7話:記憶の海風

とりあえず気を取り直して、これからどうするかを考える。
私の持つナイフだけでは、戦えないと思う――というより、まず私は戦い方を知らない。
おそらくだけど、さっきみたいに自分の身を守るだけで手一杯だ。
だとしたら…ここで戦力になるのって八守やかみさんだけ、という事になるわけだよね?
足手まといでしかない私がいる状況の中、任せっきりというのはいかがなものかと思う。
――でも、それならどうしたらいいのかしら……?

八守やかみ…いい加減、離しなさい」

少し苦しそうな天宮あまみや様が、八守やかみさんの腕を軽く叩いた。
だけど、八守やかみさんは脇に抱える形から抱き上げる形に変えて離そうとしない。
あぁ…危機が去るまで守る為に離したくないんだろうな~という考えが一瞬頭に過ったけど、余計な事は言わないでおこう。

諦めたようにため息をついた天宮あまみや様は、顔を八守やかみさんの方から水城みずきさんの身体を使う彼女存在へ向ける。

水城みずき本人も知らなかったその力、よく気がつきましたね?主立おもだった【祭司の一族】の者達はもちろん、十紀とき神代かじろ達も隠していたと思うのですが…」

十紀とき先生や神代かじろさん達が隠していたらしい、水城みずきさんの…共鳴する力――そういえば、具体的に一体どんな力なのだろう?
目が覚めて、数日間だけではあるけど…そんな力を持っているなんて、私はまったく気がつかなかった。

そもそも、本人も自覚していない力だというのに…水城みずきさんの中にいる彼女は、どうやって気がついたのかしら?
大体…あの集落から外に出る事を許されていなかった彼女が、どうして水城みずきさんの存在を知る事ができたのかわからない。
――あれ?何で、彼女は外に出てはいけなかったんだっけ?

新たに浮かんだ疑問に内心首をかしげていると、何故か天宮あまみや様と八守やかみさんが同時にため息をついた。

「おそらく、小さくできたほころびから戻りはじめているんだと思いますよ…桜矢おうやの不手際です」
「…何処か抜けている桜矢おうやらしい、と感心半分呆れ半分の気分です――だから、悠河はるかに多少無理をしてでも絶対に傍を離れるなと言ったんだ…」

呆れているお二人の会話に耳を傾けながら、一体何がほころんでいるのだろうかと気になった。
とりあえず、桜矢おうやさんと悠河はるかさんという人が何か不手際をしたみたい…それが、どのような意味を指しているのかまではわからなかったけど。

そんな私達の様子を余所に、面白そうに笑い声をたてた彼女は口を開いた。

「ふふふ、酷い人達…あの方は素晴らしい方よ。えーっと、私が気づいた理由だったかしら…?そんなの簡単よ――だって、水城この子…昔、迷子になった事あったでしょ?実湖こちらの方に連絡があったもの」

――その時、大人達がこそこそ話していたのよ…もしかすると、『あの力』に気づいた何者かが攫った可能性もあるって。


確か…水城みずきさんは幼い頃、よく迷子になっていたという話を数日前に聞いた。
迷ってしまった水城みずきさんを、集落の大人達がいつも探し回って大変だったと――

大人彼ら達も、まさか聞かれているとは思わなかったのかもしれない…だから、口が軽くなっていたんだろう。
……例え聞かれていたとしても、何も知らない子供ならば誤魔化せると考えていたのかもしれないけど。
水城みずきさんの力に、立ち聞きした子供彼女が興味を持つ可能性など考えつかなかったのだろう……

自力でさぐったのか、誰かに訊ねたのか…方法それはわからないけど、彼女は知ってしまった――水城みずきさんの持っている力に。
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