12話:再会の旅人
墓所の入口に建てられた、二年前の事件があった日付の彫られた慰霊碑とその傍に建てられた秋桜の咲いている真新しい墓――おそらく、この二ヶ所が目的の場所だろう。
しかし、今の時期に秋桜が咲いているものなんだな……
「この土地って、季節関係なく狂い咲く花が多いそうだよ。でも、この土地から少しでも離れると枯れ崩れちゃうんだって」
つまり、この秋桜はここで眠る者が生前一番好きな花だったのかもしれない。
それぞれに供え、祈っていると突然の強風に思わず顔をそむけてしまう――が、すぐに止んだので再び正面を向く。
すると、目の前にふたりの…長い桃色がかった女性と黒く長い髪をふたつに結った少女が立っていた。
女性の方は青と緑のリボンの、少女の方はピンクのリボンの花束を嬉しげに花束を抱え…そして、こちらに向けて頭を下げると花束と共に消えてしまう。
「死者に会える祭り、か…」
彼女らが本人なのか、そうでないのか俺には判断つかない――だが、思いは届いていると信じたい。
その後、墓所を出てすぐ傍の脇道から森へ入った。
この脇道から入れば住民に気づかれないのだ、と
森の中は鬱蒼としている上に、昼間だというのに霧深く日の光はあまり届いていないようだ。
「はぐれたら危ないので、僕らから離れないように」
手を繋いだふたりに先導されるよう歩いて三十分、大きな岩のような石が落ちている場所に着いた。
「森の中にある扉、っていうのはここだよ…本当は入口を出してあげたいところだけど、管理している王家から許可が下りなくてさ」
申し訳なさげに
この大きな石の正面はわからないが、今いる方向側を正面と考えて大丈夫だろうとオレンジ色と赤色のリボンが結われた花束を置いて祈る。
誰かの気配に顔を上げると、目の前に赤髪の女性が花束を持って立っていた。
そういえば、この女性と
「
おそらく花束が
「さっきの彼女――
先ほどまで、
俺達はもう一度祈ると、次の目的地へ向かった…のだが、今どのあたりを歩いているのかまったくわからない。
多分一時間くらい経っただろうか、『
建物らしきものは何も残っていないようだが、ここが滅んだ集落――
最後の、藤色のリボンの結われた花束を石柱の前に置いて祈る。
暖かく柔らかな風と共に、優しげな表情の男が花束を手に取って立っているのに気づいた…どことなく
花束を抱えて石柱の先に向かう彼を追うと、おそらく
並んでいる住民達の前で立ち止まり振り返った彼は、住民達と共に頭を下げ――彼だけを残し、住民達は消えてしまう。
残った彼は、おそらく
「ありがとう、これから向かうね」
一体何を伝えてきたのか訊ねると、霧深い集落跡に視線を向けた彼女は答える。
「
目的の場所は幾つかの谷を越えた所にあるそうだが、崖下にある
ふたりの案内で人が生活していた痕跡さえ残らない集落の一番奥、岩壁に人の手で作られたトンネル前に辿り着いた。
なるほど、このトンネルを通れば谷越えをせずに済むわけか…そもそも、谷間に橋が架かっているかわからないしな。
トンネル内は薄暗く、足元が見えないので
だが、またすぐ次のトンネルが見えたのでひとり納得する――谷の分だけトンネルがあるのだな、と。
幾つかのトンネルを通った先に現れたのは、無機質な灰色の建物だった。
ここが殿下の言っていた所なのだろう、が一体何の施設なんだ?
それを訊ねると、
「僕らがここを見つけた時は、重要な書類など破棄されていたから詳しくわからない。でも多分〈
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