0話:惨劇の祭り
神官様に案内されるがままベンチに座り、荷物を傍らに置いてひと息つく。
――あ。時間があったのならもう少しだけ、あの神職者様のお話を聞けたかも。
ほんの少しだけ残念に思った、けど…そういえば、あの方はどの地位に就いておられる方なのかな?
事務室でお茶を淹れて運んできた神官様に、気になって訊ねてみた。
だけど、神官様は不思議そうな表情のまま首をかしげ答える。
「白銀の髪をした、長衣の神職者…ですか?そのような方は、この教会に今は いないですね」
「そうですか…すみません、ありがとうございます」
神官様にお礼を言って考える――この教会の方じゃない、という事は何処か別の教会か神殿所属なのかもしれない。
いつかまた会えたら、その時はお話の続きを聞かせてもらえるといいな。
気を取り直して、神官様から頂いたお茶をひと口飲んだ。
とても香りの良い緑茶で、気分も落ち着く感じがした。
せっかくなので、ゆっくりと流れる時間の中でお茶を飲みながら教会周辺の様子を観察する。
静かな優しい風が木々の葉を揺らし、近くの噴水から水の音が流れる聞こえ…これが癒しだ、という自然の音でヒーリング効果抜群だと思う。
先ほど修道女 に説教されていた車の運転手は、頭を抱えたまま神官様に慰められていた。
「説教、むっちゃ怖い…」
「慣れない事をするから。だから、やり過ぎないようにと言ったでしょう?」
もしかしたら、彼は叱られ慣れていないのかもしれない……
次に、教会や事務室のある建物に目を向けた。
白基調の、本当に汚れひとつない建物で…これが旧暦時代から存在しているように見えなかった。
確か旧暦時代の終期には建物だけ無事に残った、と授業で習ったっけ。
…あ、だからあのステンドグラスが旧暦時代よりも前に造られた話に繋がるんだね。
建物だけ無事だったこの教会に、何処かで大切に保存されていたステンドグラスが寄贈されて現在に至るのかな。
うーん、授業だけではわからない事がたくさんあるみたい。
少しして噴水の近くを、黒毛と白毛が縦に半分の猫が尻尾をゆらゆらさせながらまったりと歩いていた。
今まで気づかなかっただけで、この教会に住んでいる猫 なのかもしれない。
あ、立ち止まって背伸びしてる…かわいい!
ずっと猫の様子を見ていたからか、白黒猫ちゃんが私の所にやって来た。
そして、あっという間に私の膝に乗って安心したのかうとうととしはじめている。
――うん、かわいい!撫でてみようかな。
優しく撫でてあげると、白黒猫ちゃんはゴロゴロ鳴らしながら気持ち良さげに伸びた。
卒業したら私も猫を飼いたいな~、とそんな事を考えてしまったけど父は許してくれるかな?
周辺の様子を観察していたら、時間があっという間に過ぎてしまったみたい。
気がつくと、迎えの白い車が事務室のある建物前に止まる。
車から降りてきた運転手は帰省の時いつも迎えに来てくれる叔父さんで、私がベンチに座っているのに気づいてやって来た。
叔父さんは父の年の離れた――十歳下の弟で、名前は柳世 さん。
ひとりっ子の私から見てお兄さんのような人で、あの子のわがままに困らされているといつも私の味方をしてくれる父の次に頼れる存在だ。
お迎えの車の件も、父と相談して柳世 叔父さんにお願いした。
他の人だとなんだか安心できないし、あの子に関してのお小言を貰う可能性もあったから……
「ははは、すっかり猫に好かれてるじゃないか!」
おかしそうに笑う柳世 叔父さんに、私もつられて笑う。
「うん、すごくかわいい。いつか飼いたいくらいです」
「いいんじゃないか?今までわがままらしい事を言わなかったお前が兄さんに言ってみろ、大喜びするぞ~」
物心つく前はわがままっぽい事を言っていたらしいけど、あの子にすべて奪われていく内にいつの間にか言わなくなった私を父と柳世 叔父さんは気になっていたのだという。
あの子の父親である有葵 伯父さんが、本当に申し訳ないと父に何度も謝っていたのだと柳世 叔父さんが言葉を続ける。
「…でも明日であの子 が死んでしまうと考えたら、私なんかがわがままを言って大丈夫なのかな?と考えちゃうんだ」
「気持ちはわかるがな、あいつとお前は違う存在だ。有葵 兄さんの昔の件がなくても、おそらく運命は変わらなかった可能性の方が高い…ただ理由付けが欲しかっただけなんだよ、親父達 は」
今は亡き、先代の長であった祖父やその重鎮達の一部は有葵 伯父さんを随分責めていたらしい。
元々、次代の長と決められていたのは伯父さんだったし…私のお父さんが王都で仕事に就く予定で、柳世 叔父さんの子が次代の贄となるはずだったのにすべての予定が崩れたと私達子世代に聞かせられない事も他に言っていたようだ。
――あ。時間があったのならもう少しだけ、あの神職者様のお話を聞けたかも。
ほんの少しだけ残念に思った、けど…そういえば、あの方はどの地位に就いておられる方なのかな?
事務室でお茶を淹れて運んできた神官様に、気になって訊ねてみた。
だけど、神官様は不思議そうな表情のまま首をかしげ答える。
「白銀の髪をした、長衣の神職者…ですか?そのような方は、この教会に
「そうですか…すみません、ありがとうございます」
神官様にお礼を言って考える――この教会の方じゃない、という事は何処か別の教会か神殿所属なのかもしれない。
いつかまた会えたら、その時はお話の続きを聞かせてもらえるといいな。
気を取り直して、神官様から頂いたお茶をひと口飲んだ。
とても香りの良い緑茶で、気分も落ち着く感じがした。
せっかくなので、ゆっくりと流れる時間の中でお茶を飲みながら教会周辺の様子を観察する。
静かな優しい風が木々の葉を揺らし、近くの噴水から水の音が流れる聞こえ…これが癒しだ、という自然の音でヒーリング効果抜群だと思う。
先ほど
「説教、むっちゃ怖い…」
「慣れない事をするから。だから、やり過ぎないようにと言ったでしょう?」
もしかしたら、彼は叱られ慣れていないのかもしれない……
次に、教会や事務室のある建物に目を向けた。
白基調の、本当に汚れひとつない建物で…これが旧暦時代から存在しているように見えなかった。
確か旧暦時代の終期には建物だけ無事に残った、と授業で習ったっけ。
…あ、だからあのステンドグラスが旧暦時代よりも前に造られた話に繋がるんだね。
建物だけ無事だったこの教会に、何処かで大切に保存されていたステンドグラスが寄贈されて現在に至るのかな。
うーん、授業だけではわからない事がたくさんあるみたい。
少しして噴水の近くを、黒毛と白毛が縦に半分の猫が尻尾をゆらゆらさせながらまったりと歩いていた。
今まで気づかなかっただけで、この教会に住んでいる
あ、立ち止まって背伸びしてる…かわいい!
ずっと猫の様子を見ていたからか、白黒猫ちゃんが私の所にやって来た。
そして、あっという間に私の膝に乗って安心したのかうとうととしはじめている。
――うん、かわいい!撫でてみようかな。
優しく撫でてあげると、白黒猫ちゃんはゴロゴロ鳴らしながら気持ち良さげに伸びた。
卒業したら私も猫を飼いたいな~、とそんな事を考えてしまったけど父は許してくれるかな?
周辺の様子を観察していたら、時間があっという間に過ぎてしまったみたい。
気がつくと、迎えの白い車が事務室のある建物前に止まる。
車から降りてきた運転手は帰省の時いつも迎えに来てくれる叔父さんで、私がベンチに座っているのに気づいてやって来た。
叔父さんは父の年の離れた――十歳下の弟で、名前は
ひとりっ子の私から見てお兄さんのような人で、あの子のわがままに困らされているといつも私の味方をしてくれる父の次に頼れる存在だ。
お迎えの車の件も、父と相談して
他の人だとなんだか安心できないし、あの子に関してのお小言を貰う可能性もあったから……
「ははは、すっかり猫に好かれてるじゃないか!」
おかしそうに笑う
「うん、すごくかわいい。いつか飼いたいくらいです」
「いいんじゃないか?今までわがままらしい事を言わなかったお前が兄さんに言ってみろ、大喜びするぞ~」
物心つく前はわがままっぽい事を言っていたらしいけど、あの子にすべて奪われていく内にいつの間にか言わなくなった私を父と
あの子の父親である
「…でも明日で
「気持ちはわかるがな、あいつとお前は違う存在だ。
今は亡き、先代の長であった祖父やその重鎮達の一部は
元々、次代の長と決められていたのは伯父さんだったし…私のお父さんが王都で仕事に就く予定で、