10話:悠久の霧
【迷いの想い出】を構成するシステムの中――深い霧の漂う空間には、数多の魂の残滓が漂っている。
その中に赤い髪の少女・水城 が、黒い靄のようなものに全身を拘束されていた。
おそらくシステムをほぼ掌握しているが、化身の操作だけは先任であった熾杜 から奪えなかったのだろう。
「…すぐに化身すべてを抑えられないかもしれませんが、私も手伝うのでできるだけ抑えて引っ込めてもらえますか?」
ゆっくりと近づいた天宮 は、彼女に絡みつく黒い靄に触れて解放した。
解放された水城 は頷いて答えた――あの人の支配が弱い化身からすぐこちら側に戻します、と。
意識が引き戻される感覚に顔を上げた天宮 は、禰々 がタイミングを計って自分を【迷いの想い出】から引き離したのだとわかった。
瀬里十 のサポートもあるのだから水城 はすぐに【迷いの想い出】を掌握し、今現れている化身の数を減らしてくれるだろう。
実際すべての化身を片付ける事はすぐにできない…おそらく自分の手足を失う事を恐れた熾杜 が、それに抵抗するはずだからだ。
(ですが、さすがに異変に気付きますよねぇ…自分と対等の者が解放された事に焦ってください、そうすれば隙が生まれる)
熾杜 の方へ顔を向け、様子をうかがっていると彼女が焦っている気配を感じた。
突然、化身の一部――神代 が拘束していた少女・静江 と一部の使用人、真那加 と同年代の子達数人の身体が白い霧だけうっすら残し消えてしまったからだ。
『な、何で…どうして突然、静江 達が消えちゃうのよ!どうしてくれるの、数が減っちゃったじゃない!』
何が起こったのか、すぐには理解できなかった熾杜 が狼狽えているらしい。
化身の数で邪魔者を片付けて自分の欲望を叶えようと考えていたのだろうが、その一部は自分の支配から外れ【迷いの想い出】の中に戻ってしまったので動揺したようだ。
――だが彼女の手足となる化身は少なくなったとはいえ、まだ存在している。
そして、権限を持ったまま化身に堕ちた彼女自身もおそらく戦える力を持っているはずなので油断できない。
厄介となるだろう彼女の力を削る為、懐刀をだした天宮 の背後にひとつの影が差す……
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その中に赤い髪の少女・
おそらくシステムをほぼ掌握しているが、化身の操作だけは先任であった
「…すぐに化身すべてを抑えられないかもしれませんが、私も手伝うのでできるだけ抑えて引っ込めてもらえますか?」
ゆっくりと近づいた
解放された
意識が引き戻される感覚に顔を上げた
実際すべての化身を片付ける事はすぐにできない…おそらく自分の手足を失う事を恐れた
(ですが、さすがに異変に気付きますよねぇ…自分と対等の者が解放された事に焦ってください、そうすれば隙が生まれる)
突然、化身の一部――
『な、何で…どうして突然、
何が起こったのか、すぐには理解できなかった
化身の数で邪魔者を片付けて自分の欲望を叶えようと考えていたのだろうが、その一部は自分の支配から外れ【迷いの想い出】の中に戻ってしまったので動揺したようだ。
――だが彼女の手足となる化身は少なくなったとはいえ、まだ存在している。
そして、権限を持ったまま化身に堕ちた彼女自身もおそらく戦える力を持っているはずなので油断できない。
厄介となるだろう彼女の力を削る為、懐刀をだした
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