ハロウィンパーティー?

「…それで、一体何のご用件ですか?私、貴方に呼び出されるような事はしていないですけど?」

不機嫌そうにやって来た音瑠ねるは、白季しらきに詰め寄った。

「私は暇ではないのよ、貴方みたいに」
「…僕が年中暇にしているような言い方はやめてほしいなぁ」

むっとした様子で、白季しらき音瑠ねるに言い返す。

「どうせ君の事だから、倉世くらせに呼ばれたからノコノコ来たんだろうけどさ。もしかして、ふたりっきりになれるとでも思ったの?」
「…っ、うるさいです!!」

耳まで真っ赤にした音瑠ねるは、ちらりと倉世くらせを見ながら答えるとそのまま黙ってしまった。

「………?」

音瑠ねるの視線に気づいた倉世くらせだったが、何故彼女が顔を真っ赤にしているのかわからなかったようだ。

「……まぁ、そんな些細な事は置いておいてさ」

小さく咳払いした白季しらきは段ボール箱を開け、中身を取り出すと恥ずかしがっている音瑠ねるにそれを手渡した。

「とりあえず、君にはこれ」
「…な、何?」

思わず受け取った音瑠ねるは、手渡された『それ』を見た。
手渡された『それ』は、オレンジ色のふかふかしたものだ。
白季しらきは満足そうに頷くと、倉世くらせ七弥ななやにも段ボール箱から取り出したものをそれぞれ手渡す。

「君達には、これとこれ…ね」
「はぁ?」

白季しらきから手渡された『それ』を、それぞれ確認したふたりは異口同音で驚いた。
手渡された『それ』は――倉世くらせが黒色の布類、七弥ななやが茶色の毛のもふっとしたものだ。

「で、残りは僕の分…っと」

白季しらきが最後に取り出したものは、白色と藤色を基調としたワンピースだった。

「…魔女っ子か?」

思わず訊ねた倉世くらせは、彼の持つワンピースを見る。
倉世くらせの言葉に、白季しらきは小さく頷いた。

「うん、そうみたいだね」
「その…似合いそうで、笑えない……」

着用姿を想像したのか、倉世くらせはゆっくりと視線を外す。
そして、自分の渡された衣装を広げて首をかしげる。

「…マントとスーツ?」
「だな…?」

七弥ななやは隣で倉世くらせの衣装を見て、同意するように頷く。

「さしずめ吸血鬼の衣装、といったところか……」
「…なるほど。で、七弥ななやの持つ『それ』は?」

自分の持つ衣装の正体を知った倉世くらせは、七弥ななやの持つ衣装に視線を向ける。
同じく倉世くらせの衣装から自分の持つ衣装の方へと目を向けた七弥ななやは、ゆっくりと衣装を広げた。

「耳と尻尾の付いた、毛深いやつだよな?」
「あぁ、狼…だよな?」

衣装の耳や尻尾を掴んだふたりは首をかしげる。
白季しらきは笑いながら、首をかしげたままの倉世くらせ達に声をかけた。

「ふふふ、そう…狼男だよ。七弥ななやに似合うだろうなぁ、と思ってね」
「お前の策略か……」

吐き捨てるように小さく呟いた七弥ななやは衣装を持ったまま、くるりと回れ右をしそのまま歩きだす。

「…七弥ななや、何処へ行くのかな?」

にっこりと微笑んだ白季しらきは、このまま去ろうとする七弥ななやに訊ねた。

「まさか、とは思うけど……君、逃げようとか考えていないよね?」
「………まさか」

白季しらきの言葉に足を止め、振り返った七弥ななやは嫌々ながら答える。

「…逃げるわけではありませんよ、着替えてくるんです。倉世くらせ、ちょっと来い」
「あ、あぁ……わかった」

七弥ななやから呼び出された理由を察し、倉世くらせはため息をつき頷いた。

「俺も、着替えてくるか……」

どうせ七弥ななやの苦情を聞く羽目になるのだから、ついでにそこで着替えればいいと考えた倉世くらせは楽しそうに笑う白季しらきの方を見た。
白季しらきは小さく頷き、「いってらっしゃい」と言うように手を振っている。

諦めたように再びため息を漏らしている倉世くらせの襟首を、七弥ななやが引っぱり行ってしまった。

その為、残されたのは白季しらき音瑠ねるのふたりだ。

「…ところで、これは何かしら?」

オレンジ色の、もふっとした衣装を手に音瑠ねる白季しらきに訊ねた。

「もしかして…これ、貴方が選んで――」
「君、何で僕が選んだと思うんだい?」

意地悪げな笑みを浮かべた白季しらきは、警戒している音瑠ねるに囁く。

「もしかすると、倉世くらせが選んだものかもしれないよ?」
「くっ……わかりました。私も着替えてまいりますわ」

ぎゅっと衣装を抱きしめた音瑠ねるは、小走りに着替えへ向かう。
小走りに去る彼女の後ろ姿を、白季しらきは小さく笑いながら見送っていた。




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