0話:惨劇の祭り

「わからないふりなんていいわよ。あんな奴の事より、あんた…桜矢おうやさんを何処に隠したの?」

いや、桜矢おうやさんは物じゃないんだから…私が隠したとか、どうして彼女がそんな事を言うのか本当にわからなかった。
わからないけど、多分彼女の中では私が隠した事になっているんだろうね。

多分まだお客様がおられるだろうから本当の事を教えて邪魔しちゃいけないし、そもそも叔父さんの部屋から移動しているかもしれない。
そうなると、私には彼が何処にいるのかわからないんだけどな。

「…知らない。帰ってきてから彼にまだ会ってない・・・・・・・・・・・・・・・・もの」

嘘をついた――熾杜しずも疑いの眼差しをこちらに向けてくるけど、私はこの嘘をつきとおした。
今はもう休んでいるかもしれない叔父さんに、これ以上迷惑をかけられないもの。

しばらく無言で向かい合っていたけど、私がこれ以上何も答えないと悟った彼女はわざとらしく鼻を鳴らした。

「まぁいいわ、あんたに訊いてもわかるわけないものね。何にも知らないお馬鹿さんなんだもの。あんた達と関わっているの、本当に時間の無駄!それに儀式さえ終われば、私には時間がたっぷりあるもの」

とんでもなく失礼な物言いをした熾杜しずは、まるで足音を響かせるような強い歩みで屋敷の中へ去っていった。
話をした時間は短かったけど、なんだかとても疲れたな……

それよりも熾杜しずは変な事を言っていたな、儀式を終えれば時間がたっぷりある?
意味がわからない――だって明日の儀式を終えたら、あの子は死ぬんだよ?

何とも言えないモヤモヤを抱えたままの私は、自室へ戻る前に父の部屋へ向かった。
来客の事を父に伝えていなかったのを思い出したというのもあるけど、熾杜しずが変な事を言っていた件も伝えた方がいいと考えたから。

父の部屋に着いて扉をノックをすると中から返事が聞こえたので扉を開けると、デスクに向かって書類仕事をしている父の姿があった。
こちらを見た父は手を止め、微笑みながら声をかけてくれる。

「どうしたんだい?」
「お父さん、実は――」

私は千森ちもりからの来客の件と、熾杜しずが言っていた「儀式さえ終われば、私には時間がたっぷりある」という言葉を伝えた。
もしかすると、千森ちもりからの来客については知っていた可能性もあるけど……

予想通り父は来客を知っていた――というか、桜矢おうやさん達と一緒にここを訪れていたみたい。
もしかして、桜矢おうやさんと悠河はるかさんは千森ちもりに寄ってから実湖みこに帰ってきたのかな?

来客の件よりも、父が引っかかったのは熾杜しずの言葉だったらしい。

「……熾杜しずが、そう言っていたのかい?」

頭を抱え呟いた父の言葉に、私は深く頷いて答えた。
多分、最後の最後に起こった問題に頭が痛くなってしまったんだろうな。

「わかった。一族に周知して警戒しておくけど、真那まなもあの子には気をつけてね。ひとりで会う時は特に…」
「はい、わかりました」

確かに何か嫌な雰囲気のある呟きだったから、父達が警戒するのはわかる気がした。
父に注意されたけど、儀式がおこなわれる前にあの子と話をしておきたかった…さっき玄関先で話した、あの会話が最後というのはいけないとも思う。

何か釈然としない気持ちのまま、父の部屋を出た私はこのまま自室に戻る気にもなれず……
考え事をしていて意識していなかったのだけど、気がつくと桜矢おうやさんの部屋の前に着いた。
――どうしよう、無意識に彼に助けを求めてしまったみたい。

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