白い季節のご奉仕

夜の廃墟の洋館の中――

「えへへ、アルノタウム西方大神殿のお菓子ゲットー」

ソファーに座った、長い髪に長いリボンを結んだ少年は嬉しそうに笑っている。
その隣には、ピンクを基調にしたドレスに身を包んだ少女が座っていた。

「……昔食べたきりだから、すごく楽しみ」
「そういえば、そうだよね~」

頷いた少年は、箱を開ける。
中には星形のパンドーロが入っていた、が肝心の粉糖の小袋がない。

「あ…れ?」
「どうしましたか、ふたり共?」

黒髪の男がお皿を手に、不思議そうに声をかける。

「粉糖をかけてくださいよ」
「ないんだよ~、その肝心の粉糖ものが」

長いリボンを結った少年は、涙目になりながら箱の中を探していた。
それを見かねた青いコートを着た男も傍に行くと、一緒に探してみるが見つからず首を横にふった。

「ないな…入れ忘れかもしれないぞ?」
「えー、甘さなし~」

頬を膨らませた長いリボンを結った少年は、ガッカリしたようにうなだれる。
隣に座っている少女も悲しそうにパンドーロを見つめていた。

「はぁ、何をやってるのかと思えば……ほら」

落ち込んでいるふたりの前に差し出されたのは、粉糖の小袋だ。
二人が顔を上げて見ると、金色の瞳の男が小袋を差しだし立っていた。

「少し用事で、アルノタウム西方大神殿へ行ってきてな……小袋が余っていたからと貰ってきた」

何故貰ったんだろうか、とその場にいる者達は疑問に思ったが誰も口にはしない。

嬉しそうな長いリボンを結った少年は、受け取るとパンドーロにまぶした。
そして、それを黒髪の男が切り分けてお皿に取り分ける。
ピンクのドレスを着た少女がそれを配りつつ、一皿余ってしまい不思議そうにしていた。
そこに現れたのは、黒服の男だ。

「あー、なんとか間に合ったみたいだね。俺の分をくれないかい?」
「うん…はい、一番小さいの……」

渡されたお皿と他の人のお皿を見比べた黒服の男は、むっとした様子で訊ねる。

「ほぼ同じサイズじゃないかい、これは?」

うん、と頷いたピンクのドレスを着た少女は真顔で黒服の男を見た。
黒服の男も、不思議そうに少女を見ている。

しばらく見つめ合った後、負けたようにため息をついた黒服の男は大人しくパンドーロを口に運ぶと美味しそうに食べた。
それを見た長いリボンを結った少年達も楽しそうに笑いながら、食べ始める。

――各々、赤いワインを自分のグラスに注ぎながら、廃墟の街に住む者達のクリスマスは終わっていくのだった。


***

「あっ…」

自宅にて、イールトアス大司祭に貰ったパンドーロを食べていたセネトは思い出したように声を出した。

「やっばいよな…小袋ひとつ、箱に入れ忘れたかもしれない。けど、まぁいいか。気になったって事は、多分きちんと入れたんだろうし」

一人納得したように頷くと、再びパンドーロを口に運ぶセネトだった。



[Christmas_End]




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