白い季節のご奉仕

深夜になっても、人気はなくならなかった。
子供の代わりに受け取った親達は、イールトアス大司祭や神官・シスター達にお礼を言って帰っていく。
中には、イールトアス大司祭に祝福を求める親達もいた。

眠っていたセネトが目を覚ましたのは、そんな忙しさの中だ。

「ん……何だ、これ?」

自分の傍に置かれたプレゼント箱に気づいたセネトは、首をかしげながら箱を開ける。
中には、自分が眠気と戦いながら詰め込んだパンドーロが入っていた。

「これ、貰ってもいいのか……?」
「あぁ、セネト。起きたんですか?それは、イールトアス大司祭からのお礼です」

驚きながらパンドーロを見ているセネトに気づいたクリストフは、プレゼントを受け取りに来た人に渡しながら伝える。

「明日は、ゆっくり休んで良いそうですよ。よかったですね、ここのお菓子も手に入って……はい、どうぞ」
「……よっしゃ!プレゼント渡し、もう少し頑張ってやるか」

貰えるとは思っていなかったお菓子が手に入り、やる気が出たらしいセネトはクリストフの隣でプレゼント渡し作業に加わった。

セネトも頑張ったからか、用意していたプレゼントは明け方にはすべてなくなった。
寝ずに頑張った神官やシスター達もクタクタになっているのか、奥の部屋へ行った者や長椅子に座る者がいた。

そんな中、セネトはふと気になったらしい疑問を口にする。

「プレゼントって、25日の夕方まで貰えるんだろ?確か…足りなくないか?」
「順次作っているので大丈夫ですよ。早朝までは、あまり人が来ないので今のうちに用意するんです」

セネトの疑問に答えたのは、イールトアス大司祭だ。

「あー、なるほど…って、まさか」

一瞬また箱詰め作業をさせられるのではと、ビクついたセネトは逃げる体勢を作りつつ訊ねた。
だが、イールトアス大司祭は笑いながら首を横にふって否定する。

「大丈夫ですよ、今度は数が少ないので我々だけで大丈夫です」
「なら、いいがな。びっくりしただろうが……ぁ。そういえば、クリストフから聞いたんだが……プレゼントありがとう」

安心した様子のセネトは、クリストフから聞いたプレゼントの件を思い出し照れながらイールトアス大司祭に礼を言った。
礼を言われたイールトアス大司祭は「いいえ」と優しく微笑んだ。

「きちんとお礼は言ったようですね?」

きれいに片づけをしていたクリストフは笑いながら声をかけると、セネトは顔を真っ赤にさせた。

「っ、うるせー!」

そんなセネトの様子を、クリストフとイールトアス大司祭は笑いながら見ているのだった。

休んで良いと言われていたセネトであったが、夕方までプレゼント配りを手伝った。
おかげで何事もなく、プレゼントをみんなに配れたのでイールトアス大司祭も大満足のようだ。


***


「…いろいろ大変だったが、これが手に入ったのはよかったよな」

アルノタウム西方大神殿からの帰り、行きと同じようにイールトアス大司祭の馬車に乗るセネトとクリストフ。
手に入ったアルノタウム西方大神殿のお菓子を、セネトは嬉しそうに持っていた。

「初めてのお菓子だから、帰って食べよーう!」
「よかったですね、セネト」

完全に疲れきっているクリストフは、ぼーと窓の外を眺めている。
セネトは首をかしげながら訊ねた。

「草むしりの疲れでも出たのか?」
「いえ、草むしりはあまりなくてすぐに終わったんですよ。ただイールトアス大司祭の愚痴を一晩中聞いたので、今頃になって疲れが……」

はぁ、と深くため息をついたクリストフにセネトは思った。

(草むしり、簡単に終わってよかったな~と言うつもりだったが……違うところで疲れたんだな。クリストフのヤツ……)

少しだけクリストフが気の毒だな、と思ったセネト。

疲れたが嬉しそうなセネトと疲れただけのクリストフを乗せて、馬車はフローラント退魔士国へと向かって走る。

――こうして、忙しく大変であったクリスマスは幕を閉じたのだった。


***

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