アズカバンの囚人編
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呼ばれている。
「────……」
誰かが私を呼んでいる。
起きなければ。私はまだやらなければならないことが残っている。
「──シラユキ」
水底から引き揚げられるように感覚が鮮明さを取り戻していった。背中にふかふかのベッドを感じ、続いてアルコールとハナハッカ・エキスの匂いが鼻を刺した。何度か瞬きをすると、医務室の清潔な天井が目に入って──
「起きたまえ、シラユキ」
ベッドの横に、どことなく落ち着かない様子でスネイプ先生が立っていた。
「せんせい、シリウスは──見ましたよね──冤罪、なんです」
「見たとも。全く受け入れがたい」
起き抜けで呂律が回っていない私に、スネイプ先生は顔をしかめた。
「しかし、事実は事実。あのネズミを逃がすわけにはいかん。──何度も言わせるな。今すぐ起きて、ベッドから出たまえ」
霞がかっていた頭が一気に冴えた。私は二つ返事をして体を起こし、スネイプ先生に続いてカーテンの間仕切りを開いた。隣のベッドではまだハリーとハーマイオニーが眠っている。
「私が気絶してからどのくらい経ちましたか?」
「我輩が全員を担架に乗せて運んでから、一時間は過ぎましたな」
「シリウスは、まだ無事ですか?」
医務室の扉の近くまで歩いて立ち止まり、スネイプ先生は私をじっと見下ろした。
「ダンブルドアの達しがある」
スネイプ先生が私の質問には答えず、短く告げて、私が首にかけてシャツの下にしまっていた逆転時計を指差した。
「君には我輩と来ていただく。ひっくり返すのは一回でよいだろう」
「せ、先生がいらっしゃるんですか?」
スネイプ先生は眉間のしわを濃くした。
「いえ。あの、嬉しいです」
「世辞は結構。くだらんことを言っている暇はないのだ。ファッジが我輩を訪ねる前に済ませる必要がある」
「はい!」
嬉しいのは本当だったが、なるべく早くペティグリューの入った鳥かごを取り戻すことが何よりも優先すべきことだった。医務室の時計で今の時間を確認し、私は逆転時計の鎖をめいっぱい伸ばして、スネイプ先生の首にもかける。顔が赤くなる前にと、急いで砂時計を一度ひっくり返した。
病室が夜の闇に溶けるようになくなった。ぼやけた色彩が私たちを追い越していき、やがてひんやりとした空気に満ちた廊下に足がついたのを感じた。さっと逆転時計の鎖をスネイプ先生から外して辺りを見回す。
「地下牢ですね」
スネイプ先生は音もなく階段を上り始めた。玄関ホールを抜けて校庭に出ると、ちょうど過去のスネイプ先生が透明マントをかぶって暴れ柳の根元の隙間に降りていくところだった。ペティグリューが鳥かごごと転がっていった草むらに当たりをつけて、私とスネイプ先生はそこで全員が暴れ柳から出てくるのを待つことにした。
「……」
「……」
沈黙が十分ほど続いた。
不思議なことに、私はスネイプ先生との間の静寂が好きだった。研究室に質問に行くと、たいてい問題はすぐに解決するので、その後はいつもスネイプ先生が読書をしたり実験をする横で静かに勉強をしていた。スネイプ先生もこういう時間を気に入ってくれているのだろうか。なんだか急に気になって、私は先生の横顔を見上げた。
「……何かね?」
「あの──来年も先生のところへ行っていいですか?」
口から出たのは、当たり障りのない質問だった。
「これからも魔法薬学を教えてくださいますか?」
「君は聞かずともわかることを知りたがる」
スネイプ先生はぶっきらぼうに言い捨てた。
「じゃあ、誕生日を教えていただけませんか」
夏の夜の涼しい風が、背の高い草木を揺らした。
聞かなければわからないことはいつだって、教えてくれないのだ。このいじわるで、不思議で、優しくて──私の大好きな先生は。スネイプ先生は無視されたはずの私がニコニコしているのが気に食わないようで、しかめっ面をしていた。けれどやっぱり、私は笑ってしまうのだ。スネイプ先生が、こうして隣で話すことを許してくれているのが、その距離を縮められているのが、幸せでたまらないから。
立ち込めた雲が月を覆い隠してしまってからしばらくして、ようやく私たちが暴れ柳から這い登って出てきた。もう間もなく月明りが差し込んで、ルーピン先生は狼人間に変身するだろう。私は杖をそっと抜いて、いつでも呼び寄せの呪文を唱えられるように準備をした。
雲の切れ目がやってきた。ルーピン先生が苦しみながら狼人間になり、鳥かごの中のペティグリューがスネイプ先生の杖を奪ってロンに呪いをかける──「エクスペリアームス!」──過去の私が唱えた。ネズミが鳥かごごと、私たちが身をひそめる数メートル先を通り過ぎた。
「アクシオ、鳥かご!」
私の手元にネズミのサイズまで縮んだ鳥かごが一直線に引き寄せられた。月明りを反射して銀色に輝く檻の奥で、ネズミの目が恐怖に震えていた。すると、スネイプ先生の杖から無言で赤い火花が飛び散って、ペティグリューはネズミの姿のまま白目を剥き、力なくかごの中に倒れ伏した。
「この信用ならんネズミにまた何かされてはたまったものではない」
麻痺呪文を浴びせたスネイプ先生は、ペティグリューの意識がないことをわかっていながらも追い打ちをかけるようにこめかみに青筋を立てた。あそこで杖を奪われたことをかなり根に持っていたらしい。
「それじゃあ先生、ペティグリューをお願いします」
これ幸いと、私はスネイプ先生に鳥かごを預けた。
「どこへ行く?」
「もう二つの方に」
スネイプ先生の返事を待たずに、私は湖に向かって駆け出す。吸魂鬼を避けて大きく回り込み、私は気絶する前に牡鹿の守護霊が出てきたあたりの木陰で息をひそめた。
「エクスペクト!パトローナム!」
十歩分ほど離れた茂みから、ハリーが杖を取り出して叫んだ。やはりあれはジェームズ・ポッターではなく、ハリーの牡鹿だったのだ。シリウスとハリーを庇うように立つ過去の私も牝鹿の守護霊を出している。二頭の鹿がダンスをするように湖を滑り、吸魂鬼は散り散りになって暗闇の中に退却していった。
牡鹿は、私の牝鹿が空に消えていくのを見送って、木陰にたたずむハリーの元へ戻っていった。
「プロングズ」
ハリーが声を震わせて呟くと、牡鹿はお辞儀をするように頭を下げて、夜の森に姿を消した。
「何をしたの?──って、サチ!?あなたここで何をしてるの?」
大きな足音が近づいてきたと思ったら、それはバックビークをひっぱるハーマイオニーだった。岸辺でへたりこんでいる過去の私と、目の前にいる私を訳が分からないとばかりに眉を下げて見つめている。
「ペティグリューを捕まえるためにスネイプ先生と戻ってきたの。先生はちゃんとファッジさんにペティグリューを渡せた?」
「え、ええ。でも魔法省は吸魂鬼 > ディメンターにキスの執行を命じてしまったらしくて、私たち、彼をバックビークと一緒に逃がすために三回も逆転時計をひっくり返したわ」
私は安心して胸をなでおろした。シリウスの冤罪はこれで晴らされる。吸魂鬼のキスからさえ逃げれば、後はペティグリューの罪が明らかにされるのを待つのみだ。
「それにしても、あなたたち、本当に信じられない。──あの吸魂鬼を全部追い払うような守護霊を創り出せる魔法使いが二人も、私の近くにいたなんて!それって、とっても、とっても高度な魔法なのよ……」
「僕、できるとわかってたんだ。だって、さっき一度出したわけだから……僕の言っていること、何か変かなあ?」
「変じゃないよ。できるって確信が何よりも大切なんだもの」
難しそうに首をひねったハリーに、私は微笑んだ。
「アッ──二人とも、スネイプだわ!」
私が地面に崩れ落ちるのと同時にスネイプ先生が湖畔にたどり着いた。杖を振って人数分の担架を創り出し、それぞれを乗っけて足早に城へと戻っていく。
「さあ、そろそろ時間だわ」
ハーマイオニーが時計を見ながら硬い声で言った。あと四十五分の間に、西塔の八階にあるフリットウィック先生の事務所に軟禁されているシリウスを救い、ハリーとハーマイオニーは病室を抜け出したことがばれないように戻らないといけないらしい。私のことはスネイプ先生がうまく説明してくれているだろう。だから先生は、私が二人の元へ行こうとしたのを引き留めなかった。
私たちが時間の来るのを待つ後ろで、バックビークは退屈そうに虫をほじくり返していた。
「シリウスはもう上に行ったと思う?」
「見て!」
時計を見ながら言ったハリーに、ハーマイオニーが囁いた。
「お城から誰か出てくるわ!」
ベルトのところで大きな斧が光っているのが見えて、私とハリーは「死刑執行人のマクネア!」と同時に声を上げた。
「いまだよ、ハーマイオニー──」
私たちはハリーを先頭にバックビークに跨った。
ハリーは手綱を手繰り寄せて、バックビークの脇腹を踵で小突いた。美しい獣は闇を裂いて高く空に舞い上がった。先頭のハリーと後ろの私にぴったり挟まれたハーマイオニーは、胃が持ち上がる感覚が耐えられないらしく、「いやよ」「だめ」と何度も弱々しくつぶやいていた。
バックビークは速かった。音もなく城の上階へ近づいて、ハリーが手綱の左側をグイッと引くと、バックビークは旋回して向きを変えた。
「ドウ、ドウ!」
目的の窓までたどり着き、ハリーが力の限り手綱を引き締める。バックビークは空中で浮かんだまま停止できるように翼をはばたかせていたので、そのたびに上下に一、二メートルも揺れた。
「いた!ハリー、あそこ!」
ハリーは大きく頷いて、窓ガラスを強く叩いた。
シリウスは呆気に取られて口を開き、すぐに窓際に駆け寄った。ハーマイオニーが顔を青くしながらも杖を取り出し、「アロホモラ!」と唱えて窓を開けた。
「乗って──時間がないんです」
ハリーが、マクネアが吸魂鬼を呼びにいったことを伝えると、シリウスはすぐさま窓枠に手をかけ、私の後ろに跨った。
「よーし、バックビーク、上昇!塔の上まで──行くぞ!」
ヒッポグリフの力強い翼は、私たちをあっという間に西塔のてっぺんまで連れていってくれた。バックビークが降り立つやいなやシリウス以外が背中から滑り降りた。
「シリウス、もう行って。早く」
息を切らしながらハリーが言った。
「みんなが、まもなくフリットウィック先生の事務所にやってくる」
「もう一人の子は、ロンはどうした?」
シリウスが急き込んだので、私は軽く手を挙げてみせる。
「安心して。スネイプ先生が健康に害はないっておっしゃってた。ペティグリューのことっも捕まえたから、今日を逃げ切れば、シリウスは晴れて無罪だよ」
シリウスは私たちをじっと見下ろしていた。目尻に何か光っていたような気がしたが、それに言及するのは無粋もいいところ──誰も何も言わなかった。
「なんと礼を言ったらいいのか──」
「行って!!」
私たちは同時に叫んだ。シリウスはハリーを見て、私を見て、迷いを断ち切るようにバックビークを一回りさせた。
「また会おう」
シリウスの顔には美しい笑顔が輝いていた。
「君たちは──本当に、わたしの宝物だ。ハリー、サチ」
ヒッポグリフは巨大な両翼を再び持ち上げ、強くはばたいた。二人の姿はだんだん小さくなっていき、月にかかる雲の向こうに消えていった。
シリウスとバックビークを見送って、私たちは急いで階段を駆け下りた。
廊下に差し掛かったところでファッジとスネイプ先生が早足で歩いているのを見つけ、私たちは壁にぴったりと身を寄せて耳を澄ませた。
「なんですと?“キス”を執行する?」
スネイプ先生の声には明確な非難が込められていた。
「マクネアが吸魂鬼を連れてきたらすぐにだ」
「先ほどペティグリューをお見せしたでしょう。お疑いのようなら、我輩の倉庫から真実薬を使うこともできますぞ」
ファッジの疲れ切ったような大きいため息が聞こえた。
「このブラックの事件は、初めから終わりまでただでさえ面目まるつぶれなのだ。十二年にも及んで冤罪だったなどと日刊預言者新聞に載れば、夏中吠えメールの対応に追われることになる」
私たちは思いっきり顔をしかめた。
信じられない。罪のないシリウスを十年以上アズカバンに投獄しておいて、いざ真犯人が現れたら世間には公表せず、あくまでシリウスに罪を着せたままにするなんて。
「さあ、あと三分よ」
ピーブズが廊下を通り過ぎるのを待って足止めを食らい、私たちは最後の数分を全速力で廊下を走るのに使った。
「あと一分!」
息を切らしながら、病棟に続く廊下の端にたどり着いて、ハーマイオニーが時計を見た。
「オッケーよ──ダンブルドアの声が聞こえるわ」
私たちは廊下を這うように進んで、ダンブルドア先生が医務室の鍵を閉めようとドアを振り返った瞬間に、前に飛び出した。
「さて?」
ダンブルドア先生は静かに笑った。
「やりました!シリウスは行ってしまいました。バックビークに乗って……」
「ご存知の通り、スネイプ先生がペティグリューを持っていきました」
「ようやった。さてと──」
部屋の中に耳を澄ませて、ダンブルドア先生はハリーとハーマイオニーがいなくなったことを確認した。
「よかろう。中にお入り──わしが鍵を掛けよう──」
私たちは病室に戻った。ロンはまだ目を覚ましておらず、ダンブルドア先生が鍵をかけた次の瞬間、マダム・ポンフリーが事務室からつかつかと出てきた。
「校長先生がお帰りになったような音がしましたけど?これで、わたくしの患者さんの面倒を見させていただけるんでしょうね?」
ひどくご機嫌斜めで、さっきまでここにいなかった私を見咎めて何か言いたそうにしていた。けれどスネイプ先生はいったい何と説明したのか、マダム・ポンフリーが話を追及してくることはなかった。
マダム・ポンフリーから受け取ったチョコレートを無言でかじっていると、怒声が医務室に近づいてくるのが聞こえた。
「ヤツは断じて“姿くらまし”をしたのではない!」
ファッジの吠え声だった。
病室のドアがものすごい音を立てて開かれ、怒りで顔を真っ赤にしたファッジと、涼しげな顔をしたダンブルドア先生、そして意地悪く唇を吊り上げているスネイプ先生が入ってきた。
「ダンブルドア、あなたが何かしたのか!?」
「お言葉ですが、大臣閣下。校長はさっきから医務室でポッターに掛かりきりでしたぞ」
「なんてことだ、ブラックは冤罪で、逃亡して──」
スネイプ先生の嫌みのこもった言葉を聞く余裕もなかったらしい。ファッジの顔は怒りと恥ずかしさと後悔と、色々な感情で歪んでいた。
「もう充分じゃろう、コーネリウス」
ダンブルドア先生は静かに、そしてどことなく楽しそうに言った。
「無実の者は運よく逃亡し、真の罪人が捕まったのじゃ。喜ばしいことではないかね?」
ファッジはその場に棒立ちになり、ダンブルドアを憎々しげに睨みつけた。ダンブルドア先生もスネイプ先生も、瞳にはどこか面白がるような光が浮かんでいた。ファッジは何度か口をパクパクさせて、とうとう細縞模様のマントを翻し、病室から荒々しく立ち去った。
「日刊預言者新聞はお祭り騒ぎでしょうな」
スネイプ先生は口元に暗い笑みを湛えていた。珍しく機嫌がいいらしい。ダンブルドア先生もにっこり笑って、私の目をまっすぐに見つめた。
「ついさっき記者のふくろうが飛んできてのう。これから号外を刷ると返事をもらったよ」
私はハリーとハーマイオニーと顔を見合わせて、手を取り合って喜んだ。まだ時間はかかるかもしれないけれど、着実に運命は変わり始めていた。
ロンを含めた私たち全員は、翌日の昼には退院を許された。
城にはほとんどだれも残っていなかった。試験も終わったのでみんなホグズミードを楽しみに行ったのだ。私たちは号外に引き続き、今朝の日刊預言者新聞の一面を飾った“シリウス・ブラックの冤罪”、“真犯人は英雄ピーター・ペティグリュー”を読み、校庭をぶらぶら歩きながら昨晩のことや、私が三人に隠してシリウスと仲良くしていたことなんかを語り合った。
ふと、私たちの上を影がよぎった。ハグリッドが目をとろんとさせて、上機嫌に微笑んでいた。
「おまえさんたち、知っとるか?」
「なーに?」
私たちはクスクス音を立てながら声をそろえた。
「ビーキーよ!逃げおった!あいつは自由だ!一晩中お祝いしとったんだ!」
ちゃんとつないどかなかったんだな、とハグリッドは嬉しそうに校庭の向こうを眺めた。
「だがな、朝んなって心配になった。……もしかして、ルーピンに校庭のどっかで出くわさなんだろうかってな。だが、ルーピンは昨日の晩は、何も食ってねえって言うんだ……」
「何だって?」と聞き返したハリーに、ハグリッドの顔が陰った。
「まだ聞いとらんのか?アー──スネイプが今朝、スリザリン生全員に話したんだ……俺は、もうみんな知っていると思っていたんだが……ルーピン先生は狼人間だ、とな。昨日の晩は野放し状態だった、とな。いまごろ荷物をまとめておるよ、当然」
ハリーたちはあんぐりと口を開けていた。
「荷物をまとめてるって?どうして?」
「今朝一番で辞めた。またこんなことがあっちゃなんねえって、言うとった」
私は立ち上がった。
「会いにいってくる」
「僕も行くよ」
「でも、もし辞任したなら──もう私たちにできることはないんじゃないかしら──」
そう言ったハーマイオニーに、ハリーはかまうもんかと首を横に振った。
「それでも僕、会いたいんだ。あとでここで会おう」
私とハリーが先生の事務所を訪ねると、あらかた荷造りは終わっているようだった。
「君たちがやってくるのが見えたよ」
ハリーのノックに顔を上げて、ルーピン先生は今まで熱心に見ていた羊皮紙を指差す。忍びの地図だった。ハリーはやっぱりルーピン先生が辞めることを信じたくない様子だったけれど、ルーピン先生はハグリッドの話を「本当だ」とどこか晴れやかな表情で肯定した。
「セブルスは──ついうっかり、今日の朝食の席で、私が狼人間だと漏らしてしまってね。昨夜のことがあって、私はこれでよかったと思う。誰か君たちを噛んでいたかもしれないんだ。……こんなことは二度と起こってはならない」
「先生は、いままでで最高の“闇の魔術に対する防衛術”の先生です!行かないでください」
ルーピン先生は何も言わず、首を振るだけだった。
それからルーピン先生は自分が狼人間に変身した後のことを聞きたがった。具体的には、ハリーの守護霊のこと。
「君のお父さんは、いつも牡鹿に変身した。君の推測通りだ……だから私たちはプロングズと呼んでいたんだよ」
先生は全ての荷物をトランクに入れ終えて、ハリーに透明マントと忍びの地図を差し出した。
「私はもう、君の先生ではない。だから、これを返しても別に後ろめたい気持ちはない。私には何の役にも立たないものだ。それに、君たちなら、使い道を見つけることだろう」
ルーピン先生はいたずらっぽく笑って、もう一つ付け足した。
「ジェームズだったら、自分の息子が、この城を抜け出す秘密の通路を一つも知らずに過ごしたなんてことになったら、大いに失望しただろう。これは間違いなく言える」
同時に軽やかなノックの音が響いた。ダンブルドア先生は私とハリーがいるのを見ても驚いた様子を見せなかった。
「リーマス、門のところに馬車が来ておる」
「ありがとうございます」
ルーピン先生はトランクと空っぽの水魔の水槽を取り上げて、私たちを振り返る。
「それじゃ──さよなら、ハリー。君の先生になれて嬉しかったよ。きっとまた会える。校長、見送りは結構です……サチも、また会おう」
「はい。ルーピン先生──また」
「君にそう言われると、本当にすぐ会えるような気がするよ」
ルーピン先生はそうつぶやいて、柔らかく微笑んだ。
「それでは、さらばじゃ、リーマス」
ダンブルドア先生と握手をして、ルーピン先生はとうとう部屋を出ていってしまった。
ハリーはルーピン先生が見えなくなってから、大きなため息をついた。ダンブルドア先生はまだそこにいて、私とハリーをじっと見つめている。
「ハリー、どうしたね?そんなに浮かない顔をして」
「何にもできませんでした」
ハリーは椅子に倒れこむように座って、私を見上げた。
「ペティグリューを捕まえたのも、シリウスをずっと信じてたのもサチでした」
「ハリー、私は知ってたんだよ。あなたは知らなかったけど、それでも強くシリウスを信じた。守護霊の呪文を習得して、私を助けてくれた」
ハリーは照れくさそうに頬を掻いた。そして、ハッとしたように顔を上げてダンブルドア先生を見た。
「ダンブルドア先生、昨日、占い学の試験を受けていた時に、トレローニー先生がとっても──とっても変になったんです」
「ほう?」
ダンブルドア先生が興味深げに瞳を輝かせた。
「アー──いつもよりもっと変にということかな?」
「はい……声が太くなって、目が白目になって、こう言ったんです……今夜、真夜中になる前、その召使いは自由の身となり、ご主人様のもとに馳せ参ずるであろう……こうも言いました。闇の帝王は、召使いの手を借り、再び立ち上がるであろう」
それからトレローニー先生は普通に戻ったらしい。自分が言ったことは何も覚えておらずに。
「あれは──あれは先生が本当の予言をしたんでしょうか?」
ダンブルドア先生は感心したように目を見張った。
「こんなことが起ころうとはのう。これでトレローニー先生の本当の予言は全部で二つになった。給料を上げてやるべきかの……しかし……」
先生の目が一瞬、私に留まったような気がした。けれどハリーはそれに気づかない。
「先生、ペティグリューは昨日の真夜中時点では鳥かごに閉じ込められていました。シリウスとルーピン先生がペティグリューを殺そうとしたのを、僕が止めたんです。もしあいつが逃げたとしたら──それでヴォルデモートが戻ってくるとした、僕の責任です!」
「いや、そうではない」
ダンブルドア先生は静かに首を横に振った。
「ペティグリューは君に命を救われ、恩を受けた。君は、ヴォルデモートの下に、君に借りのある者を腹心として送り込んだのじゃ。魔法使いが魔法使いの命を救う時、二人の間にある種のきずなが生まれる……。ヴォルデモートが果たして、君に借りのある者を、自分の召使いとして望むかどうか疑わしい」
「僕、ペティグリューとの絆なんて、ほしくない!あいつは僕の両親を裏切った!」
「これはもっとも深遠で不可解な魔法じゃよ。ハリー、わしを信じるがよい……いつか必ず、ペティグリューの命を助けて本当によかったと思う日が来るじゃろう」
バックビークが姿を消し、シリウスとペティグリューの立場が一転したあの夜、何が起こったのか真相を知るのは、私たち四人とダンブルドア先生、スネイプ先生、そしてルーピン先生だけだった。学期末までたくさんの憶測を耳にしたけれど、どれも真実に迫るものはなかった、というのはロンの話だ。
私はトレローニー先生の言った本当の予言というのが気になっていた。けれど今のところ、ペティグリューはアズカバンであの鳥かごに入れられたまま大人しくしている、とダンブルドア先生は教えてくれた。自由になる、というのはロンの元からということだろうか。それともあの予言が示したのはペティグリューではなかったのか。
何はともあれ、ひとまずシリウスの無実が魔法界に知れ渡るところとなり、本人から連絡はないものの、ダンブルドア先生は「キングズ・クロス駅に到着してのお楽しみじゃよ」とウインクをした。しかしハリーはまた親戚の家に戻らなければならないらしい。これもまたダンブルドア先生の言葉だった。
学期の最終日には試験の結果が発表された。私たち四人は全科目に合格で、私は魔法薬学と闇の魔術に対する防衛術の成績が学年で一番だった。嬉しすぎて廊下を走り、最後の最後でスネイプ先生に減点されてしまったのだけれども。
「私、来年はマグル学をやめることにしたわ」
ホグワーツ特急がホームから出発し、コンパートメントでハーマイオニーが出し抜けに打ち明けた。
「だって君、百点満点の試験に三百二十点でパスしたじゃないか!」
「そうよ。でも、また来年、今年みたいになるのには耐えられない。あの逆転時計、あれ、私、気が狂いそうだった」
ハーマイオニーは占い学とマグル学を落とすそうで、私は来年から数占い学を取ろうと思っているため、私とハーマイオニーは同じ授業を受けることになる。
今年の寮杯はグリフィンドールで、昨日は夜遅くまで談話室で騒いでいたのが嘘のように、ハリーは心ここにあらずだった。ホグワーツが山の影に入って見えなくなっても、窓の外を眺め続けている。
「ねえ、ハリー、元気を出して!」
「僕、大丈夫だよ」
さびそうにしたハーマイオニーに、ハリーは急いで返事をした。
「休暇のことを考えていただけさ」
「ウン、僕もそのことを考えていたんだ」
ロンはハリーに、自分の家に泊まりに来るよう強く勧めた。
「僕、パパとママに話して準備して、それから話電する。話電の使い方がもうわかったから──」
「ロン、電話なら私がかけるよ。ハリー、私があなたのお家へ遊びに行ってもいいかな?」
「今年の夏はクィディッチのワールドカップだぜ!どうだい、ハリー?サチも泊まりにおいでよ。一緒に見に行こう!パパ、対手役所から切符が手に入るんだ」
ここまで提案されて、ようやくハリーは元気づいてきた。
「ウン……ダーズリー家じゃ、喜んで僕を追い出すよ。とくにマージおばさんのことがあったあとだし……」
ハリーはそう言って、去年の夏休みに彼のおじさんの妹を風船のように膨らませてしまったことを話した。
それから私たちはお菓子(チョコレートは今年食べ飽きたので、それ以外)を食べたり、“爆発スナップ”で遊んだりして列車の旅を過ごした。
午後も遅い時間になって、ハーマイオニーが窓の外に何かがいるのに気がついた。四人で窓を覗き込むと、ちっちゃくて灰色のふくろうが大きすぎる手紙を運んでいた。ハリーが急いで窓を開けて中に入れると、ふくろうはコンパートメントの中を興味しんしんに飛び回り始めた。
「シリウスからだ!」
ハリーが叫んで、ロンとハーマイオニーも「読んで!」と興奮して急かした。
手紙にはなぜか私に見せないようにと書かれていたらしく、教えてもかまわないらしいところをハリーが抜粋して教えてくれた。それもファイアボルトはシリウスが買ったものだとか、ホグズミード行きの許可証とか、私がシリウスから話を聞いていたことだった。
「あ、ホグズミード行きの許可証、君の分も入ってる!」
「仕事が速いね、シリウス」
ハリーが手紙を膝の上にふせて、許可証を渡してくれた。魔法省やら新聞やらにひっぱりだこで忙しいはずなのに、いつの間に後見人になる手続きを終わらせていたらしい。
「そんなこと言って、サチ、耳赤くなってるよ」
「ハリー、黙って」
手紙には追伸もあり、それはハリーが快く見せてくれた。
────────────────────────────
よかったら、君の友人のロンがこのふくろうを飼って
くれたまえ。ネズミがいなくなったのはわたしの
せいだし。
────────────────────────────
ロンは目を丸くして、いつの間にか彼の手に収まっていたチビふくろうをしげしげと見つめた。そしてふくろうをクルックシャンクスの前に突き出し、臭いを嗅がせた。
「どう思う?間違いなくふくろうなの?」
クルックシャンクスが満足そうに喉を鳴らしたので、ロンはホーホー嬉しそうに鳴くふくろうを優しく抱きしめた。
「こいつは僕のものだ」
汽車ゆっくりと減速を始めてキングズ・クロス駅に到着するまで、ハリーは何度も手紙を読み返していた。九と四分の三番線ホームから柵を通って反対側に戻っても、その手はしっかりと手紙を握っている。
「あ、僕のママとパパだ」
ロンの明るい声にパッと前を見ると、私たちに手を振るウィーズリー夫妻と、それから彼らを無遠慮にちらちら見ている男──
「サチ、あれがバーノンおじさんだ。魔法が嫌いなんだ」
ハリーのおじさんが立っていた。
「ロン、ハリー、ハーマイオニー、おかえりなさい!」
「ママ、駅でハグするのはやめてよ!」
ウィーズリーおばさんが三人を順々に抱きしめた。それを微笑ましく見守っていると、ひょろりと背の高いウィーズリーおじさんが私に手を差し出した。
「やあ、はじめまして。君がサチだね。ロンからの手紙でシラユキに娘がいたことを初めて知ったよ」
私はにっこり笑って握手で応えた。ウィーズリーおじさんは懐かしさに少し目を細めて、すぐに好奇心で瞳を輝かせた。
「もう一つ聞いたんだが……その、日本に住んでいたというのは本当かい?弾丸列車には乗ったことがあるかな?」
「新幹線のことですか?えーと──」
「そう、それだ!シンカンセン!」
そういえば編入するまでは日本で過ごしていたという体になっていて、一番初めにハリーたちにそう説明したような気がする。困った。私を育ててくれた母方の祖母は普通にイギリス人のマグルだから、日本のことはすごく詳しい訳でもない。
冷や汗が背中を伝うのを感じながらしどろもどろになっていると、不意にウィーズリーおじさんが目の前からいなくなった。
「アーサー!初対面の女の子を怖がらせない!──うちの人がごめんなさいね、サチ」
「だ、大丈夫です。ちょっとびっくりしただけです」
ウィーズリーおばさんがおじさんの襟首をひっぱったのだ。ハリーの親戚であるバーノンおじさんはそれを遠巻きにして、これ以上ないというほどしかめっ面をしていた。
詰めていた息をそっと吐きだして、私とハリーはロンとハーマイオニーに別れを告げた。カートにトランクを乗せ、バーノンさんの方へ歩き出したハリーを、私は袖を軽くひっぱって止めた。
「ハリー、私、友達と宿題を一緒にやるのに憧れてるの」
仲良く一緒に宿題なんて、実際私が入学した年とその翌年は、学校中が不安定でまともにできなかったのだ。なんのこっちゃと不思議そうな顔をしていたハリーは、少し時間を置いて、大きく目を見開いた。
「僕の家に来るって──サチ、さっきの本気だったの?」
「私が今まで本気じゃないことなんてあった?」
私は心外だと大げさに眉を上げて見せる。ハリーはまたちょっと考えて、笑いながら首を振った。
「なかったね」
「僕も、ワールドカップのことで電話するからな!」
フレッドとジョージを待っていたウィーズリー夫妻の横で、ロンも負けじと大声で呼びかけた。私とハリーはお決まりのように顔を見合わせて、そしてこの学年で何度もしたように、にっこりと笑ったのだった。
「その手紙は、いったいなんだ?」
ハリーが私に彼の家の住所と電話番号を伝えて離れると、バーノンさんがすぐさまそう聞いたのが聞こえた。バーノンさんはハリーの握っているシリウスからの手紙を、まるで親の仇でも見るかのような目で見つめている。
「またわしがサインせにゃならん書類なら、おまえはまた──」
「違うよ。これ、僕の後見人からの手紙なんだ」
ハリーは楽しげに言った。バーノンさんは「おまえにそんなものいないわい」と慌てて否定したが、ハリーは生き生きと首を横に振った。
「父さん、母さんの親友だった人なんだ。殺人犯って思われてたけど、僕たちが彼の冤罪を晴らしたんだ。それで、僕といつも連絡を取りたいらしい……僕がどうしてるか、知りたいんだって……幸せどうか確かめたいんだって……」
バーノンさんの顔に明確な恐怖が浮かんだ。ハリーはサッと私を振り返って、いたずらっぽく片頬を上げた。
ホグワーツの生徒がどんどんホームから去っていくのを横目に、私は周囲を見回した。ダンブルドア先生は夏の滞在先について、駅に到着してからのお楽しみだと言ったので、“お楽しみ”の人物がいるとふんでいる。そして予想通り──パシッ!──軽快な音を立てて、柔らかいモップのようなものがふくらはぎにぶつかった。
熊のような黒い犬が、尻尾を振り回しながら私を見上げていた。
「パッドフット」
肉球をぺたぺたとつま先に押し当ててられたのでそう呼ぶと、黒い犬は満足げに鼻を動かして、私の前を歩き出した。どうやら案内をしてくれるらしい。まだ指名手配が取り下げられて日数も経っていないからか、目立たないようにと犬の姿で来てくれたシリウスのもくろみは外れてしまった。大きな犬と子供一人の組み合わせは目を引くようで、駅員さんや周りの人たちからの訝しげな目線が無遠慮に注がれた。シリウスは不満そうに耳をパタパタさせていたけれど、私はちっとも気にならなかった。
「あなたと歩けて嬉しい」
黒い犬はぴこぴこ耳を跳ねさせて、楽しそうに私の周りをぐるぐる駆けたものだから、いっせいに周りから注目を浴びせられた。
だだっ広い改札を抜けて、駅の人込みをかきわけ、私たちはロンドンを二十分ほど歩いた。メインストリートから離れしばらく歩くと、インナー・ロンドンの北西部に位置するカムデン区に差し掛かった。
“グリモールド・プレイス十二番地”──いくつもの保護魔法が施されていて、マグルやその家を知らない魔法使いは視認することすらできない。彼らには十一番地と十三番地が隣り合っているように見えるのだ。十二番地を見つけるには、その場所を知る人から情報をもらい、ホグワーツの八階廊下に隠された“必要の部屋”を見つけたい時と似て、強く念じる必要がある。
もちろん私は未来で休暇中に出入りしていたので、存在しない十二番地がはっきりと見えた。私の覚えている限り、周囲の番地と同じく玄関は煤けてペンキが剥がれ、窓ガラスにはひびが入って今にも割れそうで、極めつけにゴミが階段下に放置されていたはずだった。しかし、シリウスが一人で掃除をしたらしく、グリモールド・プレイス十二番地は新品のようにぴかぴかに輝いていた。
黒い犬はといえば、思わず玄関前で立ち尽くしてしまった私の前で、するりと人間の姿に戻った。
「君は本当にわかりやすい」
困ったように笑うシリウスは、私がこの場所を知っているとわかっていたらしい。またやってしまった。見えないふりをしようと思ったのに。
「どうして……シリウスはなんでもわかっちゃうの?」
シリウスはいつの間にか買ったらしい杖を懐から取り出して、蛇の形をしたドアノッカーを避けるように扉を一度叩いた。
「親代わりのわたしに、君の噓が見抜けないはずがないだろう」
なぜだかわからないけれど、その瞬間、突然視界がぼやけた。遅れて熱くなった目頭を慌てて押さえても、遅かった。大粒の水滴がぼたぼたと綺麗に磨かれた階段に落ちてしまう。
「シ、リウス、ごめんなさい、か、階段が」
「気にするな。いくらでも濡らせばいい」
背中を優しく押されて、私たちは家の中に足を踏み入れた。玄関に飾られたシリウスの母親、ヴァルブルガ・ブラックの肖像画には重たいカーテンがかかっていて、何か叫んでいるようだったが声がくぐもってよく聞こえなかった。
検知不可能拡大呪文がかかっているのか見た目より遥かに広い屋敷の廊下を通って、シリウスは私をダイニングに置かれたソファに座らせてくれた。横に腰を下ろしたシリウスはしゃくり上げる私の背中をさすり続けている。
「サチ。君が何を隠しているのか、わたしから聞くつもりはない。……ただ、一つだけ約束してくれないか」
こらえきれない嗚咽が、私の喉から漏れ出た。
「わたしに、“君”を隠さないでくれ。泣きたかったら泣いていい、苦しかったら言っていい──君を受け止めさせてほしいんだ」
知らないはずだった。知る機会は過去に失われたはずだった。
シリウスは、私が入学する前に死んでしまったのだから。
「だから、我慢しないでくれ。わたしはずっとここにいるから」
「う、うそつき」
嘘つき。
あなたはいなかった。私があなたを知った時、あなたはとっくにいなかった。ハリーがどれだけそれを悲しんでいたのか知っている。この一年で、私は私が何を失っていたのか思い知らされた。この優しい嘘つきは、この先私たちの前から消えるのだ。ダンブルドア先生も、ルーピン先生も、そしてスネイプ先生も。全員、全員だいきらいだ。
「嘘なんか、いつわたしがついたんだ?」
その優しい手がなかったから、私は寂しくなかった。記憶にない両親を、もう二度と会えない祖母を想って泣くことはなかった。
「わたしも約束しよう。君に嘘はつかないと」
その柔らかい手があったから、私はここで頑張れた。スネイプ先生に踏み込むことができた。思い出せない両親を、たしかに感じ取ることができた。
だいきらいで、だいすきで──諦めることなんてできるわけがない。
「だから君も、約束をしてくれるか?」
「する。約束、するよ」
シリウス。あなたに嘘をつかせない。
私の愛しているひとと、親が最期まで仲が悪いなんて。そんな運命は願い下げだ。