12話:永久の闇への旅路
無言のまま、しばらく道なりに行くと車はやがて歩道に寄って止まった。
どうやら、目的の国立紫要 学園にたどり着いたようだ。
車から降りた葎名 様と俺は、目の前にある大きな門を仰ぐ。
「……私達はここまで、だ。後は別の者が案内してくれるはずだから、安心して行くといいよ」
「ここまで案内していただき、ありがとうございました…どうか、鈴亜 殿下と茅羽耶 殿下によろしくお伝えください」
頭を下げると、葎名 様は一瞬きょとんとした表情を浮かべると頷いて答えた。
茅羽耶 殿下とは、俺と倉世 が最初に仕えた冥 国の第五王女である。
おそらく、すぐこの国から離れなければならない……だから、最後の挨拶を伝えてもらえれば、と考えたのだ。
再び車に乗った葎名 様と斐歌 が去るのを見送った俺は、ゆっくりと紫要 学園の門をくぐった。
とても懐かしい学び舎に、思わず景色を楽しみながら本館入り口を目指して歩いてしまう。
考えてみれば、学生 時代が一番楽しかったかもしれないな…と、物思いにふけっていたら本館入り口前に人影があるのに気づいた。
「…七弥 様、ですね?お待ちしておりました…先に入館の受付は済ませておりますので、どうぞこちらに――」
声をかけてきたのは、アシンメトリーな灰青色の短髪に青竹色の瞳をした男だった。
この男は理事長である真宮 の秘書をしているそうだが、おそらく彼も《闇空の柩》の関係者なのだろう。
それにしても、一体何時 から学舎内に《闇空の柩》の者達が入り込んでいたのだろうか?
秘書の案内でやって来たのは、本館最上階にある理事長室の扉の前だ。
会う前なので上着など服装を整えていると、そんな事お構いなしに秘書が扉をノックした。
「真宮 様、お客様をご案内いたしました……よろしいでしょうか?」
「……入れ」
返事を聞いた秘書は静かに扉を開けると、俺に入るよう勧めてくる。
……どうやら、彼は共に入室しないようだ。
理事長室に入ると、秘書は開けた時と同じようにして扉を閉める。
閉じた扉から視線を室内へ向けると、何処かで会ったような人物がデスクの前に立っていた。
白金色の髪に青紫色の瞳をした――名前は確か、白季 だったか?
驚きのあまり見ていると、白季 らしき人物は苦笑した。
「あぁ…もしかして、君は私の子に会ったのだね?残念ながら私は白季 ではない、名を真宮 という」
喋り方が違うだけで、ほとんど似た姿形をしている…そういえば、彼は『私の子』だと白季 の事を言っていたな。
なるほど、親子なら似ていてもおかしくないのかもしれないが……双子だと言っても差し支えない気がした。
「まぁ、立ち話もなんだ……そこにかけたまえ」
真宮 に勧められるまま応接用ソファーに腰かけると、彼は向かいに座り足を組んだ。
それと同時に、俺をここまで案内してくれた秘書が2人分のお茶を持って部屋に入ってきた。
「……どうぞ」
俺と真宮 の前に、静かにお茶を置いた秘書は一礼して退出する。
置かれたお茶をひと口飲んだ真宮 が、俺の様子を観察するように視線を向けた。
「何を目的に、ここまで来たのか…一応、夕馬 から聞いてはいるがね――君の口から実際に何を知りたいのか、訊ねてもいいかな?」
予め、夕馬 が伝えてくれたのだろう……俺が倉世 からいろいろと教えられている事を。
――ならば、単刀直入に訊いても大丈夫か。
「久知河 と第六王子の目的……この世界の謎、とも言える全てを知りたい」
……昨夜、倉世 の手帳の隅々まで目を通した。
その中にあった世界の南半球にあったという大陸消失の謎、【古代兵器 】の存在や今回の件など聞きたい事は山ほどある。
学生時代、南半球にあったという大陸が天変地異で消失したと教えられていた。
……だが、実際は【古代兵器 】である【機械仕掛けの神 】の暴走で無くなったのが真実だった。
――あの童話『哀しみの神子』が制作された理由は、おそらく少しでも本当にあった出来事を伝えようとしたからだろう。
つまり〈神の血族 〉について書かれた他の童話も、何かしらの出来事を題材にして制作されたという事だ。
俺は気づいたそれらについてを、真宮 に話した……もちろん、倉世 の最期についても。
「ふむ……なるほど、君はあの手帳を持っているのだね」
さして興味なさげな様子の真宮 は、手に持っていたカップをローテーブルに置いた。
手帳の存在を知っていたのか……つい、そんな言葉が口をついた。
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どうやら、目的の国立
車から降りた
「……私達はここまで、だ。後は別の者が案内してくれるはずだから、安心して行くといいよ」
「ここまで案内していただき、ありがとうございました…どうか、
頭を下げると、
おそらく、すぐこの国から離れなければならない……だから、最後の挨拶を伝えてもらえれば、と考えたのだ。
再び車に乗った
とても懐かしい学び舎に、思わず景色を楽しみながら本館入り口を目指して歩いてしまう。
考えてみれば、
「…
声をかけてきたのは、アシンメトリーな灰青色の短髪に青竹色の瞳をした男だった。
この男は理事長である
それにしても、一体
秘書の案内でやって来たのは、本館最上階にある理事長室の扉の前だ。
会う前なので上着など服装を整えていると、そんな事お構いなしに秘書が扉をノックした。
「
「……入れ」
返事を聞いた秘書は静かに扉を開けると、俺に入るよう勧めてくる。
……どうやら、彼は共に入室しないようだ。
理事長室に入ると、秘書は開けた時と同じようにして扉を閉める。
閉じた扉から視線を室内へ向けると、何処かで会ったような人物がデスクの前に立っていた。
白金色の髪に青紫色の瞳をした――名前は確か、
驚きのあまり見ていると、
「あぁ…もしかして、君は私の子に会ったのだね?残念ながら私は
喋り方が違うだけで、ほとんど似た姿形をしている…そういえば、彼は『私の子』だと
なるほど、親子なら似ていてもおかしくないのかもしれないが……双子だと言っても差し支えない気がした。
「まぁ、立ち話もなんだ……そこにかけたまえ」
それと同時に、俺をここまで案内してくれた秘書が2人分のお茶を持って部屋に入ってきた。
「……どうぞ」
俺と
置かれたお茶をひと口飲んだ
「何を目的に、ここまで来たのか…一応、
予め、
――ならば、単刀直入に訊いても大丈夫か。
「
……昨夜、
その中にあった世界の南半球にあったという大陸消失の謎、【
学生時代、南半球にあったという大陸が天変地異で消失したと教えられていた。
……だが、実際は【
――あの童話『哀しみの神子』が制作された理由は、おそらく少しでも本当にあった出来事を伝えようとしたからだろう。
つまり〈
俺は気づいたそれらについてを、
「ふむ……なるほど、君はあの手帳を持っているのだね」
さして興味なさげな様子の
手帳の存在を知っていたのか……つい、そんな言葉が口をついた。
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