9話:断罪の刃
口が軽くて、あまり深く考えてないような言動――出会った場所と時が違えば、夕馬 と一緒におもちゃにできるのに…と考えると更に笑えてしまう。
「何がおかしい…?」
おかしそうに笑う白季 の様子に、男は苛立ちを隠さずに言った。
おそらく、白季 が何を考えているのかわかったのだろう…
ひとしきり笑った白季 はにっこり微笑んで、苛立っている男に向けて答えた。
「ううん、別に――まぁ…あの時、僕に対しての追っ手の数が多い割りにあまり手荒な事をしてこなかったからさ。なんとなく、目的のひとつに僕が含まれてるんだろうなぁ…と思ったけどね」
炎に包まれた玖苑 の研究所から脱出する為、生き残った被験者と共に行動していたが襲撃者である軍人達が拘束しようとしてきたのだ。
初めは自分の連れている被験者を狙ってか、と考えたがそんな雰囲気ではなく。
ならば、珠雨 が亡くなる前に託されたもののひとつにあるのかと考えたのだが……彼らが一向に鞄を奪おうとしてこないので、それも違うように感じていた。
なんとか無事に夕馬 と合流できたので、その事についてをあまり考えずにいたのだが……
どうも飛行艇内で誰かに監視されているような違和感を感じた。
夕馬 に周囲を探ってもらい、彼らの……本当の目的を知ったのだ。
「さすがにさ、わかるよ。倉世 と紫鴉 が『首謀者』だと言いながら、君は僕に何度も視線を向けていたからね」
「ならば、話は早い。大人しく――」
そこまで言った男は白季 に向かって手を伸ばす……が、すぐに動きを止めて瞬時にしゃがみ込んだ。
先ほどまで彼の頭があった辺りを、何者かの繰りだした蹴りが空を切って壁に当たる寸前で止まる。
襲撃してきたのが一体何者なのか確認すると、そこにいたのは軍帽を目深に被った青年だった。
「あー、惜しい。も少しだったんだけどなー…思いっきり外した。バカの割りに勘だけは鋭いなぁ、希衣沙 」
「っ…夕馬 、殿!?」
濃い紫色の髪をした男・希衣沙 は驚いたように、目の前にいる軍帽を被った青年の名を呼んだ。
また邪魔を…と舌打ちして呟いた希衣沙 の様子に、夕馬 は口元に笑みを浮かべたままゆっくりと足を下ろす。
そして、軍帽の鍔を上げると面白そうに笑いながら希衣沙 に声をかけた。
「いやいや、お前如きが俺達を出し抜けるワケねーだろう?大体、俺達はお前を面白いから泳がせてやっただけだぞー」
「…それを感謝しろ、と?ふざけるな…ならば、あんたを倒してこちらは目的を果たさせてもらう!」
立ち上がった希衣沙 はゆっくり構えると、相手の出方をうかがう。
実力的に夕馬 が上であるのを理解しているので、自分から仕掛ける事はできなかった。
それをしてしまうと、確実に一瞬で抑えられてしまうだろう…
だから、相手の動きと力を利用して逆に抑え込もうとしたのだ。
そうでもしなければ、命令を成せない上に使えないと判断される可能性があると理解していた。
希衣沙 の、そんな状況を知ってか知らずか…夕馬 は心から楽しそうな笑みを浮かべる。
「あはは…そういや、お前も戦えるんだったけ?ボコボコにされてるところばかり見て楽し…たから、すっかり忘れてたなー」
「夕馬 のやつ、一瞬だけ本音がでちゃってるよ…まったく」
呆れたように呟いた白季 は、夕馬 …ではなく、希衣沙 の方に目を向けていた。
おそらく、内心「ひとりで楽しむなんてずるいなぁ」などと考えているのだろう……
それに気づいた夕馬 が白季 に向けて、申し訳なさそうに手を上げて謝罪した。
「まさか、あんなに面白おかしいと思ってなくてなー…ははは」
「…くっ、ふざけてるのか?」
夕馬 と白季 の様子をうかがっていた希衣沙 が、更に苛立った様子で言葉を続ける。
「さっきから人の事を、何だと……貴様ら、この状況をわかっているのか?」
…確かに、夕馬 と白季 の会話は誰がどう聞いても希衣沙 をからかっているようにしか見えなかった。
怒りを隠さず、睨みつけてくる希衣沙 に夕馬 は小さく息をつく。
「仕方ないなぁ…面倒だけど、少し遊んでやるか」
「何がおかしい…?」
おかしそうに笑う
おそらく、
ひとしきり笑った
「ううん、別に――まぁ…あの時、僕に対しての追っ手の数が多い割りにあまり手荒な事をしてこなかったからさ。なんとなく、目的のひとつに僕が含まれてるんだろうなぁ…と思ったけどね」
炎に包まれた
初めは自分の連れている被験者を狙ってか、と考えたがそんな雰囲気ではなく。
ならば、
なんとか無事に
どうも飛行艇内で誰かに監視されているような違和感を感じた。
「さすがにさ、わかるよ。
「ならば、話は早い。大人しく――」
そこまで言った男は
先ほどまで彼の頭があった辺りを、何者かの繰りだした蹴りが空を切って壁に当たる寸前で止まる。
襲撃してきたのが一体何者なのか確認すると、そこにいたのは軍帽を目深に被った青年だった。
「あー、惜しい。も少しだったんだけどなー…思いっきり外した。バカの割りに勘だけは鋭いなぁ、
「っ…
濃い紫色の髪をした男・
また邪魔を…と舌打ちして呟いた
そして、軍帽の鍔を上げると面白そうに笑いながら
「いやいや、お前如きが俺達を出し抜けるワケねーだろう?大体、俺達はお前を面白いから泳がせてやっただけだぞー」
「…それを感謝しろ、と?ふざけるな…ならば、あんたを倒してこちらは目的を果たさせてもらう!」
立ち上がった
実力的に
それをしてしまうと、確実に一瞬で抑えられてしまうだろう…
だから、相手の動きと力を利用して逆に抑え込もうとしたのだ。
そうでもしなければ、命令を成せない上に使えないと判断される可能性があると理解していた。
「あはは…そういや、お前も戦えるんだったけ?ボコボコにされてるところばかり見て楽し…たから、すっかり忘れてたなー」
「
呆れたように呟いた
おそらく、内心「ひとりで楽しむなんてずるいなぁ」などと考えているのだろう……
それに気づいた
「まさか、あんなに面白おかしいと思ってなくてなー…ははは」
「…くっ、ふざけてるのか?」
「さっきから人の事を、何だと……貴様ら、この状況をわかっているのか?」
…確かに、
怒りを隠さず、睨みつけてくる
「仕方ないなぁ…面倒だけど、少し遊んでやるか」