6話:狂気の石碑
結局、侵入者である彼らは襲ってこなかったので無事に医院の外へ出れた。
外は明るいんだけど、霧がすごくて視界はゼロ…おそらくだけど、地元の人でも少し迷っちゃうんじゃないかしら。
…と思ったけど、そういえば迷わず来れていたよね――鳴戸 さん達は。
「…少し行った所に八守 がいます。少し辛い光景を目にするかもしれませんが、覚悟はしてくださいね」
顔色を悪くさせた天宮 様が、ある方向…多分、八守 さんがいる場所を指差した。
辛い光景…というのが何を指すのか、初めはわからなかったけど――すぐ思いだして気づく。
天宮 様が説明してくれた化身の存在と、彼らの倒し方についてを。
怖くないと言えば嘘になる…むしろ、恐怖しかない。
だけど、ここで逃げたらお世話になった人達に恩を仇で返すようだし。
「だ、大丈夫です…行けます。それより、天宮 様は大丈夫ですか?」
「八守 と合流できれば、この力の暴走は抑えられますから…時間はあまりありませんので、行きましょう」
小さく咳をした天宮 様に促されながら、私達は霧深い道を歩いていく。
……もちろん、私が天宮 様の杖代わりとなって危なくないよう気をつけながら。
途中、八守 さんのコートを脱いで天宮 様に…と考えていたら、首を横にふった天宮 様に止められてしまった。
『霧』の目を欺いておかないといけないから、と言って――
しばらく行くと、微かに悲鳴のような女の子の声が聞こえてきた。
それとほぼ同時に、何かが倒れるような音も……
驚いて立ち止まった私を余所に、天宮 様は一歩前に出ると口を開いた。
「医院では、酷い目に合いましてね…貴方達がせっかく用意してくれた私の放り込み 先は駄目にされましたよ、八守 ?」
「…配慮が足りず申し訳ありません。壊した者達には、後日地獄を見せましょう」
視界が悪くてそこに誰がいるのか、最初わからなかったけど…天宮 様の言葉に答える声がして、そこで八守 さんがいるのだと気づけた。
天宮 様がさらに前へ歩みを進めるので、私も少し遅れてついて歩く……
「っ!?」
八守 さんの姿を見つけたと同時に、何が倒れているのか理解できた 。
血だまりに倒れている、禍々しい雰囲気の女の子――確か、理哉 さんの友達だったと思う。
彼女の首は、身体から少し離れた所に落ちていて……
あまりの残酷な光景に、私は自分の口元に手をあてて戻しそうになるのを必死に耐える。
「…辛いのなら、後ろを向いていなさい。八守 、この者を解放してあげましょう…」
私に声をかけた天宮 様は、真っ直ぐ八守 さんのそばまで行くと怪我をしている方の手を差しだした。
一瞬、八守 さんの眉間に皺がよったけど…多分、怪我している理由が気になったんだと思う。
恭しげに天宮 様の手に触れた八守 さんは、巻かれているハンカチを外すと申し訳なさそうに声をかけた。
「我が主・天宮 様…その玉体に、またひとつ傷つける事をお許しください」
それに小さく頷いて答えた天宮 様の手のひらに、八守 さんは持っていた刀の刃部分をゆっくりと当てる。
どうするつもりなのかわからず、様子を見ていると天宮 様がその刃部分をゆっくりと握り込んだ。
天宮 様の手のひらの…新たに作られた傷口から出血したのを確認した八守 さんは、倒れている女の子にかかるように天宮 様の腕を引いた。
すると女の子の頭と身体、それぞれかかった天宮 様の血から現れた蒼い炎のようなものに包まれる。
その蒼い炎は私の腰辺りまで高く昇ると、彼女の周囲にある黒い靄のようなものを浄化していく。
…しばらくすると、その蒼い炎は消えてしまった。
まるで、天に何かが昇っていくような雰囲気だったな…と、先ほどの光景を見て私は思えた。
蒼い炎が消えた後だというのに女の子の身体は焼け焦げておらず、その場に横たわっていた。
……頭は斬り落とされたままだけど。
「ぇ、あの…い、今のは?」
「〈古代種〉の血は浄化の力を持っています。この者をあのままにしていれば、この世界が蝕まれてしまうので――」
握っていた刀の刃部分から手を離した天宮 様が、私の疑問に答えてくれた。
八守 さんは自分のポケットからハンカチのような布 をだすと、天宮 様の手のひらにできた傷口をおさえるように巻いていく。
私のハンカチは、どうやら天宮 様が持っているようで…それを神衣 のポケットに入れていた。
――世界が蝕まれる…とは、どういう意味なのだろう?
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外は明るいんだけど、霧がすごくて視界はゼロ…おそらくだけど、地元の人でも少し迷っちゃうんじゃないかしら。
…と思ったけど、そういえば迷わず来れていたよね――
「…少し行った所に
顔色を悪くさせた
辛い光景…というのが何を指すのか、初めはわからなかったけど――すぐ思いだして気づく。
怖くないと言えば嘘になる…むしろ、恐怖しかない。
だけど、ここで逃げたらお世話になった人達に恩を仇で返すようだし。
「だ、大丈夫です…行けます。それより、
「
小さく咳をした
……もちろん、私が
途中、
『霧』の目を欺いておかないといけないから、と言って――
しばらく行くと、微かに悲鳴のような女の子の声が聞こえてきた。
それとほぼ同時に、何かが倒れるような音も……
驚いて立ち止まった私を余所に、
「医院では、酷い目に合いましてね…貴方達がせっかく用意してくれた
「…配慮が足りず申し訳ありません。壊した者達には、後日地獄を見せましょう」
視界が悪くてそこに誰がいるのか、最初わからなかったけど…
「っ!?」
血だまりに倒れている、禍々しい雰囲気の女の子――確か、
彼女の首は、身体から少し離れた所に落ちていて……
あまりの残酷な光景に、私は自分の口元に手をあてて戻しそうになるのを必死に耐える。
「…辛いのなら、後ろを向いていなさい。
私に声をかけた
一瞬、
恭しげに
「我が主・
それに小さく頷いて答えた
どうするつもりなのかわからず、様子を見ていると
すると女の子の頭と身体、それぞれかかった
その蒼い炎は私の腰辺りまで高く昇ると、彼女の周囲にある黒い靄のようなものを浄化していく。
…しばらくすると、その蒼い炎は消えてしまった。
まるで、天に何かが昇っていくような雰囲気だったな…と、先ほどの光景を見て私は思えた。
蒼い炎が消えた後だというのに女の子の身体は焼け焦げておらず、その場に横たわっていた。
……頭は斬り落とされたままだけど。
「ぇ、あの…い、今のは?」
「〈古代種〉の血は浄化の力を持っています。この者をあのままにしていれば、この世界が蝕まれてしまうので――」
握っていた刀の刃部分から手を離した
私のハンカチは、どうやら
――世界が蝕まれる…とは、どういう意味なのだろう?
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