0話:惨劇の祭り

道が悪いせいで何度か躓き転びそうになりながら私は桜矢おうやさん、悠河はるかさんと共に千森ちもりへ向かって走る。
全力で走っているのに、あの嫌な気配が全然消えない…むしろ、私達を追い抜いているかもしれない。

なんとか千森ちもりに辿り着いたけど、そこは阿鼻叫喚の祭りと化していた。

「何故…外の人間が、まだ残っているんだ?」

悠河はるかさんの、思わず零れでた言葉に私達は驚いた。
本来なら夜には追い出されるはずの集落外の人達が、未だ残って祭りを楽しもうとしていたみたい…だけど、狂気に染まった霧の影響を受けたひとりの青年が人々を襲っている。
この青年が外の人間なのか集落の人間なのかわからないけど、今この地に集落千森の住民より人が多いのはわかる。

――そして、その結果が今起きている惨劇なのだろう。

「早く知らせを出さなければ…真那まなちゃん、こっちだ!」

私の手を引いた桜矢おうやさんは殺戮がおこなわれている千森ちもり内を走り抜け、何処かへ向かっている。
途中襲われそうになったけど悠河はるかさんが対応してくれたおかげで無傷のまま、とある屋敷に辿り着いた。

神代かじろ!」

桜矢おうやさんは玄関を開けるなりに、屋敷の主の名を叫んだ。
あれ…神代かじろさんって、確か千森ちもりの司祭様だったよね。

そう思っていると、奥から神代かじろさんが姿を現した――とても疲弊している様子だけど大丈夫かしら。

桜矢おうや…どうしたんですか?そもそも、これは一体?」
「あちらで問題が起こった。知らせを…あと、真那まなちゃんを逃がす為に力を貸してほしい」

息を切らせたままの桜矢おうやさんが、私だけを逃がしてくれるように頼み込む。
驚きのあまり何も言えない私を余所に、彼らは話をどんどん進めていく。

「…わかりました。こちら側の暴走は僕と十紀ときで対処します。ですから、我らが王への連絡は任せますよ」
「あぁ。君達兄弟・・に任せてしまうのは心苦しいけど…向こうの暴走は僕が責任を持って対処するから許してほしい」

混乱する私に向き合った桜矢おうやさんは、申し訳なさそうに言う。

「ごめん、真那まなちゃん…君を守るにはこれしかないんだ、輝琉実ひかるみに避難していてほしい。あそこの教会なら安全だから、すべてが終わるまで待っていて」
「そんな、私…」

突然の話に困惑していると、後ろから声をかけられた。

「ここを脱出するなら早くした方がいい。あれら・・・の統率がとれはじめているようだからな」

振り向くと、千森ちもりのお医者様――確か、十紀とき先生が立っていた。
先生曰く、殺戮を繰り返す人々や生き残った人々はまるで何かを探しているような様子らしい。

急がなければ、そう言った桜矢おうやさんにまた手を引かれ輝琉実ひかるみへ続く道へと向かう。
後ろから悠河はるかさんや十紀とき先生、神代かじろさんがついてきている…のだけど、更に後ろには千森ちもりの人々が追ってきている気配を感じた。
つまり、彼らが探しているのは――私?

「私達がここで足止めをする、桜矢おうや達は先に行け!」

立ち止まり叫んだのは十紀とき先生だった。
その隣には神代かじろさんもいるけど、ふたりで千森ちもりの人々を足止めするつもりなの?
そんな危険な…だけど、桜矢おうやさんと悠河はるかさんの走る足は止まらない。

一心に走り、そして千森ちもりの入口までたどり着いたけど――そこには、もう私を探す人々が封鎖をしていて脱出は不可能だった。
死角がないから逃げ切るのは無理かもしれない……

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