2話:断片の笑顔
「ふわぁ……」
よく眠った気がする――って、私…一年眠っていたのにそれでもぐっすりと寝られる自分にびっくりだな。
……それだけ、身体が休息を必要としてるって事なのかも。
隣のベッドで眠っているはずの水城 さんの姿を探すと、もう簡易ベッドは片付けられていた。
どうやら私が起きるよりも先に、水城 さんは起きたみたい……
ベッドから起きて部屋に備え付けられている洗面台で顔を洗うと、部屋の外――医院の廊下に出てみた。
誰もいないからか…廊下はとても静かで、空気がひんやりとしている感じ。
「水城 さんや十紀 先生は…この時間だと、診察室かしら?」
――やっぱり、きちんと朝の挨拶をしないと…ね。
そう考えて、私は2人がいるであろう診察室へ向かった。
待合室も、朝の早い時間だからまだ誰もいないのでガランとしている。
ちょっとだけ、寂しい雰囲気だな……
待合室の扉をノックしようとしたら、中から誰かの話し声が聞こえてきた。
もしかして、誰か診察してもらっているのかも…と、そう思っていると――
「…今すぐに会わせて!あたしが、あの女を殺してやるっ!」
「馬鹿か…それがわかっていて、会わせると思っているのか?第一、神代 もそれを許さないだろう」
「十紀 先生…あんただって、あたしの気持ちわかるはずよ!昨日の夜だって、神代 様は倒れたんでしょう?」
「………」
「あの女がいなければ、神代 様だって苦しまなくていい……あたしの姉様だって……」
「それとこれは、話が別だろう。もう少し頭を冷やせ」
……私はそっと、扉から距離をとった。
この声の主は、十紀 先生と知らない女の子――多分、声の感じからして私と年齢は近い気がする。
何故だか、わからないけど……怖い。
この、知らない女の子の持っている殺意が自分に向けられているのだと直感でわかった。
――でも、一体…何故?
この場にいるのが怖くなって…とりあえず、逃げるように医院の外へ出た。
音をたてず医院の外に出ると…昨日と変わらない、のどかな風景が広がっていて――なんだか…少しだけ安心できた。
何の目的もなく…ただぶらぶらと散歩をしていると、向かいの方向からひとりの青年が歩いてきた。
うーん…あの人、両手にお菓子を持って食べながら歩いているよ。
お行儀が悪いなー……
その青年は私の存在に気づくと、こちらに近づいてきた。
「ふーん…目が覚めたってのは、本当だったんだな」
「……えっ?」
よくわからないけど…彼は、私の事をまじまじと見てくる。
「ふん、さっさと消えてくれねーかな…お前」
「なっ…何でっ!?」
驚いた…――彼の言葉に、医院にいたあの子と同じ意味を持っているのに気づいてしまったから……
一歩、彼は私に近づいてくる……反射的に、私は一歩後ずさった。
わからないけど…この人から危険な気配がしてきてるのを、この時は本能的に察したんだと思う。
私は、咄嗟にその場から逃げる選択をした。
「……ちっ。あの時と 同じで、逃げ足の速いヤツだ」
舌打ちをして言った彼の言葉が、背後から少しだけ聞こえてきた。
***
お菓子を食べながら、真那加 が走り去っていった方向を見ている青年の背後から声がかかる。
「何、勝手な事をしているの…鳴戸 ?」
お菓子を食べている青年・鳴戸 が振り返ると、そこには桃色がかった茶色の髪をした少女が立っていた。
少女は腕を組み、睨むように鳴戸 を見ている。
「あんた…もしかして、あたしの邪魔をする気?」
「はぁ?邪魔してんのはお前だろう、理哉 ?」
鳴戸 は睨み返しながら、目の前に立つ少女・理哉 に答える。
「お前、あの女を殺しに医院へ行ってたろ?それに、そのポシェットの中に刃物を入れているだろ?怖ぇー女だな、お前」
「っ……うるさい!あの女がいなければ、すべてが元通りになるのよ」
ポシェットを大事そうに抱えた理哉 は、鳴戸 を突き飛ばすと走り去っていった。
突き飛ばされ、少しだけよろけた鳴戸 は走り去る理哉 の後ろ姿をむっとしながら見送る。
(けっ…相変わらず、可愛げのないやつだ。だけど、アイツが先にあの女を始末してくれるんなら楽でいいぜ)
再び手に持つ菓子をかじりながら、鳴戸 は医院の方へ歩いていった。
***
よく眠った気がする――って、私…一年眠っていたのにそれでもぐっすりと寝られる自分にびっくりだな。
……それだけ、身体が休息を必要としてるって事なのかも。
隣のベッドで眠っているはずの
どうやら私が起きるよりも先に、
ベッドから起きて部屋に備え付けられている洗面台で顔を洗うと、部屋の外――医院の廊下に出てみた。
誰もいないからか…廊下はとても静かで、空気がひんやりとしている感じ。
「
――やっぱり、きちんと朝の挨拶をしないと…ね。
そう考えて、私は2人がいるであろう診察室へ向かった。
待合室も、朝の早い時間だからまだ誰もいないのでガランとしている。
ちょっとだけ、寂しい雰囲気だな……
待合室の扉をノックしようとしたら、中から誰かの話し声が聞こえてきた。
もしかして、誰か診察してもらっているのかも…と、そう思っていると――
「…今すぐに会わせて!あたしが、あの女を殺してやるっ!」
「馬鹿か…それがわかっていて、会わせると思っているのか?第一、
「
「………」
「あの女がいなければ、
「それとこれは、話が別だろう。もう少し頭を冷やせ」
……私はそっと、扉から距離をとった。
この声の主は、
何故だか、わからないけど……怖い。
この、知らない女の子の持っている殺意が自分に向けられているのだと直感でわかった。
――でも、一体…何故?
この場にいるのが怖くなって…とりあえず、逃げるように医院の外へ出た。
音をたてず医院の外に出ると…昨日と変わらない、のどかな風景が広がっていて――なんだか…少しだけ安心できた。
何の目的もなく…ただぶらぶらと散歩をしていると、向かいの方向からひとりの青年が歩いてきた。
うーん…あの人、両手にお菓子を持って食べながら歩いているよ。
お行儀が悪いなー……
その青年は私の存在に気づくと、こちらに近づいてきた。
「ふーん…目が覚めたってのは、本当だったんだな」
「……えっ?」
よくわからないけど…彼は、私の事をまじまじと見てくる。
「ふん、さっさと消えてくれねーかな…お前」
「なっ…何でっ!?」
驚いた…――彼の言葉に、医院にいたあの子と同じ意味を持っているのに気づいてしまったから……
一歩、彼は私に近づいてくる……反射的に、私は一歩後ずさった。
わからないけど…この人から危険な気配がしてきてるのを、この時は本能的に察したんだと思う。
私は、咄嗟にその場から逃げる選択をした。
「……ちっ。
舌打ちをして言った彼の言葉が、背後から少しだけ聞こえてきた。
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お菓子を食べながら、
「何、勝手な事をしているの…
お菓子を食べている青年・
少女は腕を組み、睨むように
「あんた…もしかして、あたしの邪魔をする気?」
「はぁ?邪魔してんのはお前だろう、
「お前、あの女を殺しに医院へ行ってたろ?それに、そのポシェットの中に刃物を入れているだろ?怖ぇー女だな、お前」
「っ……うるさい!あの女がいなければ、すべてが元通りになるのよ」
ポシェットを大事そうに抱えた
突き飛ばされ、少しだけよろけた
(けっ…相変わらず、可愛げのないやつだ。だけど、アイツが先にあの女を始末してくれるんなら楽でいいぜ)
再び手に持つ菓子をかじりながら、
***