白い季節のご奉仕

「…今回お二方には、お菓子のラッピングと庭先の掃除をやっていただきたいのです」

よろしくお願いします、と頭を下げるイールトアス大司祭に「はぁ…」とセネトもつられて頭を下げた。

「そ、それだけでいいのか…?それな、ら゛っ!?」

プレゼントの包装や庭先の掃除をするだけなら、簡単な作業だと考えたセネトは楽勝とばかりに答えた。
だが、事実を知っているクリストフは慌ててセネトの口を塞いだ。

「んぐー、んぐぐんぐ!んぐぐー!」
「…バカが!どれも簡単じゃないんですよ!?何、勝手に了承しようとしてるんですか?」

口を塞がれたセネトが「んぐんぐ」抗議の声をあげるが、クリストフは手を離さずイールトアス大司祭に聞こえないように小声で囁いた。
そして、クリストフはイールトアス大司祭の方をチラリと見る。

「彼、かなりの量させる気満々なんですよ…」
「もちろんですよ。でなければ、私だけが怒られ損ではないですか。私が壊したわけではないのに」

言葉使いこそ丁寧だが、明らかに素のイールトアス大司祭の言葉にクリストフは「あー…」といった様子でセネトの口から手を離した。
イールトアス大司祭の言葉に、セネトは驚いたようにイールトアス大司祭とクリストフを交互に見る。

「い…今の、は?」
「イールトアス大司祭はあなたが壊した墓地の件と自身のところの神官が起こした不祥事で、かなり説教されたそうですよ……」

呆れたクリストフは、目が点になっているセネトに小声で教えた。
セネトは納得したように小さく頷いて、再びイールトアス大司祭を見る。

「それは、ごめんなさい……」

セネトが素直に謝ったのは、イールトアス大司祭の表情にあった。
イールトアス大司祭は先ほどからにこやかに微笑んでいるのだが、よく見ると明らかにひきつった笑みを浮かべていたからだ。

(気のせいか、クリストフのヤツと似た恐怖を感じるな……)

ははは、と冷や汗を浮かべ笑ったセネトは心の中でそう呟いた。

「…そろそろいいでしょうか?」

こほん、と咳払いをしたイールトアス大司祭は優しい笑みを浮かべたまま本題に入る。

「あまり時間がないので、簡潔に言いますね。ひとりは庭掃除、もうひとりはプレゼント包装…さっさと選びなさい!」
「…かなり苛立っているようですよ、イールトアス大司祭は」

小声でセネトに言ったクリストフは、イールトアス大司祭を顎で指した。
イールトアス大司祭の、突然の様子にセネトは頷いて「そうだな…」と呟く。

「…おれがプレゼント包装して、クリストフが庭先掃除…でいいよな?」
「僕はかまいませんよ。むしろ、そちらの方が楽ですから……」

むしろ~から聞き取れないくらいの小声で答えたクリストフは、イールトアス大司祭に確認した。
ふたりの役割が決まったので、イールトアス大司祭は傍にいた神官に指示する。

「こちらの『赤い破壊魔』がプレゼント包装がしたいそうなので、とっとと連れて行ってください」
「おい!『赤い破壊魔』って、おれの事か!!しかも、何気に増えてるし!」

いきなり増えたあだ名にセネトは思わずツッコむが、イールトアス大司祭も傍にいた神官もスルーを決めこんだ。
その上、神官は「わかりました」と返事をしていた。

「いや…わかったらダメだろう、そこは!おい、聞いてるかー」
「諦めて行ってきなさい、セネト」

笑いを堪えているクリストフは、怒るセネトの背中を押す。
バランスを崩しかけたセネトの右腕をイールトアス大司祭に頼まれた神官が持ち、そのまま引きずるように連れて行ってしまった。

「ちょっ、待て!おい…」

セネトの抗議の声は、虚しく廊下を響き渡るだけだった……

「…哀れな」

セネトの叫びを聞きながら、クリストフは気の毒げに呟く。

「…砂糖まみれ必須の作業ですが、いいんですか?セネトに行かせて」
「ん?いい、いい。少しは大変な目にあえば…俺が楽しい」

おかしそうに笑ったイールトアス大司祭は、クリストフの肩に手を置いた。

「お前は楽~な草むしりでいいから、30分間。終わったら、ちょっと休憩な」
「あー…やはり、それが目的ですか。セネトに悪い気がしますが、たまには良いですよね」

この時期、大司祭が一番忙しくまともに休憩できないイールトアス大司祭はクリストフを来客としてもてなすという口実で休もうと考えたらしい。
それに気づいたクリストフだったが、自分も死ぬほど忙しい毎日をセネトともう一人のせいで送っていたので納得したようだ。

色々頑張ったクリストフは、一時ひとときの休みを手に入れた。


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