃないでしょうかね。少し話しただけで何もかも見透かされるみたいで気味悪いから、私は普段から話しかけませんけどね。もともと養子でうちの兄とは関係ないし、あの女の姪だと考えただけで虫酸が走る。天使のなりで人を惑わす悪魔のようだわ…」
相当嫌っているらしく、「ああ恐ろしい」と顔をしかめて十字を切る。
小さな天窓しかない暗い地下の部屋。
鳥かごのような円柱形の檻の中、床いっぱいに描かれた陣の中に座って、格子越しの天窓に向かって精一杯両手を伸ばす、真っ白な翼の少女。
部屋に入る前から感じていた、膨大な妖力。人間のものとは思えない。
一目見て、欲しくなった。
「そばで声をかけても?」
少女の現在の保護者、という名の所有者である少女の義理の叔母に尋ねると、
「今は話ができないと思いますよ。もともとあまりコミュニケーションがとれない子だけど…。何見てるかわかったもんじゃない、監視カメラみたいで本当に気味悪い子」
と、苦々しげに吐き捨てた。
それでも檻に近づいてみる。
雨上がりの光が差し込む天窓を見上げて、何かを掴もうとしているかのように両手を伸ばす姿、天使というのはこういうものなのだろうかとキリスト教徒でもないのに考えてしまう。
「こんにちは。的場静司と申します。月代さやぎさんですよね?」
一瞬だけ目があったような気がした。ほんの一瞬だけ。
目が合ったと思った瞬間、彼女は床に倒れこみそのまま動かなくなった。
背中の翼は消えている。
長い髪で顔はよく見えないが、眼を閉じて眠っているようだ。
「どうしたのだ」と問うように彼女の保護者を振り返る。
「力を吸い取り過ぎたか、この子自身が頭を使いすぎたか、どちらかだと思いますよ。少し前までずっとかごの中で暴れていたから、単に疲れただけかもしれないけど、もともと突然眠る子だからね…」
この膨大な力をこんな子供だましの術で吸い取り過ぎることがあるかとに苛立つが、見えぬ者に言ってもわからぬことと思い直して黙っている。
現在さやぎのいる月代家は、さやぎの養父の実家で、祓い屋とは一切関係のない一般人の芸術家一家である。
数カ月前に彼女の養母が亡くなったのをきっかけに彼女と彼女の妹を引き取り、主に叔父と叔母が世話をしている。
一応学校には行かせているらしく、私立女子高の1年だが、今までいたドイツでは飛び級して高校卒業・大学入学の資格を取っていたという。
叔母が言うには「頭が良すぎて気味が悪い」「天使のなりをした悪魔の子」。
その翼は、陣の中にさえいれば、一般人にも見ることはできるが触れることはできない。
彼女の意志で出したり隠したりできるが、術などの外的な力で引き出すこともできるらしく、かごの床の陣は知り合いの呪術師に描いてもらったという。
その術者は「人間に妖怪がとり憑いて融合しているか半妖かのどちらかだ」と言ったらしいが、的場に言わせれば、彼女は明らかに人間だった。
身体に妖怪を取り込んだ人間か、人間離れした膨大な力が翼の形をなして体外にはみ出しているのか調べてみなければわからない。
古い書物と噂レベルの言い伝えでしか見聞きしたことのない『音羽の翼』。
特殊な陣を使えばその翼の妖力を他者が使うこともできる、音羽の娘は必ず見える子供を産むなど、様々噂を聞く謎の多い一族『音羽』の直系。
非常に興味深い存在で、単に絵画のモデルにしているなど宝の持ち腐れもいいところだ。
身体的な問題なのか力のせいなのか、時々体調を崩して一切話さなくなるらしく、今はちょうどそういう時期のようだ。
「いつ頃になれば話ができますか?」
「さあね…3日もすれば話すようになるんじゃないでしょうかね。少し話しただけで何もかも見透かされるみたいで気味悪いから、私は普段から話しかけませんけどね。もともと養子でうちの兄とは関係ないし、あの女の姪だと考えただけで虫酸が走る。天使のなりで人を惑わす悪魔のようだわ…」
相当嫌っているらしく、「ああ恐ろしい」と顔をしかめて十字を切る。
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