11話:先に行く者と逝く者
この世界に住む大半の人間は、過去の大罪について何も知らない――…教えられるわけがないんだ。
本当ならば教えるべきなのだろうが、罪の証である『存在 』を知ってしまえば…再び世界に悲劇が起こるだろう、といわれている。
人は力を欲し、それを手に入れてしまえば使いたくなるものなのだから。
そうなれば、世界は……今度こそ、終わる――
…学生時代、俺は古代技術の研究分野を専攻していたので知る事ができた。
そして同時に、『罪の証 』がとても危険なものであるという事も……その代表として知られているひとつが【機械仕掛けの神 】である。
かつて力の暴走で世界の半分を消し飛ばした、といわれている凶悪な兵器なのだ。
それに対抗する力が、どうしても必要だった。理由は簡単だ、冥 国にその試作体 が眠っているのだから……
俺は冥 国にそれ があるのを、まったく知らなかった。
――それを知っている研究者達を走水 博士が説得し、今回の…玖苑 研究所での実験に繋がった。
俺としても反対する理由はなかったし、無害化させて使えるようになるのならば…毎年何かしら被害がでてしまう『大蛇退治』に役立てられるかもしれないと考えたわけだ。
今考えてみれば、少し安易だったかもしれないとわかるのだがな……
「それよりも、お前は何故…この医院――研究所だけでなく、玖苑 の街をも襲撃した?」
医院にいた人間にも『薬』が使われたのを知っているのは、研究所内にいた人間だけだ。
外からやって来た七弥 達がその事に気づけるわけはないし、知られるにしても早過ぎる……
そもそも、あの『薬』を投与されたからといってすぐに効果が表れるわけではない。
…ぱっと見で、それがわかるわけないのだ。
なのに、研究所内にいた者達はもちろん…医院内にいた一般患者達も一緒に始末した。
おそらく、街の方も同時に襲撃して始末したのだろう……
だから、俺は七弥 に訊ねたんだ――無抵抗な人間に、お前達の方こそ何をしたのかわかっているのかと。
「その命令が……お前は、本当に正しいと思っているのか?」
言葉を重ねて訊く俺に、七弥 は怒りをにじませた表情で逆に問うてきた。
「…ならば、お前達がやった事は正しい事なのか?」
「俺達がした事は正しい正しくないで測る事はできない…だが、いずれ全ての者にとって救いとなる」
これくらいの事ならば、機密に触れないギリギリだから大丈夫だろう。
できれば、七弥 には…先人達の冒した大罪についてを知らず、王女殿下の護衛に戻ってもらいたいと思っていた。
今は違う部署にいるようだが、いずれは……と。
銃を下ろし、近づいてきた七弥 は俺の胸ぐらを掴むとその怒りを爆発させた。
「ふざけるな…何が救いだ!この状況を見てみろ、お前達がやった事は救いじゃない――ただ、その生命を弄んだだけだろうが!!」
「確かにそうかもしれない…だが、実際にこうして虐殺をしたのは――七弥 、お前達の方だろう?」
『薬』が研究所から医院へ…医院から街へと漏れてしまったのは、こちらの落ち度である。
生命を弄んだ、と言われても仕方ないだろう……何も言い訳はしない。
それが罪だと言われれば、「そうだ」としか答えられない状況なのも理解できている。
――その手を汚すのは、俺達の役目だった…お前まで手を汚してどうするんだ、七弥 ?
第六王子や久知河 達は、それを理由にお前を始末する可能性だってあるというのに……
だが…それを知らせなかったのは俺の罪、になるのかもしれない。
思わず自嘲気味に笑ってしまったのが、どうやら七弥 の逆鱗に触れてしまったようだ。
胸ぐらを掴まれたまま、思いっきり背後にある建物の壁に叩きつけられてしまった。
その時、頭部を強打したのだろう……
結果はあの通り、きれいに何も覚えていない状態となってしまったわけである。
まぁ、ある意味俺が挑発したようなものだからな…相手 をあまり責められないか。
「――…お前は、何処まで知った?」
あの顔色だ…多分、あの事件の真相の一部を知ってしまったのだろうな。
それとも、何か別の内容を知らされたのかもしれないが……
俺の問いかけに、七弥 は大きくため息をついて語った。
希衣沙 から聞かされた事や、音瑠 の母親である樟菜 から聞かされた事を――
そして、久知河 や走水 達の言っていた内容の大半が偽りであった事を知ったのだという。
…樟菜 が言っていたという内容は、俺も知らなかったぞ。
まさか、走水 と知り合いだったとは…そんな事わかるわけがない。
そもそも、遠過ぎて親戚かどうかも怪しい関係性なのだから。
そもそも、樟菜 の夫であり音瑠 の父親でもある男が走水 の仲間で零鳴 国の間者だったとは…わかるわけがないだろ、見た目はただの商人だったしな。
まぁ、普通の商人に見えるという理由のおかげで間者を務められたのだろうが……
本当ならば教えるべきなのだろうが、罪の証である『
人は力を欲し、それを手に入れてしまえば使いたくなるものなのだから。
そうなれば、世界は……今度こそ、終わる――
…学生時代、俺は古代技術の研究分野を専攻していたので知る事ができた。
そして同時に、『
かつて力の暴走で世界の半分を消し飛ばした、といわれている凶悪な兵器なのだ。
それに対抗する力が、どうしても必要だった。理由は簡単だ、
俺は
――それを知っている研究者達を
俺としても反対する理由はなかったし、無害化させて使えるようになるのならば…毎年何かしら被害がでてしまう『大蛇退治』に役立てられるかもしれないと考えたわけだ。
今考えてみれば、少し安易だったかもしれないとわかるのだがな……
「それよりも、お前は何故…この医院――研究所だけでなく、
医院にいた人間にも『薬』が使われたのを知っているのは、研究所内にいた人間だけだ。
外からやって来た
そもそも、あの『薬』を投与されたからといってすぐに効果が表れるわけではない。
…ぱっと見で、それがわかるわけないのだ。
なのに、研究所内にいた者達はもちろん…医院内にいた一般患者達も一緒に始末した。
おそらく、街の方も同時に襲撃して始末したのだろう……
だから、俺は
「その命令が……お前は、本当に正しいと思っているのか?」
言葉を重ねて訊く俺に、
「…ならば、お前達がやった事は正しい事なのか?」
「俺達がした事は正しい正しくないで測る事はできない…だが、いずれ全ての者にとって救いとなる」
これくらいの事ならば、機密に触れないギリギリだから大丈夫だろう。
できれば、
今は違う部署にいるようだが、いずれは……と。
銃を下ろし、近づいてきた
「ふざけるな…何が救いだ!この状況を見てみろ、お前達がやった事は救いじゃない――ただ、その生命を弄んだだけだろうが!!」
「確かにそうかもしれない…だが、実際にこうして虐殺をしたのは――
『薬』が研究所から医院へ…医院から街へと漏れてしまったのは、こちらの落ち度である。
生命を弄んだ、と言われても仕方ないだろう……何も言い訳はしない。
それが罪だと言われれば、「そうだ」としか答えられない状況なのも理解できている。
――その手を汚すのは、俺達の役目だった…お前まで手を汚してどうするんだ、
第六王子や
だが…それを知らせなかったのは俺の罪、になるのかもしれない。
思わず自嘲気味に笑ってしまったのが、どうやら
胸ぐらを掴まれたまま、思いっきり背後にある建物の壁に叩きつけられてしまった。
その時、頭部を強打したのだろう……
結果はあの通り、きれいに何も覚えていない状態となってしまったわけである。
まぁ、ある意味俺が挑発したようなものだからな…
「――…お前は、何処まで知った?」
あの顔色だ…多分、あの事件の真相の一部を知ってしまったのだろうな。
それとも、何か別の内容を知らされたのかもしれないが……
俺の問いかけに、
そして、
…
まさか、
そもそも、遠過ぎて親戚かどうかも怪しい関係性なのだから。
そもそも、
まぁ、普通の商人に見えるという理由のおかげで間者を務められたのだろうが……