追憶のステンドグラス
――昔々、創世の時代のお話です。
造物主たる神エルフェアは、世界と全ての生命に祝福を与え慈しんでおられました。
この世界には、様々な種族が暮らしています…
エルフェア様は皆が仲良く暮らしてくれれば、と願っておられたといいます。
…しかし、世界が発展していくにつれて種族間――いえ、国同士が争う事が多くなってしまうのです。
そういった争いが起こるのは、悲しい事ではありますが…仕方のないもの。
エルフェア様も、それは理解しているので世界に干渉される事はなさいませんでした。
ですが、干渉せざるを得ない事態が起こってしまった…
争いによって世界を巡っていたマナが急激に減りはじめ、魂が上手く循環できなくなったのです。
マナが減った原因は、魔導兵器によるものでした…どの国も持ってしまっていた為に起こったわけです。
…ぇ、わからない?幼い子には、まだ難しかったですね…
うーん、わかりやすく言えば――お部屋の中で喧嘩したら、色々なものがボロボロになるでしょう?
この間、大喧嘩があった時は手洗い場の蛇口が壊れて水が噴き出ていたでしょう?
お水は、地下水…こんなに出てしまうと、無くなってしまうかもしれないというお話をしましたよね。
まぁ、そんな感じです…では、話を戻しますよ。
エルフェア様は考えられました…
どうすれば、必要以上の争いを止める事ができるのか――
そして、考えられた末に"光と闇の戦い "を始められました。
そうする事で、たくさん起こっていた争いを治めて一致団結をさせ…魔族との戦いに集中させたのです。
しかし、普通に戦っては魔族が優勢でしかない…故に、エルフェア様は希望ともいえる4人の存在を遣わされました。
4人の存在により世界は守られ、マナも回復し救われたのです…それは、もう昔の話ですが。
世界は今、また不穏な空気に包まれています…
もうじき、"光と闇の戦い "が始まるのでしょう。
そして、もしかすると…貴方達の中に、エルフェア様より使命を与えられた者がいるのかもしれませんね。
あぁ、お話をしていたらすっかり夕刻近いですね…さぁ、もう帰りなさい。
夜は闇に属する者達の時間――お家に帰ったら、外に出てはいけません。
――そう話した白銀の髪をした神官様に挨拶をして、ぼくらは家に帰った。
神官様の話してくださったお話は、今から500年くらい前に始まった"光と闇の戦い "についてだ…少しだけ難しい内容だったけど、きっと大きくなったらわかるのかな?
***
僕があの日、子供達に話したのは戦い が始まったきっかけについてだけです…内容まで詳しく言ってしまえば、明日になってしまうでしょう。
ちなみに、「あの日」というのは…もう大昔でしかありません。
確か、2回目がはじまる少し前だった気がします…少し難しくてわからないと言っていた人の子は、神 に与えられた使命を全うしたといいます。
今も昔も、世界の流れは変わる事なく…衰退と繁栄を繰り返す――
戦い も数百年毎に起こり、世界は救われるのです。
永い生命を持つエルフや竜達は気づき始めてはいるようですが…人は、その短い生命故か気づく事はできないでしょうね。
この戦い の真意には――
魔族は、もうとっくに気づいているというのに。
まぁ、魔族は知っていても戦い をやめないだろう…と断言できますが。
"光と闇の戦い "が始まれば、世界に様々な物語が生まれるのも必然…
後の世には、書物となっているのが面白いです。
そういう面白味を探すのも、なかなか…と誰か――確か、少し変わったエルフが言って…すみません、今言った事は忘れてください。
ともかく…この、悲劇であり喜劇でもある"光と闇の戦い "には終わりがありません。
誰にも止められない…世界を救う儀式のようなものである、とさえ覚えてくださればいいです。
***
もう何度目になるのかわからない、エルフェアが整えた「世界 」という舞台の上で紡がれる"光と闇の戦い "という名の物語は…――
数多の魂の運命を狂わせ、時に引き寄せられ繋がり…無数の物語を生みだします。
一度砕けてしまったものではありますが…エルフェアは、それを再生させ生かした。
壊れてしまったものは、完全に戻せない――だから、この世界 は戦い の犠牲で成り立っている状態です……
だからこそ、紡がれていく物語は終わらず続いていくのだろう。
きっと、誰もが忘れてしまった瞬間に――本当の終わりが訪れるのでしょう。
――では、これから始まるのは一体どんな物語になるのか…私は夢現に見る事にしましょうか。
…もう、私には見ている事しかできないのだから。
造物主たる神エルフェアは、世界と全ての生命に祝福を与え慈しんでおられました。
この世界には、様々な種族が暮らしています…
エルフェア様は皆が仲良く暮らしてくれれば、と願っておられたといいます。
…しかし、世界が発展していくにつれて種族間――いえ、国同士が争う事が多くなってしまうのです。
そういった争いが起こるのは、悲しい事ではありますが…仕方のないもの。
エルフェア様も、それは理解しているので世界に干渉される事はなさいませんでした。
ですが、干渉せざるを得ない事態が起こってしまった…
争いによって世界を巡っていたマナが急激に減りはじめ、魂が上手く循環できなくなったのです。
マナが減った原因は、魔導兵器によるものでした…どの国も持ってしまっていた為に起こったわけです。
…ぇ、わからない?幼い子には、まだ難しかったですね…
うーん、わかりやすく言えば――お部屋の中で喧嘩したら、色々なものがボロボロになるでしょう?
この間、大喧嘩があった時は手洗い場の蛇口が壊れて水が噴き出ていたでしょう?
お水は、地下水…こんなに出てしまうと、無くなってしまうかもしれないというお話をしましたよね。
まぁ、そんな感じです…では、話を戻しますよ。
エルフェア様は考えられました…
どうすれば、必要以上の争いを止める事ができるのか――
そして、考えられた末に"光と闇の
そうする事で、たくさん起こっていた争いを治めて一致団結をさせ…魔族との戦いに集中させたのです。
しかし、普通に戦っては魔族が優勢でしかない…故に、エルフェア様は希望ともいえる4人の存在を遣わされました。
4人の存在により世界は守られ、マナも回復し救われたのです…それは、もう昔の話ですが。
世界は今、また不穏な空気に包まれています…
もうじき、"光と闇の
そして、もしかすると…貴方達の中に、エルフェア様より使命を与えられた者がいるのかもしれませんね。
あぁ、お話をしていたらすっかり夕刻近いですね…さぁ、もう帰りなさい。
夜は闇に属する者達の時間――お家に帰ったら、外に出てはいけません。
――そう話した白銀の髪をした神官様に挨拶をして、ぼくらは家に帰った。
神官様の話してくださったお話は、今から500年くらい前に始まった"光と闇の
***
僕があの日、子供達に話したのは
ちなみに、「あの日」というのは…もう大昔でしかありません。
確か、2回目がはじまる少し前だった気がします…少し難しくてわからないと言っていた人の子は、
今も昔も、世界の流れは変わる事なく…衰退と繁栄を繰り返す――
永い生命を持つエルフや竜達は気づき始めてはいるようですが…人は、その短い生命故か気づく事はできないでしょうね。
この
魔族は、もうとっくに気づいているというのに。
まぁ、魔族は知っていても
"光と闇の
後の世には、書物となっているのが面白いです。
そういう面白味を探すのも、なかなか…と誰か――確か、少し変わったエルフが言って…すみません、今言った事は忘れてください。
ともかく…この、悲劇であり喜劇でもある"光と闇の
誰にも止められない…世界を救う儀式のようなものである、とさえ覚えてくださればいいです。
***
もう何度目になるのかわからない、エルフェアが整えた「
数多の魂の運命を狂わせ、時に引き寄せられ繋がり…無数の物語を生みだします。
一度砕けてしまったものではありますが…エルフェアは、それを再生させ生かした。
壊れてしまったものは、完全に戻せない――だから、この
だからこそ、紡がれていく物語は終わらず続いていくのだろう。
きっと、誰もが忘れてしまった瞬間に――本当の終わりが訪れるのでしょう。
――では、これから始まるのは一体どんな物語になるのか…私は夢現に見る事にしましょうか。
…もう、私には見ている事しかできないのだから。
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