ハロウィンパーティー?

「まぁ、残りは希衣沙きいさだけだが……」

腕を組み、困ったように七弥ななやは呟いた。
倉世くらせ音瑠ねるも、同じく困った表情を浮かべている。

――それには、ワケがあった。

三人の目の前に大きな木が生えているのだが、その太い枝に糸が巻きついて何かがぶら下がっているのだ。
言うなれば、白い巨大な蓑虫である。

「この、ぶら下がっているのは人だよな?大きさ的に……」

ぶら下がっているモノを見つめ、倉世くらせは言った。

「もしかして、コレか?」
「コレ、とは失礼な…倉世くらせ殿」

もごもごと動いた白い蓑虫が声を発して、底の部分から顔を出す。

「うわぁっ!?」
「きゃぁっ!?」

倉世くらせ七弥ななや音瑠ねるは悲鳴をあげて一歩後ずさった。
巨大な白い蓑虫から出てきた顔は、七弥ななやが一番見知っているものだ。

「き、希衣沙きいさ!?何やっているんだ?」
「何って…決まっているでしょう?蜘蛛の真似です」

希衣沙きいさは満足そうに頷いていた。
どうやら希衣沙きいさは木の枝に蜘蛛の巣を作った、つもりらしい。

「全然見えませんわ。むしろ、白い蓑虫にしか見えませんもの……」

ぶら下がっている希衣沙きいさの頭を叩いた音瑠ねるは「ねぇ?」とふたりに同意を求めた。
倉世くらせは深く頷き、七弥ななやは呆れたように頭をおさえている。

「失礼なお嬢さんだ…それよりも、七弥ななや隊長達は私の持つお菓子が欲しいんですよね?」
「…そうだが、希衣沙きいさ。ひとついいか?」

七弥ななやはため息をついた後、希衣沙きいさの頭をつつき訊ねた。

「血が頭にのぼらないか?逆さまで……」
「はぁ、確かに血はのぼりますが巣の中は逆さでありませんから大丈夫」

中は思った以上に快適空間なのだと、希衣沙きいさが答える。
そして、もごもごと動くと白い蓑の側面から手を出した。
その手には、大きめサイズのキャンディ3つ。

「どうぞ。結構この体勢キツいので……」
「だろうな」

呆れた様子の七弥ななやが、代表してキャンディを受け取った。

受け取ったかを確認した希衣沙きいさは、再びもごもごと白い蓑の中へ戻ってしまう。

(結局、蓑虫のまま…か)

蜘蛛…もとい、蓑虫・希衣沙きいさの姿を見て、倉世くらせは心の中で呟いた。




木にぶら下がったままの希衣沙きいさは放置し、最初にいた部屋へと戻ってきた三人。

「あ!おかえり」

三人が戻ってくるなり、段ボール箱の傍に立つ白季しらきは出迎える。

「どうだった?」
「まぁ、いろいろ貰ってきたが……お前は?」

倉世くらせは手に持っていたお菓子の山を見せた。
白季しらきは羨ましそうに、三人の持つお菓子を見つめ……

「ふふふ。僕もまあまあ、だったよ」

傍にある段ボール箱を開けた白季しらきは、中を倉世くらせ達の方へ向けた。
段ボール箱に入っていたのは、溢れんばかりのお菓子の山だ。

「…一体、何処をどう回って集めてきたんだ?」

自分達が集めたお菓子の量とは違い、大量のお菓子に七弥ななやは疑問を口にした。
ふふふ、と笑った白季しらきは人差し指を振る。

「いろいろ駆使して集めてきたんだ。主に学舎の先生達から、貰ったんだけどね」
「なるほど、そういうルートで集めた結果か…」

倉世くらせは呆れたように、白季しらきのお菓子の山に目を向けた。

「で、これからどうするんだ?」
「あぁ、うん。もうちょっとで全員揃うと思うから…」

白季しらきの言葉と同時に、彼らのいる部屋の扉が開く。
そこには樟菜くすなと箒を持った魔女・織葉おりは、棺桶を持ったミイラ・杜詠とよみやリアカーを引いた右穂うすいと自称・蜘蛛の希衣沙きいさが立っていた。
…正確には、右穂うすいが引くリアカーに白い蓑虫状態の希衣沙きいさが顔だけ出して乗せられているだけだが。

「あ、ちょうどいいところに集まったね。入って入って」

訪問者達を手招きした白季しらきは、段ボール箱に入ったお菓子をテーブルに並べていく。
ケーキにクッキー、マフィンなどたくさん貰ってきたらしい。
テーブルの上は、あっという間にお菓子で埋め尽くされてしまった。

突然部屋にやって来た母親達に、音瑠ねるは驚きの声をあげる。

「ど、どういう事ですの…?」
「ごめんなさいね、音瑠ねる。せっかくのハロウィンだから貴女方をびっくりさせたくて……」

申し訳なさそうに、視線を下へそらした樟菜くすなが苦笑しながら答えた。

「それに私、貴女方に嘘を教えてしまったわ……あの、大蛇の子を連れた方の件――」
「あれ、嘘だったのっ?」

驚きのあまり目を白黒させた音瑠ねるは、母親の顔をただ呆然と見つめていた。
倉世くらせは真意を確かめるように杜詠とよみ右穂うすいの顔を順に見る。
その事について答えたのは、苦笑している杜詠とよみではなく右穂うすいだ。

「申し訳ありません。さすがに、大蛇の子を連れて歩かれる方はハロウィンであってもいませんが……」

引きつった笑みを浮かべた七弥ななやは、何か引っ掛かりを覚え訊ねた。

「……が、何だ?」
「大蛇の子ならば、ここにいるぞ」

右穂うすいの代わりに答えたのは、棺桶を横たえた杜詠とよみだ。
…気のせいか、棺桶の中でガサゴソと動いている音が聞こえている。

「いや、そこにいるのは十分にわかったので絶対に開けるなよ……」

嫌な予感がしたらしい七弥ななやは、慌てて杜詠とよみに釘を刺しておく。
同意するように、倉世くらせ音瑠ねるも首を縦にふって拒否する。

「なんだ、あれだけ大蛇の話題を出しておいたのにダメか……カボチャ色で綺麗なんだがな」

残念そうに呟いた杜詠とよみみは、棺桶の上に座った。
できれば、そのまま立たないでほしいなぁ~と願った倉世くらせ達であった。


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