ハロウィンパーティー?

恐ろしい?魔女・織葉おりはの所を後にした三人が次に訪れたのは――

「……ミイラ男?」

三人の目の前に立っているのは包帯を全身に巻き、傍に棺桶を置く人物だ。
ミイラ男はゆっくり首をふる。

「私だ、杜詠とよみだ」
「あぁ……杜詠とよみ殿。何されてるんですか?」

呆れ顔の七弥ななやは、ミイラ男こと杜詠とよみに訊ねた。
杜詠とよみは楽しそうに笑うと、ほどけた包帯部分を指差す。

「見ての通り、ミイラ男だ。包帯は簡単に手に入るからな、ははは」

楽しそうに笑う杜詠とよみに、全員同じ事を思った。

――簡単に手に入るでしょうよ。医者なんだから、と。

「それよりも、だ。お前達、菓子を取りに来たんだろう?」
「えっ…あ、はい」

思わず杜詠とよみのミイラ姿に見入っていた音瑠ねるは、彼の言葉に我に返って小さく頷いた。
それを見た杜詠とよみは笑いながら傍に置いていた棺桶の蓋を開けて、中から小箱を3つ取り出す。

「中はケーキだ。乱暴に扱うなよ?」
「はぁ、ありがとうございます……」

小箱を受け取った倉世くらせは、ちらりと棺桶の中に目を向ける。
中にはまだまだ小箱があり、ドライアイスの冷気で満たされているようだった。

(あーなるほど…簡易冷蔵庫みたいなものなのか。あの棺桶は)

納得したように何度か頷いた倉世くらせに、ミイラ姿の杜詠とよみはおかしそうに笑う。

「なかなか良い案だろう?」
「はぁ…まぁ、確かに」

すごく楽しそうな杜詠とよみの様子に、倉世くらせも笑いながら同意する。




「…後は誰の所へ行けばいいのだろうか?」

考え込むように呟いた倉世くらせに、同行している七弥ななや音瑠ねるも首をかしげた。

「まったく、あの愚かな方…何も説明せずに行ってしまわれるんですもの……」
「確かに…手がかりはないが、何処へ向かわせたいかわかるな」

七弥ななやは顎に指を当て考え込んで口を開く。

「残りは右穂うすいと、希衣沙きいさだと思うのだが……」
「あら?どうしてかしら?」

七弥ななやの推理に、音瑠ねるは首をかしげ訊ねた。

「だって、まだ『あの人達』もいるでしょう?」
「貴女の言う『あの人達』を出したら、色々と影響が出るんですよ。本編に」

コソコソと小声で説明する七弥ななやに、音瑠ねるも「あぁ、確かにそうですわね」と納得したように頷く。

「それなら、右穂うすいさんと希衣沙きいささんだけですわね」
「…どういう消去法だ?」

呆れた様子で倉世くらせは呟いた。

「というか…イタズラする間もなく、菓子を手に入れてしまってるな。俺達」
「皆、イタズラされる前に菓子を渡してしまえ…というのを心得ているんだろ」

苦笑した七弥ななやは、倉世くらせに答える。

「まぁ、最終的には菓子を集めるのが目的なんだ。気にしないでおこう」
「確かにお菓子を集めるのが最終的な目的ですが、その流れも楽しむべきかと……」

七弥ななやの言葉に同意しつつも、咎めるように答える声。
三人が声のした方を向くと、にっこりと微笑んでいる右穂うすいがリアカーを引いて立っていた。

「…右穂うすい、ひとついいか?」

もう…この状況に慣れてきた倉世くらせは、確かめるように右穂うすいに訊ねる。

「お前の、その姿はフランケンか?」
「はい、その通りでございます」

右穂うすいの姿は顔や手にペイントでつぎはぎを描き、ボロボロなシャツとスラックスを身につけていた。
恭しく頭を下げた右穂うすいは、言葉を続ける。

「せっかくのハロウィンなのだから、と久しぶりに仮装をする事になりまして……」
「な、なるほど」

右穂うすいの話に、倉世くらせは納得したように頷いた。

「それで、後ろのリアカーには……」
「はい、お菓子を入れております。これから配りに回ろうかと――」

引いているリアカーに乗せたお菓子の山に目を向けた右穂うすいは、意味深な笑みを浮かべる。

「もちろん、みなさまにもお配りしますが」
「が?」

意味深に見つめてくる右穂うすいに、三人は不思議そうに首をかしげる。
しばらくの間を空けた後、最初に口を開いたのは右穂うすいだ。

「…いらないのですか?」
「いや、いりますけど……」

困惑しつつ答えた七弥ななやは、同意を求めるように倉世くらせの方を見る。
その視線に気づいた倉世くらせは、頷くと口を開いた。

「貰えないだろうか?」
「違いますよ?」

ゆるく首を横にふった右穂うすいは、意地悪く微笑んだ。

「ハロウィンで、お菓子をねだる時に言う言葉がありますよね?」
「は?あ、あぁ……」

一瞬何を言っているのかわからなかった倉世くらせだが、ひとつの言葉を思い出し手を打った。

「確か『トリック オア トリート』だったよな?」
「はい、正解でございます」

満足げに頷いた右穂うすいは、リアカーから小さな袋3つを倉世くらせに手渡す。
それを倉世くらせが受け取ると、右穂うすいは「では、私は配りに回ってきます」と頭を下げ去っていった。

「アイツも、しっかりハロウィンを楽しんでいるな」
「フランケン姿が妙に似合っていましたわね……」

リアカーを引くフランケン・右穂うすいの後ろ姿を、七弥ななや音瑠ねるは呆然と見送るのだった。


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