3話:憎しみと悲しみと裏切りと…

(…まさか、こういう行動をとるとはな)


黒髪の男は暗い…虚ろな表情の淑女を、ラウンジの端にある4人掛けソファーに座らせてゆっくりと横たえる。


(ああいう発表をすれば、事情を知らない者達や今の状態の織葉おりはは信じてしまうに決まっているだろうに……)


ため息をついた黒髪の男・杜詠とよみは横たわる淑女・織葉おりはの細い腕に注射を刺した。

小さく呻く声をあげる織葉おりはだったが、ゆっくりまぶたを閉じると小さく寝息をたてはじめる。


(――しかし…)


織葉おりはが眠った事を確認した杜詠とよみが、視線を倉世くらせ七弥ななやの方へと向けた。


(もう、狂いはじめた歯車を…この憎しみを止める事は、できないだろう…な)




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