一章 ステンドグラスは幻に…
弟であるリルハルトのいる廃教会に辿り着いたのは、夕刻も過ぎたくらいだった。
ざっくりと周辺に危険がないか見て回った後、弟の気配のする廃教会二階へ向かった俺は思わず吹いてしまった。
だって、とりあえず直しました~って感じの部屋の床の上で弟が寝転がってんだもんな…
笑うなって方が無理だろう。
そもそも、結界をはってるからって…油断し過ぎだろ、リルハルト。
まぁ、も少しすれば起きるだろうけど…とりあえず、可愛い弟にはお仕置きとしてイタズラの刑だ。
昔、序列5位であるアルマンに寝起きドッキリを仕掛けたやつだけど…首飛ばすようなドジを序列3位のリルハルトはしないだろう。
あぁ、鏡は一階の湯殿に落ちていたのを使ったんだ…丁度いい形だったんだよ。
ただ、起きるのを待つのって暇だよな…って事で、ステンドグラスの様子を見に行ったんだ。
ミンナの馬鹿が力加減を間違えた的な事を言ってたから…少し心配になって、"我が君"の許可を得て此処へ来たわけ。
しかし、久しぶりに"我が君"の焦った表情を見たなー。
…普段はあんま表情ねーんだもんな、あの方は。
おっと、話が脱線したが…――
ステンドグラスを確認しに礼拝堂へ行ったんだが、粉砕されて無かったわ。
その上、うようよと死霊がいまくってるし…何だよ、これ状態。
笑うしかないだろー、何も残ってなかったんだから。
弟の話聞いてみるかって事で、部屋に戻ると丁度リルハルトが目を覚ましたところだった。
あいつ、かなりビックリしていたな。
「…何処から?」
弟の言葉に、思わず「一階にある湯殿に落ちてた」と答えそうになっただろーが。
俺は、必死に笑いを抑える事に集中する。
理由 がわからないながらも弟は鏡の罠から抜け出し、その原因を思案していた。
もういいかな…という事で、声をかけてみる。
「よーぉ!首尾はどーだ?」
「……」
俺の声に、何故か弟は動かなくなった…というか、間違いなく俺の存在を認めたくないって雰囲気じゃないか。
「…いやいや、実体だから。現実見ろって」
慌てて「兄ちゃんは、ここに存在してる」って事を言うと、弟は何故か諦めたかのように俺の方を向いた。
弟よ…その態度は、少し酷くないか?
ちょーっと傷付いたわ…さすがに。
「"我が君"の護衛は?」と目で訴えてきた弟に、俺は笑顔でひとりで来た事を伝えておいた。
まぁ、護衛は序列4位のヴラチスラフに頼んできたから大丈夫なんだ…って事は、伝えなくていいか。
イタズラについて文句を言われたが、軽くスルーでいく。
そんな些細な出来事は気にするな…と、弟には言いたい。
ちなみに、アルマンに仕返しとして同じ事されそうになったけど俺は未然に防げたもんね!
序列が下の者にも優しさを、と言うが…ちゃんとあるぞー。
…ただ、弟以外に優しくする理由はねーけどな。
***
何しに来たのか、と訊いてきた弟に俺はステンドグラスの状態と粉砕犯が序列8位ミンナだという件を話した。
可愛い弟にその事実を話すのは心苦しかったが、"我が君"に隠さず話すよう言われてな…全部教えてあげたわけだ。
案の定、あいつは笑顔でブチ切れてしまったわけ…弟はさ、怒ると怖いんだぞー。
俺、知ーらない!
…だが、ミンナを連れて来るよう頼まれてしまったから知らぬ存ぜぬというわけにいかなくなったけどな。
とりあえず、城へ戻ってミンナを探そうと教会の外に出たらゾンビが大量で驚いた。
何でなのか、この時は深く考えてなかった…んだが、この時不思議に思っておけばよかったと少しだけ後悔してしまったわけ。
城に戻ってすぐ、ヴラチスラフに両肩を掴まれた。
何かと思ったら"我が君"が暇だからと扱いてくる、らしい。
「あー、俺もよくやられてっから…頑張れ、としか言えねーわ。それより、も少し俺の代わり頼むなー」
そう言ったら、あいつ…泣きそうな表情を浮かべながら玉座の間へ、足取り重く行ってた。
可哀想だが、ご愁傷様!!
玉座の間に向けて手を合わせた後、ミンナを探して中庭に出てみると丁度探し人がいた。
「よーぉ、ミンナ…今から一緒に来てもらおーか?」
俺の声に驚いたらしいミンナは、からくり人形のような動きでこちらを二度見して…逃げた。
いや、うん…わかるぞー、その気持ち。
リルハルトがブチ切れた事に気づいたんだろー、俺の顔見てさぁ。
でも逃がすつもりねーから、数分で捕まえたけどな!
その時、うっかり「ゾンビ」の話をしてしまってさー。
…火事場の何とかっていう力を発揮したミンナが暴れて、また逃げたんだ。
しかも、城外へ…――
一応追ったんだが、行く先々でゾンビが湧いてきて…どーしたもんか、と思ってたらミンナが助けを求めてきた。
しょうがないからミンナを回収して、その件を"我が君"に報告したんだが…
どうやら、前回の協力者共が人に対して最期の嫌がらせとしてゾンビ発生の魔道具を世界中にばら撒いたらしい。
――と、暇を持て余した"我が君"が一時間で調べてくださったわけだ。
うん、さすが"我が君"だよなー。
…ヴラチスラフ、助かって良かったねー。
ミンナはしばらく使いものにならんので、その件も併せてリルハルトに教えようとしたんだが…こっちはこっちで妙な事になっていた。
可愛い弟のそばに、何か変な気配がしてんだよ…つーか、あれはあいつか?
何故か、弟を気に入って「友人」だと言ってた人間の騎士――確か、エンクヴィストってやつ…何でいんの?
そーいや、あいつ…俺の事は嫌ってたよなぁ。
直接、刃を交えた回数は俺の方が多かったと思うんだけど…うーん?
あ、思い出した…――
最終決戦の時、勇者が俺の隙をついて弟を討った際にはすんげー茶番劇がはじまってさ。
弟も、おそらく思っただろーけど…俺は思ったね、「何これ…」って。
――で、涙を流し悲しむ勇者一行に俺は討たれたわけだ…あの時が、一番やりにくかったわ。
もう、本気でわけわかんなかったもんな…状況が。
…そんな回想をしていたら、弟が急に笑いはじめた。
多分、笑うしかない状況になって…追いつめられて、壊れたかな。
とりあえず、慰めの言葉が思い浮かばねーし…俺も笑っておく事にするか、あはははー。
え゛っ…マジか、リルハルト。
俺にあいつを押しつけよーとしてんじゃねーよ、嫌だって…
エンクヴィスト…は?今は、アルヴィド?
名前教えてもらったのか…え、愛称も勝手に考えられてたとか怖っ。
うへぇ~…前回の記憶持ってんのか、今までと違うのな…何でかなー?
他の勇者連中もなのかね…もしかして。
可愛い弟の頼みとはいえ…あいつと剣を交えろって、何の罰ゲームだよ!
…俺も苦手だって、あいつは特に。
ざっくりと周辺に危険がないか見て回った後、弟の気配のする廃教会二階へ向かった俺は思わず吹いてしまった。
だって、とりあえず直しました~って感じの部屋の床の上で弟が寝転がってんだもんな…
笑うなって方が無理だろう。
そもそも、結界をはってるからって…油断し過ぎだろ、リルハルト。
まぁ、も少しすれば起きるだろうけど…とりあえず、可愛い弟にはお仕置きとしてイタズラの刑だ。
昔、序列5位であるアルマンに寝起きドッキリを仕掛けたやつだけど…首飛ばすようなドジを序列3位のリルハルトはしないだろう。
あぁ、鏡は一階の湯殿に落ちていたのを使ったんだ…丁度いい形だったんだよ。
ただ、起きるのを待つのって暇だよな…って事で、ステンドグラスの様子を見に行ったんだ。
ミンナの馬鹿が力加減を間違えた的な事を言ってたから…少し心配になって、"我が君"の許可を得て此処へ来たわけ。
しかし、久しぶりに"我が君"の焦った表情を見たなー。
…普段はあんま表情ねーんだもんな、あの方は。
おっと、話が脱線したが…――
ステンドグラスを確認しに礼拝堂へ行ったんだが、粉砕されて無かったわ。
その上、うようよと死霊がいまくってるし…何だよ、これ状態。
笑うしかないだろー、何も残ってなかったんだから。
弟の話聞いてみるかって事で、部屋に戻ると丁度リルハルトが目を覚ましたところだった。
あいつ、かなりビックリしていたな。
「…何処から?」
弟の言葉に、思わず「一階にある湯殿に落ちてた」と答えそうになっただろーが。
俺は、必死に笑いを抑える事に集中する。
もういいかな…という事で、声をかけてみる。
「よーぉ!首尾はどーだ?」
「……」
俺の声に、何故か弟は動かなくなった…というか、間違いなく俺の存在を認めたくないって雰囲気じゃないか。
「…いやいや、実体だから。現実見ろって」
慌てて「兄ちゃんは、ここに存在してる」って事を言うと、弟は何故か諦めたかのように俺の方を向いた。
弟よ…その態度は、少し酷くないか?
ちょーっと傷付いたわ…さすがに。
「"我が君"の護衛は?」と目で訴えてきた弟に、俺は笑顔でひとりで来た事を伝えておいた。
まぁ、護衛は序列4位のヴラチスラフに頼んできたから大丈夫なんだ…って事は、伝えなくていいか。
イタズラについて文句を言われたが、軽くスルーでいく。
そんな些細な出来事は気にするな…と、弟には言いたい。
ちなみに、アルマンに仕返しとして同じ事されそうになったけど俺は未然に防げたもんね!
序列が下の者にも優しさを、と言うが…ちゃんとあるぞー。
…ただ、弟以外に優しくする理由はねーけどな。
***
何しに来たのか、と訊いてきた弟に俺はステンドグラスの状態と粉砕犯が序列8位ミンナだという件を話した。
可愛い弟にその事実を話すのは心苦しかったが、"我が君"に隠さず話すよう言われてな…全部教えてあげたわけだ。
案の定、あいつは笑顔でブチ切れてしまったわけ…弟はさ、怒ると怖いんだぞー。
俺、知ーらない!
…だが、ミンナを連れて来るよう頼まれてしまったから知らぬ存ぜぬというわけにいかなくなったけどな。
とりあえず、城へ戻ってミンナを探そうと教会の外に出たらゾンビが大量で驚いた。
何でなのか、この時は深く考えてなかった…んだが、この時不思議に思っておけばよかったと少しだけ後悔してしまったわけ。
城に戻ってすぐ、ヴラチスラフに両肩を掴まれた。
何かと思ったら"我が君"が暇だからと扱いてくる、らしい。
「あー、俺もよくやられてっから…頑張れ、としか言えねーわ。それより、も少し俺の代わり頼むなー」
そう言ったら、あいつ…泣きそうな表情を浮かべながら玉座の間へ、足取り重く行ってた。
可哀想だが、ご愁傷様!!
玉座の間に向けて手を合わせた後、ミンナを探して中庭に出てみると丁度探し人がいた。
「よーぉ、ミンナ…今から一緒に来てもらおーか?」
俺の声に驚いたらしいミンナは、からくり人形のような動きでこちらを二度見して…逃げた。
いや、うん…わかるぞー、その気持ち。
リルハルトがブチ切れた事に気づいたんだろー、俺の顔見てさぁ。
でも逃がすつもりねーから、数分で捕まえたけどな!
その時、うっかり「ゾンビ」の話をしてしまってさー。
…火事場の何とかっていう力を発揮したミンナが暴れて、また逃げたんだ。
しかも、城外へ…――
一応追ったんだが、行く先々でゾンビが湧いてきて…どーしたもんか、と思ってたらミンナが助けを求めてきた。
しょうがないからミンナを回収して、その件を"我が君"に報告したんだが…
どうやら、前回の協力者共が人に対して最期の嫌がらせとしてゾンビ発生の魔道具を世界中にばら撒いたらしい。
――と、暇を持て余した"我が君"が一時間で調べてくださったわけだ。
うん、さすが"我が君"だよなー。
…ヴラチスラフ、助かって良かったねー。
ミンナはしばらく使いものにならんので、その件も併せてリルハルトに教えようとしたんだが…こっちはこっちで妙な事になっていた。
可愛い弟のそばに、何か変な気配がしてんだよ…つーか、あれはあいつか?
何故か、弟を気に入って「友人」だと言ってた人間の騎士――確か、エンクヴィストってやつ…何でいんの?
そーいや、あいつ…俺の事は嫌ってたよなぁ。
直接、刃を交えた回数は俺の方が多かったと思うんだけど…うーん?
あ、思い出した…――
最終決戦の時、勇者が俺の隙をついて弟を討った際にはすんげー茶番劇がはじまってさ。
弟も、おそらく思っただろーけど…俺は思ったね、「何これ…」って。
――で、涙を流し悲しむ勇者一行に俺は討たれたわけだ…あの時が、一番やりにくかったわ。
もう、本気でわけわかんなかったもんな…状況が。
…そんな回想をしていたら、弟が急に笑いはじめた。
多分、笑うしかない状況になって…追いつめられて、壊れたかな。
とりあえず、慰めの言葉が思い浮かばねーし…俺も笑っておく事にするか、あはははー。
え゛っ…マジか、リルハルト。
俺にあいつを押しつけよーとしてんじゃねーよ、嫌だって…
エンクヴィスト…は?今は、アルヴィド?
名前教えてもらったのか…え、愛称も勝手に考えられてたとか怖っ。
うへぇ~…前回の記憶持ってんのか、今までと違うのな…何でかなー?
他の勇者連中もなのかね…もしかして。
可愛い弟の頼みとはいえ…あいつと剣を交えろって、何の罰ゲームだよ!
…俺も苦手だって、あいつは特に。