0話:惨劇の祭り
だけど順番的に言えば千森 から贄を選ぶはずだったのに、突然向こうから「贄は生まれなかったので今回は飛ばしてほしい」と一方的に通達してきた。
そのせいで祖父の怒りが再燃したのだ、と叔父さんは遠い目をしながら呟く。
前回贄となったのは、実湖 の――私の父のすぐ下、柳世 叔父さんの上にいた兄弟。
そして、次の贄を選ぶ儀式で選ばれたのが僅か二歳だったあの子 。
祖父は「有葵 の業 のせいだ」と怒っていたそうだけど、私にはその記憶がまったくなかったので少し驚いた。
そもそも祖父は私の前では少なくとも怒った事はなかった、というより関わり合いがあまりなかったからよく知らないと言った方がいいのかもしれない。
体調不良を理由に、父に代替わりして屋敷の離れに籠りがちでめったに会えなかったし。
そういえば、確か亡くなったのは私が五歳の時だった気がする…あの日は柳世 叔父さんが手に入れたチケットで、両親と一緒に輝琉実 にある遊園地へ行ったっけ。
夕方家に帰るなり、祖父の容態が急変して亡くなったと聞かされたような…そんな記憶がある。
柳世 叔父さんも同じように思い出していたのか、小さく舌打ちした後ため息をついた。
「まぁ…とにかく折を見て言ってみろ、そのかわいらしいわがまま を」
そう言って、私の頭を優しくポンポンとたたいた。
学校に行きたい、というわがままを叶えてもらっている今――本当に言って大丈夫なのか、と少しだけ思ったけど私は叔父さんの言葉に頷いて答える。
「う、ん…善処してみる」
「とりあえず、そろそろ出発するか」
そう言った叔父さんは私の荷物を持つと、自分の愛車である白い車に向かう。
私が膝の上で落ち着いている猫を地面に降ろすと、名残惜しそうに「にゃ~ん」と鳴いている…この猫 、本当に人懐っこくてかわいい。
叔父さんがトランクに荷物を入れた後、後部座席の扉を開けてくれたので乗り込んだ。
そして窓を開けて、お茶を淹れてくれた神官様と猫にお礼を言っている間に叔父さんは運転席に乗った。
みんなに別れの挨拶をして、車は出発した――車が見えなくなるまで神官様の知人さんが大きく手を振っていて、なんだかとても嬉しかったのを今でも覚えている。
「おーい、気をつけてなー!」
そう言って白い車が見えなくなるまで、大きく手を振っている神官の知人は大きな声で叫んでいた。
あの道を通った事がある ので思わずそう叫んでしまったのだろう、が彼らは日常的に通っているので危険な個所など熟知しているだろう。
そもそも知人は目立たないよう隠れている予定だったのに、教会所有の車を勝手に動かしてクラクションを鳴らさなければならない事態になるとは思っていなかった神官は深くため息をついた。
まさか、あそこで高位の存在 が姿を現すとは『影の者』である自分達でさえ本当に予想していなかったのだ。
車が見えなくなってから腕を下げた知人は苦笑しながら、傍に立つ神官に囁きかける。
「…俺、今回は不可抗力だったけど頑張った方だよな?」
「まぁ、六実 も事情をわかっているはずなので問題ないと思いますよ。あの説教も、かなり優しい方だったし…」
神官から見ても修道女 である六実 の説教はかなり優しく感じたので、すべての事情を察して演技 で説教をしているのだと気づいた。
もし本気で怒っていたら、おそらく彼は車から引きずり降ろされ個室に連れていかれてから説教になっていただろう……
その話を聞いた知人は頬を引きつらせ、どん引いている様子なので本当に今までのほほんと生きてきたのだろうなと神官は思った。
自分は怒られた事がまったくないけど、六実 の幼馴染 が定期的に怒られているのを見かけているのでよく知っているのだ。
また報告する事が増えたので、自分達はまだ教会 を離れられないだろう。
***
そのせいで祖父の怒りが再燃したのだ、と叔父さんは遠い目をしながら呟く。
前回贄となったのは、
そして、次の贄を選ぶ儀式で選ばれたのが僅か二歳だった
祖父は「
そもそも祖父は私の前では少なくとも怒った事はなかった、というより関わり合いがあまりなかったからよく知らないと言った方がいいのかもしれない。
体調不良を理由に、父に代替わりして屋敷の離れに籠りがちでめったに会えなかったし。
そういえば、確か亡くなったのは私が五歳の時だった気がする…あの日は
夕方家に帰るなり、祖父の容態が急変して亡くなったと聞かされたような…そんな記憶がある。
「まぁ…とにかく折を見て言ってみろ、そのかわいらしい
そう言って、私の頭を優しくポンポンとたたいた。
学校に行きたい、というわがままを叶えてもらっている今――本当に言って大丈夫なのか、と少しだけ思ったけど私は叔父さんの言葉に頷いて答える。
「う、ん…善処してみる」
「とりあえず、そろそろ出発するか」
そう言った叔父さんは私の荷物を持つと、自分の愛車である白い車に向かう。
私が膝の上で落ち着いている猫を地面に降ろすと、名残惜しそうに「にゃ~ん」と鳴いている…この
叔父さんがトランクに荷物を入れた後、後部座席の扉を開けてくれたので乗り込んだ。
そして窓を開けて、お茶を淹れてくれた神官様と猫にお礼を言っている間に叔父さんは運転席に乗った。
みんなに別れの挨拶をして、車は出発した――車が見えなくなるまで神官様の知人さんが大きく手を振っていて、なんだかとても嬉しかったのを今でも覚えている。
「おーい、気をつけてなー!」
そう言って白い車が見えなくなるまで、大きく手を振っている神官の知人は大きな声で叫んでいた。
そもそも知人は目立たないよう隠れている予定だったのに、教会所有の車を勝手に動かしてクラクションを鳴らさなければならない事態になるとは思っていなかった神官は深くため息をついた。
まさか、あそこで
車が見えなくなってから腕を下げた知人は苦笑しながら、傍に立つ神官に囁きかける。
「…俺、今回は不可抗力だったけど頑張った方だよな?」
「まぁ、
神官から見ても
もし本気で怒っていたら、おそらく彼は車から引きずり降ろされ個室に連れていかれてから説教になっていただろう……
その話を聞いた知人は頬を引きつらせ、どん引いている様子なので本当に今までのほほんと生きてきたのだろうなと神官は思った。
自分は怒られた事がまったくないけど、
また報告する事が増えたので、自分達はまだ
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