3話:聖女の破片
里長の屋敷の、長い縁側――そこを行ったり来たりしている桃色がかった茶髪の少女の姿があった。
イライラとした様子の少女は、ポシェットを大事そうに抱きかかえる。
「あー…もう、何で邪魔ばかり入るのよっ!」
彼女は立ち止まると、地団駄を踏みながら呟いている。
すれ違う使用人達はというと、皆びっくりしたように少女を見ては足早に去っていく……
「絶対に…許さない!どうやれば、あの女を殺せるのよっ!!」
そんな使用人達の様子は無視すると、さらに苛立ちげに少女は言った。
そして、ポシェットの中のものを確認していると後ろから声がかかる。
「あらあら、恐ろしい事を…それは、そんな危ないものを入れるものじゃなくてよ?」
「希琉 ……さん?」
少女は慌ててポシェットを抱きかかえて振り返ると、そこにはゆったりとウェーブした青い髪の女性・希琉 が立っていた。
希琉 を睨みながら、少女は言葉を続ける。
「あたしに、何かご用ですか?」
「あら…他人行儀ね、理哉 。わたくしは、貴女の義叔母 ですのよ?」
口に手をあてながら小さく笑うと、希琉 は続ける。
「大体、あの人 を殺して自己満足な復讐を遂げたとしますわ…それで、貴女は立派なこの国の王家の花嫁になれますの?」
「あたしはならない、勝手に決めないで!姉様が死んだからって…ううん、姉様の時だって勝手に――あたし達姉妹は、道具じゃないのよ!」
少女・理哉 は、周りの目も気にせず怒鳴りつけた。
希琉 は冷めた目で、息を切らす理哉 を見ているだけだ。
「まぁ、はしたない。何度もわたくしは、貴女に教えて差し上げているというのに……」
「このくらいの年齢なのですから…大目に見て差し上げなさい、希琉 。そして、危ない考えはやめなさい…罪人になっては、亡きご両親や姉君に合わせる顔がなくなりますよ?理哉 」
理哉 と希琉 の言い争いを止めたのは、傍を通る使用人達ではなかった。
仲裁しに現れたのは、青い杖をつく真っ白な印象のある青年だ。
青年の両瞼は閉ざされており、ゆっくりとした歩みだが杖で確認しながら2人の元にやって来た。
「そのような大きな声で争って…玄関の外まで聞こえてきましたよ?」
「……天宮 様」
異口同音で青年の名前を呼んだ2人の表情は、緊張と畏怖の入り混じっていた。
そんな2人の様子に、白い青年・天宮 は微笑みながら肩をすくめる。
「そんなに固くならなくても良いのですよ、私は説教しに来ているわけではないのですからな」
「……すみません、あたしは用がありますから」
理哉 は天宮 から目を逸らして、その場から去ろうとする。
すれ違う理哉 に向けて、天宮 は思い出したように声をかけた。
「そうですか。あぁ、そうそう…兄上が、貴女によろしく言っておりましたよ?」
「失礼します…」
振り返らずに言った理哉 は、そのまま玄関先へ向かった。
彼女の、その後ろ姿を見送りながら天宮 は苦笑して呟く。
「おや…私達は、嫌われてるんですかね?」
「申し訳ありません、天宮 様。あの子は、ちょっと変わってまして…」
申し訳ないといった様子で、希琉 が頭を下げると天宮 は首を横にふった。
「いえ…このような事態になるまで、私が来れなかったのがいけなかったわけですから。ところで、里長殿はどちらに?」
「ぁ、はい…お養父 様ですか?この時間は、十紀 先生のところですわ」
壁にかけられた時計を確認した希琉 は、首をかしげながら答える。
「お待ちになられますか?それとも、ご案内しましょうか?」
「そうですか…いえ、お心遣い感謝します。でも、大丈夫ですよ」
天宮 は優しく微笑みながら希琉 に礼を伝えると、玄関先へ向かった。
「お気をつけて」
そう声をかけると、希琉 は深く頭を下げて天宮 を見送った。
***
「何なのよ…天宮 様が、どうして…神代 様だけでは、どうする事も出来ないっていうの?」
屋敷から飛び出した理哉 は、ひとり言を呟きながら歩いていた。
――あの日から、この集落は変わってしまった。
この集落の人々の中にも、大切な家族を失った人がいる……
本来ならば、こんな悲しい事態にはならないはずだった。
(あの女だけが生き残るなんて…絶対に、何かやったのよ!)
ふと立ち止まると、俯きながら肩からさげているポシェットを握り締める。
「…どうかしたんですか?」
突然、前から声をかけられた。
顔を上げた理哉 はその人物を見て、驚きと憎しみを入り混ぜた表情を浮かべた。
***
イライラとした様子の少女は、ポシェットを大事そうに抱きかかえる。
「あー…もう、何で邪魔ばかり入るのよっ!」
彼女は立ち止まると、地団駄を踏みながら呟いている。
すれ違う使用人達はというと、皆びっくりしたように少女を見ては足早に去っていく……
「絶対に…許さない!どうやれば、あの女を殺せるのよっ!!」
そんな使用人達の様子は無視すると、さらに苛立ちげに少女は言った。
そして、ポシェットの中のものを確認していると後ろから声がかかる。
「あらあら、恐ろしい事を…それは、そんな危ないものを入れるものじゃなくてよ?」
「
少女は慌ててポシェットを抱きかかえて振り返ると、そこにはゆったりとウェーブした青い髪の女性・
「あたしに、何かご用ですか?」
「あら…他人行儀ね、
口に手をあてながら小さく笑うと、
「大体、
「あたしはならない、勝手に決めないで!姉様が死んだからって…ううん、姉様の時だって勝手に――あたし達姉妹は、道具じゃないのよ!」
少女・
「まぁ、はしたない。何度もわたくしは、貴女に教えて差し上げているというのに……」
「このくらいの年齢なのですから…大目に見て差し上げなさい、
仲裁しに現れたのは、青い杖をつく真っ白な印象のある青年だ。
青年の両瞼は閉ざされており、ゆっくりとした歩みだが杖で確認しながら2人の元にやって来た。
「そのような大きな声で争って…玄関の外まで聞こえてきましたよ?」
「……
異口同音で青年の名前を呼んだ2人の表情は、緊張と畏怖の入り混じっていた。
そんな2人の様子に、白い青年・
「そんなに固くならなくても良いのですよ、私は説教しに来ているわけではないのですからな」
「……すみません、あたしは用がありますから」
すれ違う
「そうですか。あぁ、そうそう…兄上が、貴女によろしく言っておりましたよ?」
「失礼します…」
振り返らずに言った
彼女の、その後ろ姿を見送りながら
「おや…私達は、嫌われてるんですかね?」
「申し訳ありません、
申し訳ないといった様子で、
「いえ…このような事態になるまで、私が来れなかったのがいけなかったわけですから。ところで、里長殿はどちらに?」
「ぁ、はい…お
壁にかけられた時計を確認した
「お待ちになられますか?それとも、ご案内しましょうか?」
「そうですか…いえ、お心遣い感謝します。でも、大丈夫ですよ」
「お気をつけて」
そう声をかけると、
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「何なのよ…
屋敷から飛び出した
――あの日から、この集落は変わってしまった。
この集落の人々の中にも、大切な家族を失った人がいる……
本来ならば、こんな悲しい事態にはならないはずだった。
(あの女だけが生き残るなんて…絶対に、何かやったのよ!)
ふと立ち止まると、俯きながら肩からさげているポシェットを握り締める。
「…どうかしたんですか?」
突然、前から声をかけられた。
顔を上げた
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