8話:真実の刃
2人の青年を相手にしている赤髪の娘は、一瞬だけ何かに気を取られたようで動きを鈍らせた。
彼女の意志に同調する黒い靄も、その動きを鈍らせたと同時に穐寿 がすべて斬り四散させる。
四散した黒い靄を目にして我に返ったのか、彼女は憎々しげに穐寿 を睨んだ。
「…あんた、医者のくせにちょっと酷くない?」
「酷くないですよ、私は…むしろ優しい方だと自負していますが?」
やわらかな笑みを浮かべた穐寿 が答える――どちらかというと生命を弄ぶ貴女の方が酷いのではないか、と。
その言葉に舌打ちした彼女は両腕を広げ、再び黒い靄を作りだす。
穐寿 だけに意識が向いているうちに、背後へとまわった八守 が隙だらけの彼女の広げている両腕を斬り落とした。
両腕を落としたのは無駄な動きを止める為と、【迷いの想い出】本体に戻らせない為である。
彼女の動きが一瞬鈍った理由 は、自分達の主が桜矢 を救おうと動いた事にあると気づいたからだ。
――少しでも時間を稼がなければ、救出に失敗するかもしれない。
両腕を失った赤髪の娘であったが悲鳴をあげず、何事もなかったように落とされた腕を黒い靄で拾い上げると傷口を合わせて治した。
そして、さらに黒い靄を作ると自身を中心に渦巻かせた…まるで、自身を護る盾とするように。
おそらく、彼女の意志で黒い靄は無尽蔵に作れるのだろう…その代償が何であるのかを知らずに――
【迷いの想い出】という兵器 について、ある程度知る穐寿と八守 が教えるべきなのだろう…だが、それを信じない可能性しかない。
赤髪の娘は盾となる黒い靄とは別に、もう何本か鋭く尖った黒い靄を作りだした。
それを穐寿 と八守 の致命傷となるよう狙って動かした、確実に仕留める為に……
向かいくる黒い靄の明確な殺意に、彼らは諦めたようなため息を同時についた。
「これは…説得など、到底無理そうですね」
「もとよりわかっていた事だ、これ以上生命力を消耗される前に抑えよう…」
黒い靄の攻撃を器用に避けながら、穐寿 と八守 が囁き合うように言葉を交わす。
2人は【迷いの想い出】の『要』である彼女の意識を自分達に向けさせたまま、あまり消耗させず…その上、器となっている水城 の身体を壊さないようにしなければならないのだ。
――この無理難題に、【守人 】である彼らは内心頭を抱えていた。
避けきれない黒い靄は手に持つ刀で振り払い、彼女からあまり引き離されないよう立ち回りながら隙をついて攻撃を仕掛けていくだけで今は手一杯である。
***
彼女の意志に同調する黒い靄も、その動きを鈍らせたと同時に
四散した黒い靄を目にして我に返ったのか、彼女は憎々しげに
「…あんた、医者のくせにちょっと酷くない?」
「酷くないですよ、私は…むしろ優しい方だと自負していますが?」
やわらかな笑みを浮かべた
その言葉に舌打ちした彼女は両腕を広げ、再び黒い靄を作りだす。
両腕を落としたのは無駄な動きを止める為と、【迷いの想い出】本体に戻らせない為である。
彼女の動きが一瞬鈍った
――少しでも時間を稼がなければ、救出に失敗するかもしれない。
両腕を失った赤髪の娘であったが悲鳴をあげず、何事もなかったように落とされた腕を黒い靄で拾い上げると傷口を合わせて治した。
そして、さらに黒い靄を作ると自身を中心に渦巻かせた…まるで、自身を護る盾とするように。
おそらく、彼女の意志で黒い靄は無尽蔵に作れるのだろう…その代償が何であるのかを知らずに――
【迷いの想い出】という
赤髪の娘は盾となる黒い靄とは別に、もう何本か鋭く尖った黒い靄を作りだした。
それを
向かいくる黒い靄の明確な殺意に、彼らは諦めたようなため息を同時についた。
「これは…説得など、到底無理そうですね」
「もとよりわかっていた事だ、これ以上生命力を消耗される前に抑えよう…」
黒い靄の攻撃を器用に避けながら、
2人は【迷いの想い出】の『要』である彼女の意識を自分達に向けさせたまま、あまり消耗させず…その上、器となっている
――この無理難題に、【
避けきれない黒い靄は手に持つ刀で振り払い、彼女からあまり引き離されないよう立ち回りながら隙をついて攻撃を仕掛けていくだけで今は手一杯である。
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