6話:王女と従者と変わり者と…
クリストフの部屋である『5号室』に向かうキリルとユハは、『4号室』を少し過ぎた辺りで立ち止まった。
何で立ち止まったのか、不思議そうに首をかしげたユハにキリルが口を開く。
「…本当のところはどうなんだ?ユハ、お前の気配は少し前からしていたのでわかっているんだぞ」
「さすが水のエルフの血を引いてるだけあるな、僕の"水の気配"に気づくとは。いや、本当に『ショックだったぁ~』しか聞いてないって!」
首を激しく横にふるユハに、キリルは小さく笑った。
「なら、いい…しかし、そう聞こえていたとはな。それより、お前がいて助かった…あのままだと、私はヴェンデルとテルエルから解放されなかった」
「ふーん…もしかして、ケンカでもしてたとか?若者をいじめちゃいけないだろ~」
キリルが怒っていないとわかったユハは、内心安堵するとからかうように言う。
「ケンカをしていたわけではないが…」と呟いたキリルが再び歩きはじめ、『5号室』の扉の前で足を止めた。
少し遅れてユハも扉の前に立つと、キリルは囁く。
「『ショックだったぁ~』という話を、クリストフ様の前でしてくれるなよ」
「わ、わかってるって…」
その件に一言でも触れればキリルに呪われそうだしな、と考えて苦笑するユハを横目にキリルは扉をノックした。
部屋の中から返事が聞こえてきたのを確認し、扉を開けて頭を下げる。
「客人をお連れしました、クリストフ様」
「…ぇ、客?誰が――」
首をかしげるクリストフは、キリルが連れてきたという客を見て親しげな笑みを浮かべた。
「あぁ…久しぶりです、ユハ。元気でしたか…というか、よく僕の部屋がわかりましたね?」
「久しぶりー!元気だけど…うーんと、お前の姉ちゃんから聞いたんだ――手紙で」
片手を軽く上げて挨拶したユハは、苦笑する。
――ちなみに、手紙には『クリストフの部屋、破壊されたから旧棟に変わったよ』という内容だったらしい。
「な、なるほど…そういう事でしたか。じゃあ、姉さんにはもう会ったんですか?」
「んー…今日は、クリストフとエトレカに会いに来ただけだし。というか、お前の姉ちゃんに会う方が大変だから…今度にした」
親しい友人を部屋に招き入れたクリストフはユハの言葉に何度か頷いた後、本題を訊ねた。
「まぁ、そうでしょうけど…それより、ユハ。今日は、どうしてここに…?」
「あー、そうだ…アルネが狂ったって聞いてさ。死んだ伯父の代わりに、約束 を果たそうと思ってね…少しでも力になれればって」
紐に通している金色の小さな指輪を、ユハは掲げるように見せる。
ようやく見つけられたのか…と安堵したクリストフは、すぐにある事を思いだし慌てて口を開いた。
「一体、何処にそれが――でなくて、実は僕の部下達が向かってるんですよ…あの屋敷へ」
「何処って、お前の兄ちゃんが遺跡で…って、もしかしてセネトっていう赤っぽい人間の事か?下で会ったし」
首をかしげつつ訊ねるユハに、クリストフは小さく頷いて依頼内容について伝える。
依頼内容を聞いたユハは、小さく息を吐いて眉をひそめた。
「そっか、エリシカ・メニートの…ね。それは、セネトってやつに任せればいいんだろ?アルネの方は、何とかするよ」
「お願いします…あぁ、セネト達はもう行ってるかもしれないので…向こうで合流して説明を」
クリストフの言葉に、指でオッケーサインをだしたユハは駆け足でクリストフの部屋を後にする。
ユハを見送ったクリストフに、キリルが囁くように疑問を口にした。
「…ユハは、もしかすると本体に戻って屋敷へ向かうのでは…?」
人の姿で――徒歩で向かうより、本来の竜の姿で向かった方が早いと考えるのではないか…と思い至ったらしい。
「まぁ、飛んで行った方が早いでしょうが…あ――」
そこまで言うと、クリストフは動きを止めた。
竜の国ならば本来の姿に戻っても騒ぎにならないだろうが、ここは他種族の者もいるとはいえ人の国である。
そこに突然、水竜がどーんと現れ上空を飛べば騒ぎになる可能性が高い……
「いやいやいや…ユハ!?ちょっと待って!キリル、ユハを止めてください!!」
「…御意」
慌てるクリストフの言葉に、キリルは静かに腰を折ると小さな風だけを残して姿を消した。
数秒して外からユハらしき悲鳴が聞こえ、安堵したクリストフは足早にそこへ向かうのだった……
***
何で立ち止まったのか、不思議そうに首をかしげたユハにキリルが口を開く。
「…本当のところはどうなんだ?ユハ、お前の気配は少し前からしていたのでわかっているんだぞ」
「さすが水のエルフの血を引いてるだけあるな、僕の"水の気配"に気づくとは。いや、本当に『ショックだったぁ~』しか聞いてないって!」
首を激しく横にふるユハに、キリルは小さく笑った。
「なら、いい…しかし、そう聞こえていたとはな。それより、お前がいて助かった…あのままだと、私はヴェンデルとテルエルから解放されなかった」
「ふーん…もしかして、ケンカでもしてたとか?若者をいじめちゃいけないだろ~」
キリルが怒っていないとわかったユハは、内心安堵するとからかうように言う。
「ケンカをしていたわけではないが…」と呟いたキリルが再び歩きはじめ、『5号室』の扉の前で足を止めた。
少し遅れてユハも扉の前に立つと、キリルは囁く。
「『ショックだったぁ~』という話を、クリストフ様の前でしてくれるなよ」
「わ、わかってるって…」
その件に一言でも触れればキリルに呪われそうだしな、と考えて苦笑するユハを横目にキリルは扉をノックした。
部屋の中から返事が聞こえてきたのを確認し、扉を開けて頭を下げる。
「客人をお連れしました、クリストフ様」
「…ぇ、客?誰が――」
首をかしげるクリストフは、キリルが連れてきたという客を見て親しげな笑みを浮かべた。
「あぁ…久しぶりです、ユハ。元気でしたか…というか、よく僕の部屋がわかりましたね?」
「久しぶりー!元気だけど…うーんと、お前の姉ちゃんから聞いたんだ――手紙で」
片手を軽く上げて挨拶したユハは、苦笑する。
――ちなみに、手紙には『クリストフの部屋、破壊されたから旧棟に変わったよ』という内容だったらしい。
「な、なるほど…そういう事でしたか。じゃあ、姉さんにはもう会ったんですか?」
「んー…今日は、クリストフとエトレカに会いに来ただけだし。というか、お前の姉ちゃんに会う方が大変だから…今度にした」
親しい友人を部屋に招き入れたクリストフはユハの言葉に何度か頷いた後、本題を訊ねた。
「まぁ、そうでしょうけど…それより、ユハ。今日は、どうしてここに…?」
「あー、そうだ…アルネが狂ったって聞いてさ。死んだ伯父の代わりに、
紐に通している金色の小さな指輪を、ユハは掲げるように見せる。
ようやく見つけられたのか…と安堵したクリストフは、すぐにある事を思いだし慌てて口を開いた。
「一体、何処にそれが――でなくて、実は僕の部下達が向かってるんですよ…あの屋敷へ」
「何処って、お前の兄ちゃんが遺跡で…って、もしかしてセネトっていう赤っぽい人間の事か?下で会ったし」
首をかしげつつ訊ねるユハに、クリストフは小さく頷いて依頼内容について伝える。
依頼内容を聞いたユハは、小さく息を吐いて眉をひそめた。
「そっか、エリシカ・メニートの…ね。それは、セネトってやつに任せればいいんだろ?アルネの方は、何とかするよ」
「お願いします…あぁ、セネト達はもう行ってるかもしれないので…向こうで合流して説明を」
クリストフの言葉に、指でオッケーサインをだしたユハは駆け足でクリストフの部屋を後にする。
ユハを見送ったクリストフに、キリルが囁くように疑問を口にした。
「…ユハは、もしかすると本体に戻って屋敷へ向かうのでは…?」
人の姿で――徒歩で向かうより、本来の竜の姿で向かった方が早いと考えるのではないか…と思い至ったらしい。
「まぁ、飛んで行った方が早いでしょうが…あ――」
そこまで言うと、クリストフは動きを止めた。
竜の国ならば本来の姿に戻っても騒ぎにならないだろうが、ここは他種族の者もいるとはいえ人の国である。
そこに突然、水竜がどーんと現れ上空を飛べば騒ぎになる可能性が高い……
「いやいやいや…ユハ!?ちょっと待って!キリル、ユハを止めてください!!」
「…御意」
慌てるクリストフの言葉に、キリルは静かに腰を折ると小さな風だけを残して姿を消した。
数秒して外からユハらしき悲鳴が聞こえ、安堵したクリストフは足早にそこへ向かうのだった……
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