6話:夢明の悲劇

俺達が悲鳴のした場所――客室近くの通路にたどり着くと、すでに十数人の軍人達が集まっていた。

しかし…この、むせ返すような血の匂いは――
一体、何があったのだろうか…?

気になった俺と右穂うすいは、集まっている軍人達の間から様子をうかがってみた。

「っ…」

現場を目にした俺と右穂うすいは、思わず息を飲んでしまった。
俺や右穂うすいだけじゃない…その現場にいた軍人達も、皆が現場を見て息を飲んでいた。

そこには……

辺り一面におびただしい赤い液体が壁や床に飛び散り、床には軍服姿の男女2人が自ら作った赤い水たまりにうつぶせで倒れていた。
彼らの傍には杜詠とよみがおり、どうやら検死しているようだ。

男の軍人は全身に刺し傷があり、刺殺のようだ。
おもに、心臓付近を刺され大量に失血した事で死んだのだろう。
女の軍人は右肩や心臓付近を、何度も撃たれた事で生命を落としたようだ。
ただし、その後…何度も何度も刺されたらしく、身体の損傷が激しい――

…と、杜詠とよみが話していた。

ふと、俺達のいる場所とは反対側に怯えている様子の音瑠ねるが事情を訊ねているらしい七弥ななやと共にいるのが見えた。
おそらく、右穂うすい七弥ななやの存在に気づいたのだろう…俺の上着の袖を引いて、静かに集まっている軍人達から離れる。
俺も半歩遅れて離れると、右穂うすいは囁いた。

「…この場にいる大半の者が、七弥ななや隊長の部隊の者達です。ここを離れましょう…」

確かに…このままここにいれば、確実に捕らえられるかもしれない。
まぁ…七弥ななやから見れば、俺は大罪人だしな。

あのような現場を見てしまった音瑠ねるの事は心配だったが、このままここにいるわけにはいかない。
それに、七弥ななやが彼女のそばにいるのならば大丈夫だろう。

自分にそう言い聞かせながら…俺は右穂うすいに促されるまま、この場を去る事にした。
その時、視界の端に白衣を着た誰かを見かけて急いでそちらに意識を向ける。
だが、その誰かはすぐにこの場から去っていったようで姿は何処にもなかった。

あれは、誰だったんだろうか…?
その時、不意に夕馬ゆうまの言葉を思い出した。

――…走水そうすい博士に、会いに行くんだと思ってたけどな。

走水そうすい博士…多分、さっき見かけたやつがそうなのだろう。
七弥ななやがその存在を俺に隠していた、白衣の男・走水そうすい
そういえば、アイツはあの事件・・をどう考えているんだろうか…?

右穂うすいと移動しながら、そんな事を考えていた。

あー…そういえば、白季しらきは何処に行ったんだろうか?

あの隠し部屋にいなかったな…白季しらき
まぁ、夕馬ゆうまがこの飛行艇に乗っているのならば大丈夫だろうが…やつらの手の者に見つかったら、また――


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