11話:先に行く者と逝く者
とにかく、そこであの『薬』をどれだけ無力化できるかという課題をだされたんだ――実験結果に関わらず評価をするからと言われて。
俺自身、学生という立場であるにも関わらず未知のものを調査できるという好奇心が勝 って二つ返事で了承した。
…まさか、数年経って走水 に利用され――玖苑 の街を、あのような状態に陥れてしまうとは考えてもみなかったんだ。
学生時代に書いた実験レポートには、俺の名前は書かれていなかったが…おそらく、字体で俺だと走水 は気づいたのだろう。
だから、玖苑 研究所で行 う実験に参加しないかと声をかけてきたのだと思う。
その上、綺乃 の仕掛けた罠にもはまってしまった…これでは、大昔に罪を犯した先人達の事を言えやしないな。
俺の話を聞き終えた七弥 は、何も言えない様子で静かにこちらを見ているだけだ。
おそらく、何もかもが初めて知る事実で疑問すらも思い浮かばないのだろう……
ただ、その目は「何故…そのような事態に陥る前に、ひと言相談してくれなかったのか?」と言っているようだった。
「相談できれば、相談していた…だが、これは機密事項の方が多い――だから、何も言えなかった。例え、罠が仕掛けられ嵌められたとしてもな」
「…それは理解できる。俺も、さすがに機密を漏らすような相談なぞされたくないし聞きたくもない」
ゆっくり首を横にふった七弥 は言う…自分もお前が記憶を失っているとわかっていても何も教える事ができなかったのだから、と。
だが…と、言葉を続けた。
「研究畑にいたお前が何故、軍に入ったのか…それくらいは教えてくれてもよかったんじゃないか?」
「…そうだな、お前は知っているかわからないが――ある実験で大きな事故を起こしてしまってな」
数年前…夢明 の外れにあった小さな研究所で行 っていた実験で、爆発事故を起こしてしまった――付近の被害はほぼなかったのが不幸中の幸いだったが。
今考えてみれば、それも綺乃 が直前に姿を消していたように思う…おそらく彼女が何か仕掛けたのだろう、夕馬 達の話を聞く限りでは。
…だから、俺は研究者としてだけでなく抗う力を持てる軍人としての立場にもなろうと決めたんだ。
言えない事もあったが、それを省いて相談しなかったのは悪かったと思っている……王女殿下の護衛で、七弥 にだいぶ迷惑をかけてしまったのは理解しているからな。
それと、右穂 にもたくさんフォローさせたように思うのだが…その分、俺の与り知らぬ事も多かったので気持ちは複雑だ。
俺の視線に気づいたのか、そばに控えている右穂 はにっこり微笑んで肩をすくめた。
あくまで、そこはノーコメントという意志表示なんだろうな……
どうせ、全て終えればゆっくり時間もとれるのだから…その時に、じっくり聞こうと思う。
「あー…そうだ、七弥 ――お前、葎名 様に何と言ってこの飛行艇を動かしたんだ?」
気になっていた事のひとつを今思いだしたので、七弥 に訊ねた。
確か、記憶を失っているというのに許可書にサインした気がするんだがな…絶対に、事後報告込みでそれを送っているだろう。
だいたい、この〈隠者の船〉は玖苑 の港の…ほぼ使われていない場所に停泊させていたんだぞ?
よくもまぁ、探しだせたものだな…と感心していたら七弥 は顔をしかめて答えた。
「確かに、わかりにくい場所にあった…が、事前に久知河 閣下から大体の場所は知らされていた。だから、制圧も簡単だった」
…綺乃 から情報がいっていたのだろう、とすぐにわかった――久知河 と綺乃 は繋がっているようだから。
それよりも、なんだ…制圧も簡単だったと言っていたが、それはそうだろうとしか答えられないじゃないか。
しばらく使わないから整備の者達をメインで残していたのだから……あぁ、警備が手薄だったのが一番の問題だな。
何と答えるべきか悩んでいる俺の様子を余所に、七弥 は言葉を続けた。
「その後、葎名 様に詳細を訊ねられたので玖苑 でのあらましとお前が負傷した旨を簡単に報告をした…もちろん、お前が何かやっていた事も」
なるほど…許可をだして、七弥 の――というより、久知河 と第六王子の動きを調べようと葎名 様は考えたんだろう。
向こうは、葎名 様の背後にいる第二王子殿下を一番に失脚させたいだろうからな……
それを教えてやると、七弥 は「そういう事か…」と呟いて項垂れてしまった。
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俺自身、学生という立場であるにも関わらず未知のものを調査できるという好奇心が
…まさか、数年経って
学生時代に書いた実験レポートには、俺の名前は書かれていなかったが…おそらく、字体で俺だと
だから、
その上、
俺の話を聞き終えた
おそらく、何もかもが初めて知る事実で疑問すらも思い浮かばないのだろう……
ただ、その目は「何故…そのような事態に陥る前に、ひと言相談してくれなかったのか?」と言っているようだった。
「相談できれば、相談していた…だが、これは機密事項の方が多い――だから、何も言えなかった。例え、罠が仕掛けられ嵌められたとしてもな」
「…それは理解できる。俺も、さすがに機密を漏らすような相談なぞされたくないし聞きたくもない」
ゆっくり首を横にふった
だが…と、言葉を続けた。
「研究畑にいたお前が何故、軍に入ったのか…それくらいは教えてくれてもよかったんじゃないか?」
「…そうだな、お前は知っているかわからないが――ある実験で大きな事故を起こしてしまってな」
数年前…
今考えてみれば、それも
…だから、俺は研究者としてだけでなく抗う力を持てる軍人としての立場にもなろうと決めたんだ。
言えない事もあったが、それを省いて相談しなかったのは悪かったと思っている……王女殿下の護衛で、
それと、
俺の視線に気づいたのか、そばに控えている
あくまで、そこはノーコメントという意志表示なんだろうな……
どうせ、全て終えればゆっくり時間もとれるのだから…その時に、じっくり聞こうと思う。
「あー…そうだ、
気になっていた事のひとつを今思いだしたので、
確か、記憶を失っているというのに許可書にサインした気がするんだがな…絶対に、事後報告込みでそれを送っているだろう。
だいたい、この〈隠者の船〉は
よくもまぁ、探しだせたものだな…と感心していたら
「確かに、わかりにくい場所にあった…が、事前に
…
それよりも、なんだ…制圧も簡単だったと言っていたが、それはそうだろうとしか答えられないじゃないか。
しばらく使わないから整備の者達をメインで残していたのだから……あぁ、警備が手薄だったのが一番の問題だな。
何と答えるべきか悩んでいる俺の様子を余所に、
「その後、
なるほど…許可をだして、
向こうは、
それを教えてやると、
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