6話:王女と従者と変わり者と…
あちらこちらを探して、気づけば30分が経ち…ルカリオは何かを思い出したようにセネトに訊ねる。
「こういうのは、旅とまで言わないのでしょうが…そういえば、何かあったんですか?悲鳴と大きな音がしてましたけど…」
「いや…それは、その――こ、転んだんだ!んな事より、お前の上司って本当にダンフォースなのか?」
目を泳がせて真実を隠したセネトは、話題を変えようとルカリオに質問した。
話題を変えられた事には触れず、ルカリオが頷いて答える。
「あー…はい、でも便宜上と言いますか――あの人、何かしたんですか?」
「うー、まー…したと言うか、間接的と言うか…」
フレネ村であった事をかいつまんで話すと、ルカリオは何度か頷いてから口を開いた。
「そうですかー…ダンフォースさん、セイドロード家当主の犬みたいなところがある人ですからねー」
姫さまもダンフォースさんにそれを聞きたいと言ってましたから、とルカリオは苦笑する。
「何で…そういえば、キリルが言ってたな…ルフェリス達が、テセリアハイト王家ゆかりの者だって。でも、それは公表されてないから…ベアトリーチェ様であっても知らないはずだよな、ルカリオ?」
第一王女であるベアトリーチェはセネトと同じ年齢なので、ルフェリス達兄妹がフレネ村に引き取られた経緯 は知らないはずである。
それに、フレネ村の事件は『フレネ村で生命を落とした者達の怨念により紡がれた呪いで滅んだ』という事になっているのだ――もちろん、ルフェリス達の名も公表されている。
しかし、彼らがテセリアハイト王家ゆかりの者だとは伏せられているはずだ。
それを隠すよう指示したのは、おそらくダンフォースなのだろう……
セネトでさえキリルから聞かされなければわからなかった情報を、どうやって王女は知ったのかが疑問だったのだ。
…だが、ルカリオはきょとんとしたまま何でもないように答える。
「あー、それはですねー…私が、ついつい 姫さまに言ってしまったんですよねー。色々と…はい」
「…お前が教えたんかいっ!!」
衝撃的な言葉に、思わずセネトがルカリオの胸を手の甲でたたくと彼は頭をかきながら笑った。
「キャー!!」
ルカリオの笑い声と被せるように、絹を裂くような少女の悲鳴が聞こえてくる。
驚いた二人は顔を見合わせ、悲鳴が聞こえてきた場所へと向かった。
――その道中、ルカリオは言う。
「間違いなく、姫さまの声です!」
「本当か!なら、尚の事…急ぐぞ!」
王女の身に何かあっては、本当に色々問題となってしまう…と、大慌てで現場に駆けつけた。
――そこには、酔っぱらった厳つい男数人に囲まれている淡い茶色の長い髪を緩く結った…緑を基調としたドレスを身に着けた少女が困惑した様子で立っていた。
それを見たルカリオは、心配そうに少女に声をかける。
「ご無事でしたか!今、このルカリオが助けに参ります…セネトもお力添えをお願いします、はい」
「了解――しっかし、この酔っぱらい達は昼間から何やってんだか…」
ルカリオの頼みに頷いたセネトが剣を手に構えると、酔っぱらい達は絡む相手を王女からセネトとルカリオに変えた。
狙いが変わった事に内心安堵したセネトとルカリオは、同時に攻撃を仕掛ける。
ルカリオが魔法で彼らを拘束し、それを逃れた者達は武器を手にセネトを襲おうとした――が、セネトは剣で受け流して蹴り倒した。
足取りが覚束無い酔っぱらい達だったので、短時間で全員伸びてしまったのだ。
「姫さま、もう大丈夫で――って、あれ?」
「ぁ、ありがとうございます…いきなり絡まれてしまって――それより、あの…私の従者がおかしな事をしませんでしたか?」
心配そうに駆け寄ったルカリオを押しのけ、王女はセネトの元に駆け寄る。
ルカリオの手は宙をかいたまま、泣き顔だけを王女に向けていた。
その様子を見て、思わずルカリオに同情したセネトは彼を指しながら王女に声をかける。
「いや、無事ならいいんだけど…えと、ルカリオは何も変じゃなかったというか――今の状況が少し可哀想というか。おれは特に何もしてないし、ほぼルカリオの頑張りな気もするけど…」
「そうですか…それよりも、少々よろしいですか?」
セネトの指す方向を一瞬見た王女であったが、すぐに視線を戻すと不思議そうに首をかしげて続けた。
「その剣…それは、我がテセリアハイト王家の紋章ですわよね?一体どこで…」
「剣…?あー、これは――」
王女が自分の持つ剣を見ている事に気づいたセネトは、フレネ村の事件でルフェリスに剣を託された経緯を簡単に説明する。
それを信じてもらえるかわからなかったが、王女の目を真っ直ぐに見ると王女も真っ直ぐにセネトの顔を見つめていた。
2人の紫色の瞳が合うと、王女はにっこりと微笑んだ。
「そうでしたか…きっと、貴方にならそれを託せると彼らは考えたのでしょうね」
微笑む王女に、セネトは慌てて目を逸らして訊ねる。
「あの村での事や…ルフェリス達を助けられなかったおれ達の事を責めたりしないのか…?」
「責める…ですか?彼らは罪を犯しました…決して、許されぬ罪ゆえに裁かれたのです。生き残った村人達も、アルノタウム公国で裁かれるそうですから…それはありません。でも、責めるとすれば…彼らの真実――それらを公表しなかった我が国と協会にですわ」
ルフェリス達の身に起こった事について隠しているのが許せないのだ、と王女は話す。
「だから、ルカリオの上司であるダンフォースに会いに来たんだったよな…ルカリオ?」
未だ固まったままのルカリオに、セネトが声をかけると我に返った彼は何度か頷いて答えた。
「だよな…ところで、王女様。何で、こんな所に…酒に酔った連中に絡まれていたんだ?そもそも、何で迷子に?」
首をかしげたセネトが王女に訊ねると、王女は顎に手をあてて答える。
「それは…私、なかなか外を見て回る機会がないもので――つい、気になった方向に行ってみたら…」
「あぁ、やはり…ですか、姫さま」
納得したように呟くルカリオに、セネトはなんと言っていいのかわからず苦笑するしかなかった。
***
「こういうのは、旅とまで言わないのでしょうが…そういえば、何かあったんですか?悲鳴と大きな音がしてましたけど…」
「いや…それは、その――こ、転んだんだ!んな事より、お前の上司って本当にダンフォースなのか?」
目を泳がせて真実を隠したセネトは、話題を変えようとルカリオに質問した。
話題を変えられた事には触れず、ルカリオが頷いて答える。
「あー…はい、でも便宜上と言いますか――あの人、何かしたんですか?」
「うー、まー…したと言うか、間接的と言うか…」
フレネ村であった事をかいつまんで話すと、ルカリオは何度か頷いてから口を開いた。
「そうですかー…ダンフォースさん、セイドロード家当主の犬みたいなところがある人ですからねー」
姫さまもダンフォースさんにそれを聞きたいと言ってましたから、とルカリオは苦笑する。
「何で…そういえば、キリルが言ってたな…ルフェリス達が、テセリアハイト王家ゆかりの者だって。でも、それは公表されてないから…ベアトリーチェ様であっても知らないはずだよな、ルカリオ?」
第一王女であるベアトリーチェはセネトと同じ年齢なので、ルフェリス達兄妹がフレネ村に引き取られた
それに、フレネ村の事件は『フレネ村で生命を落とした者達の怨念により紡がれた呪いで滅んだ』という事になっているのだ――もちろん、ルフェリス達の名も公表されている。
しかし、彼らがテセリアハイト王家ゆかりの者だとは伏せられているはずだ。
それを隠すよう指示したのは、おそらくダンフォースなのだろう……
セネトでさえキリルから聞かされなければわからなかった情報を、どうやって王女は知ったのかが疑問だったのだ。
…だが、ルカリオはきょとんとしたまま何でもないように答える。
「あー、それはですねー…私が、
「…お前が教えたんかいっ!!」
衝撃的な言葉に、思わずセネトがルカリオの胸を手の甲でたたくと彼は頭をかきながら笑った。
「キャー!!」
ルカリオの笑い声と被せるように、絹を裂くような少女の悲鳴が聞こえてくる。
驚いた二人は顔を見合わせ、悲鳴が聞こえてきた場所へと向かった。
――その道中、ルカリオは言う。
「間違いなく、姫さまの声です!」
「本当か!なら、尚の事…急ぐぞ!」
王女の身に何かあっては、本当に色々問題となってしまう…と、大慌てで現場に駆けつけた。
――そこには、酔っぱらった厳つい男数人に囲まれている淡い茶色の長い髪を緩く結った…緑を基調としたドレスを身に着けた少女が困惑した様子で立っていた。
それを見たルカリオは、心配そうに少女に声をかける。
「ご無事でしたか!今、このルカリオが助けに参ります…セネトもお力添えをお願いします、はい」
「了解――しっかし、この酔っぱらい達は昼間から何やってんだか…」
ルカリオの頼みに頷いたセネトが剣を手に構えると、酔っぱらい達は絡む相手を王女からセネトとルカリオに変えた。
狙いが変わった事に内心安堵したセネトとルカリオは、同時に攻撃を仕掛ける。
ルカリオが魔法で彼らを拘束し、それを逃れた者達は武器を手にセネトを襲おうとした――が、セネトは剣で受け流して蹴り倒した。
足取りが覚束無い酔っぱらい達だったので、短時間で全員伸びてしまったのだ。
「姫さま、もう大丈夫で――って、あれ?」
「ぁ、ありがとうございます…いきなり絡まれてしまって――それより、あの…私の従者がおかしな事をしませんでしたか?」
心配そうに駆け寄ったルカリオを押しのけ、王女はセネトの元に駆け寄る。
ルカリオの手は宙をかいたまま、泣き顔だけを王女に向けていた。
その様子を見て、思わずルカリオに同情したセネトは彼を指しながら王女に声をかける。
「いや、無事ならいいんだけど…えと、ルカリオは何も変じゃなかったというか――今の状況が少し可哀想というか。おれは特に何もしてないし、ほぼルカリオの頑張りな気もするけど…」
「そうですか…それよりも、少々よろしいですか?」
セネトの指す方向を一瞬見た王女であったが、すぐに視線を戻すと不思議そうに首をかしげて続けた。
「その剣…それは、我がテセリアハイト王家の紋章ですわよね?一体どこで…」
「剣…?あー、これは――」
王女が自分の持つ剣を見ている事に気づいたセネトは、フレネ村の事件でルフェリスに剣を託された経緯を簡単に説明する。
それを信じてもらえるかわからなかったが、王女の目を真っ直ぐに見ると王女も真っ直ぐにセネトの顔を見つめていた。
2人の紫色の瞳が合うと、王女はにっこりと微笑んだ。
「そうでしたか…きっと、貴方にならそれを託せると彼らは考えたのでしょうね」
微笑む王女に、セネトは慌てて目を逸らして訊ねる。
「あの村での事や…ルフェリス達を助けられなかったおれ達の事を責めたりしないのか…?」
「責める…ですか?彼らは罪を犯しました…決して、許されぬ罪ゆえに裁かれたのです。生き残った村人達も、アルノタウム公国で裁かれるそうですから…それはありません。でも、責めるとすれば…彼らの真実――それらを公表しなかった我が国と協会にですわ」
ルフェリス達の身に起こった事について隠しているのが許せないのだ、と王女は話す。
「だから、ルカリオの上司であるダンフォースに会いに来たんだったよな…ルカリオ?」
未だ固まったままのルカリオに、セネトが声をかけると我に返った彼は何度か頷いて答えた。
「だよな…ところで、王女様。何で、こんな所に…酒に酔った連中に絡まれていたんだ?そもそも、何で迷子に?」
首をかしげたセネトが王女に訊ねると、王女は顎に手をあてて答える。
「それは…私、なかなか外を見て回る機会がないもので――つい、気になった方向に行ってみたら…」
「あぁ、やはり…ですか、姫さま」
納得したように呟くルカリオに、セネトはなんと言っていいのかわからず苦笑するしかなかった。
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