6話:夢明の悲劇

夕馬ゆうまと別れた後、少し休んだ俺は右穂うすいの案内で飛行艇内の中にある…とある部屋の前に来ていた。

――本当に、この部屋に白季しらきがいるのだろうか…?

しかし、この部屋…少し入り組んだ場所にあるので、わかりにくい場所にあるな。
どういった部屋なのだろうか…?

それが気になった俺は、右穂うすいに訊ねた。

「そうですね、ここは隠し部屋になります。本当は、あんな入り組んだ通路を通らなくても行けたのですが……うるさい人達がたくさんいるので、静かな通路を選んでみました」
「…そうか。あー、そういえば…そうだった気がするぞ」

あれは…確か、初めて図面を見た時――何故、この部屋へ行く為の通路が複数あるのか訊ねたんだったな……
そうしたら、先生が笑いながら答えた。

――意味などないですが、その方が面白いでしょう?

そういえば、通路を無駄に入り組ませたり……
緊急脱出用の小型飛行艇を誰にもわからないように隠したり……
誰もが『とんでもない飛行艇』と呼ぶだろうものを作ってみた、と笑いながら話していたな。

「…………」
「…どうかされましたか、倉世くらせ様?」

ひきつった笑みを浮かべた俺に、右穂うすいが不思議そうに訊ねてきた。
俺が首をゆっくり横にふって「何でもない」と答えておく。

……さすがに、嫌な思い出に部類されるだろう記憶を思い出したとは言いだしにくかった。

とりあえず、気を取り直して…隠し部屋の扉を軽くノックしてみた。

――コンコンコン。

…だが、返事はない。
もう一度ノックをしてみたのだが、やはり中から返事はない。

さて、どうするか……
困っていると、右穂うすいはポケットから何か・・を取りだした。
そして、それを扉のそばにある装置にかざす。

「それは、な――」

俺が右穂うすいに訊ねるより先に、小さくロックが解除された音が聞こえ…扉は静かに開いた。
なんだ、開けられるのか…と、驚いたが右穂うすいに一応訊ねてみる。

「それ…鍵、か?」
「あぁ、これでございますか?これは、倉世くらせ様の身分証・・・です」

そう答えながら、右穂うすいは手に持つ身分証を俺に向けて見せた。
…それは確かに、俺の顔写真の入った身分証だった。

あぁ、そうか。
身分証があれば、開けられるんだよな……
そもそも、俺はこの飛行艇の責任者だし…それがあれば、扉くらい開けられるよな。
いやいや…その前に――何故、俺じゃなくて右穂うすいが俺の身分証を持っているのか、を問い詰めるべきか?

色々と右穂うすいに訊きたかったが、とりあえず、今はやめておいた。
どのみち、記憶がない状態の俺に…問い詰める資格はないしな……

――…記憶が戻った後で、右穂うすいにその件について確認しておこう。


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