8話:悪夢の果てに…

「はぁ、やっぱり…怒っているかなぁ」

――ラウンジを過ぎた通路にて。
白金色の髪をした青年が、頭を抱えるようにしてため息をついた。
自分が直接何かしでかしたわけではないのだが、これから会う相手の機嫌が悪い事だけはなんとなく予想ができているのだ。

隣にいる濃い灰色の髪をした軍人が首をかしげると、複雑げな表情を浮かべている青年に答えた。

「そうですね…機嫌は最悪に近いようですが、元気に殴る蹴るをされてます。今行けば、白季しらきさんはサンドバックかと……」
「…不吉な事、言わないでくれないかな?理矩りく

表情もなく言ってのけた濃い灰色の髪をした軍人・理矩りくに、白金色の髪をした青年・白季しらきはひきつった笑みを浮かべる。

――元気なのは良い事だ……
だけど、のこのこ会いに行ってサンドバックにされるのは誰であっても嫌である。
何かしでかしてしまったのなら、まだ納得…とまではいかなくても、理由はわからなくもない。
だが、直接やったのは今この場にいない人物なのだから――

夕馬ゆうまのやつ…葎名りつなに連絡する事があるからと言って、何処かに行っちゃったけどさ。ついでに責任を取って、サンドバックになってきてほしいなぁ」

ひとり愚痴るように呟いた白季しらきは何かを諦めたように、とぼとぼと通路を歩きはじめた。
その一歩後ろから、周囲を警戒した理矩りくも歩みを進める。
警戒しているのは、所用で離れる夕馬ゆうまから白季しらきの護衛を任されたからだ。

2人がしばらく歩いていると、通路の先から微かに血のような匂いがしてくるのに気づいた。
それにいち早く気づいた理矩りく白季しらきの前に歩み出ると、通路にあるそれ・・を確認する。

そこにあったのは、無残に殺された2人の少女の亡骸だった……

理矩りくの後ろから、ではあるが……少女達の亡骸を見た白季しらきは、驚いたように目を見開く。

「あれ…もしかして、この子達って」

この少女達の事を、白季しらきはすぐに思い出した。
数年前、この少女達とは授業で会った事があるのだ。

それに気づいた白季しらきは静かに俯くと、小さく彼女達の名前を呟いた。
白季しらきの呟きを聞いた理矩りくが、無表情ながらも心配そうに声をかける。

「大丈夫ですか、白季しらきさん…?」
「うん、大丈夫。もう、行こうか…」

顔を上げずに答えた白季しらきは、ゆっくりと首を横にふった。
そして、着ていた白衣を2人の少女の亡骸にかけると理矩りくと共にこの場を去ろうとした。
その時、突然背後から聞こえてきた足音に警戒しながら息を飲んだ。

ゆっくり白季しらき理矩りくがそちらを向くと、そこに立っていたのは……


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