12話:永久の闇への旅路
俺も荷物をざっくりまとめる為に、一度寮の自室に戻ってきたわけだが――
とりあえず、港の爆発で手一杯なのか…まだ、俺達の部屋に捜査の手が伸びていなかったのは幸いだった。
だが、あまり悠長な事はできないだろう。
貴重品や必要なものなどを鞄に詰め、俺は住み慣れた自分の部屋を後にする。
ふと思い出し、
あいつの部屋は俺の部屋と違い、捜索されたのかバリケードテープが貼られていた。
粗方、連中の手に渡った後だろうが……と、そっと部屋に足を踏み入れる。
予想通り部屋は荒らされ、証拠となるようなものは持っていかれたようだ……が、幸いにも連中は気づかなかったようだ。
床に落ちているそれを手に、思わず苦笑してしまった。
(まったく…幼馴染みである俺じゃなければ、
――それは可愛らしい白いクマのぬいぐるみだった。
学生時代に、何かの時に
最期にそれを口にしなかったのは、あえて言わなくてもわかると信じてくれたんだろう。
一体どんな秘密が隠されているのか、拾ったぬいぐるみをじっくり観察してみた。
ひと抱くらいの……見た目は何の変哲もない、首元に赤いリボンの結われた白いクマのぬいぐるみにしか見えない。
――あいつは、これに一体何を……?
とりあえず、あまりこの場に長く留まるのは得策ではない。
俺はぬいぐるみを抱えたまま、部屋を出た…もう、ここに来る事もないだろう。
学舎の理事長である
まぁ、荷物をまとめた部下達はもう
さすがに俺ひとりでは、彼らを守り切る事は不可能だろうし…
少し考え込んだ
――問題が俺だけになるので、約束の時間まで別の場所で身を隠しながら潰す事にした。
翌日の早朝……王都の小さなホテルにいたら、何故か私服姿の
ホテルの前に車が横付けされており、運転席には
促されるまま車に乗り、そのまま学舎――国立
その道中、
「
「…………」
何が問題であるのか…その問いは〈隠者の船〉を動かした際、それに気づいた
その時の俺は、
おそらく、この時には全てを知られていたのだろう……だから、何も知らない俺に気づかせようと問いかけたという事か。
――あぁ…だから
だが、まさか『
……もし、あの段階で気づていたら
何も答えられず、ただ静かに運転席の背面を見つめる事しかできなかった。
そんな俺の様子に、
「……まぁ、その様子なら大体の事は知ったのだろうね」
「貴方達も…《闇空の柩》の関係者、なのか?」
「あぁ、
苦笑した
「この国の王族が《闇空の柩》と取引をしたのは、新暦に変わって100年経ったくらいだったそうだよ……」
この世界を死なせぬよう、当時の王が《闇空の柩》を統べている〈
その契約は現在も続いているのだが、今代になってある異変が起きてしまったらしい。
「あまり詳しくは話せないのだけどね…陛下は、もう長くない」
その言葉に驚き、思わず
……公務に就けていないと言っていたが、国の行事などで姿を現していたはずだ。
その際、とてもお元気そうだったと思うが――
「……私の父が影武者をしているんだよ、とてもよく似た顔立ちをしていたからね」
そういった関係で両親は出会ったのだと、苦笑しながら
そういえば、
「父のおかげで陛下は、今の状態を誰にも悟られずに済んでいた……でも、もう誤魔化せないだろう」
…だが、それを
「まぁ、約10年…影武者である事が表沙汰にならなかったのだから御の字だね」
「ならば、
それについて訊ねると、顔を俯けた
「…陛下は気づかれたんだ、
しかし、結果として守るどころか連中に手を下させる隙を与えただけだったという……信用できる者達に護衛を任せていたのに、だ。
「何処にも属していないだろう者達を選んだというのに、知らぬ内に何人か入れ替わっていた上に寝返った者もいた……」
狂気に飲まれかけ、正気を失い始めた淑女を
この事態に気づいたのは
……でも、
それについて訊ねると、
「知っていたよ…
――
つまり、あの事件が起こらなければ…
「彼らは、強大な力を欲していたからね…目くらまし位にはなるかと思い、
だが……まさか研究所併設の医院にて『試験薬』が誰にも気づかれないよう散布された上、医院に訪れた見舞客の身体に付着した『
そして、その悲劇に自分達がとどめを刺した…というわけか。
思わず呟いた俺の言葉に、
もしかすると、彼らも答えられなかっただけなのかもしれない……
***