12話:再会の旅人
千森の長が代替わりをした、という新聞記事に目が留まった。
新暦1098年羽月の6日から9日の間に起こった、二度目の惨事の責任をとっての交代のようだ。
一度目は新暦1097年羽月28日の夜、ひとりの青年により引き起こされた――千森の住人や観光客らを無差別に殺傷した事件だった。
その当時は祭りが行われていた為、被害を拡大させてしまったらしい。
犯人である青年も祭りを見に来ていた観光客であったと千森の長は発表したが、青年本人も事件で死んでいるので本当のところは不明なままだ。
そして、今回…二度目は千森の住人十数名が行方不明となり、その後全員が死亡。
あまりにも多い被害に、長であった哉瀬が自らの責任だと認めて辞めるのだと記事には書かれていた。
――ちなみに今読んでいるものは、一年前に麟国で発行された新聞だ。
知治の案内で輝琉実にある教会へ深夜に訪れ、宿泊させてもらった俺は日が昇りきったくらいの時間に叩き起こされてその記事に目を通している。
もちろん休んでいた俺を叩き起こした張本人である知治は現在、修道女の六実に説教されているわけだが。
「知治さん!お客様を叩き起こすなんて、何考えているの?」
「えー、別に七弥は客じゃないじゃーん!六実だって知ってるだろ?」
「わかってないのは知治だけです!深夜にここへ辿り着いたのだから、お昼まで休ませようと言ったのはどこの誰だったの?」
「んーっと、それは俺。それに関してはめんご!なんだけど、これから行く所だから見せようと思ったんだよねー」
「一年前の記事を?それこそ、起きてからでいいでしょうが!!」
六実の言葉に、俺も心の中で同意する――本当に、起きてからで大丈夫な情報だった。
おそらくだが、知治的に面白かったから持ってきたんだろう……
しばらくは解放されないだろう知治は放っておいて、外の空気を吸おうと部屋を出た。
冥国を離れた後、俺は部下だった者達と共に星砂国に身を寄せて傭兵業をはじめた――もちろん、《闇空の柩》の支援を受けてだ。
おそらく監視も兼ねてだろうが、知治も手伝ってくれているので助かっている。
今回この国を訪れた理由は偶然会った夕馬から、千森で行われるという秘祭について教えられたからだ。
――死者と、一年に一度再会できる。
この言葉に、俺は興味を持った…もしかすると、あんな別れをしてしまったあいつともう一度会えるかもしれないと。
教会の裏口から外に出て、蒼い空へ目を向けた。
あれから七年、色々あった――それをあいつに経過報告したいと考えている。
「…本当に会えるなら、だがな」
思わず呟いて、自分の言葉に苦笑してしまう。
真偽については訊かなかったのだが、果たして本当に死者と会えるのかわからない。
ふとそう考えた自分に呆れつつ、ため息をついて煙草をくわえた。
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