6話:王女と従者と変わり者と…

話を聞き終えたセネトは、納得したように頷きかけて止める。
――それは、キリルの言葉の最後の部分が引っかかったからなのだが。

「すっごくわかりやすい話だったが、何で…おれをトラブルメーカー・・・・・・・と呼ぶのか、気になって……待てよ、もしかしてお前か!?協会中に広めてるのは!?」

そういえば、ヴァリスが言っていた「身内は売れない」という言葉――目の前にいるキリルもエレディアの者だ…もしかして、という思いでセネトは訊ねる。

「そのような些細な事、どうでもよかろう…ところで、トラブルメーカー1号。お前が持つ、その剣…それは、ルフェリス・アードレアが持っていたものだろう?」

だから、どうした…という感じで答えたキリルは、セネトの腰にあるルフェリスの剣へ目を向けた。

「些細な…って、やっぱりそうか!!って、そーだけど?」

一蹴されたセネトは指差し怒鳴る、が…急にルフェリスから託された剣の話題をふられ、思わず頷いて答えるとキリルは口を開く。

「その剣――鍔に独特の装飾が施されているだろう?それは、知ってるとは思うがテセリアハイト王家の紋章・・・・・・・・・・・・だ」


ルフェリス、ヴァリス、ミリスの兄妹はテセリアハイト王家ゆかりの者で、縁あるリグゼノ家やエレディアとアードレアの分家が新たな名を与えて預かる事となったそうだ。

兄妹の存在は、3つの家で内密にしておく約束であったのだが……


「どういう訳かリグゼノ家がテセリアハイトのある貴族に密告した事で露見し、その貴族がセイドロード家当主のクソじじいに――」
「キリル…本音が漏れかけてるぞ。だが、まぁ…そういう事になる。で、ルフェリスの使った夢術については、だが…」

イアンがキリルの言葉を遮ると、困った表情でセネトに目を向けた。

「…ん?どうしたんだよ…」

何も答えないイアンにセネトは不思議そうに首をかしげていると、イアンの代わりにキリルが無表情に答える。

「それについては、キール・メイリークが詳しいのでな…今、我が主とイオンが迎えに行っている」
「ふーん…なら、待っている間にいくつかいいか?」

自分の持つ剣に触れながらセネトがキリルに訊ねると、彼は「かまわないが?」と答えたのでここぞとばかりに質問した。


ルフェリス達の生命を狙ったテセリアハイトの貴族の目的や、セイドロード家当主との関係……

クリストフの持つ短剣もルフェリスの剣と同じ出自であるのか、ヴェンデルはキリルの親戚であるのか――

そして、キリルはセイドロード家当主が嫌いなのか…最後にイオンが誰なのか、を。


「いくつか…と言いながら、一気に訊ねてくるのだな。まぁ、いい…順に答えよう」

キリルは小さく息をついて、セネトの質問にひとつずつ答えはじめた。


その貴族の目的は、おそらく継承に関する事であろうが…証拠がないので、糾弾できないだろう事。

セイドロード家の現当主と、その貴族は何か密約があって手を組んだのだろう事。
キリルは言う――あのクソじじいは外面だけは良いからな、と。

クリストフが持つヴァリスの短剣はエレディア家が用意したもので、ルフェリスの剣とは出自が異なる事。

ヴェンデルは、キリルの従甥であるらしい……


そこまでを語ったキリルは喉を潤す為にお茶を飲むと、ゆっくりと言葉を続けた。

「…私は、あのクソじじいが大嫌いだ。いつかこの手で暗殺してやろうと思う程にな…あのクソじじいの最期の時、耳元で囁いて――」
「おい、キリル…やめろ、かなり私怨が入ってきているぞ?」

憎しみがこもったキリルの様子にセネトが若干引きはじめていると、苦笑したイアンがそれを止める。
イアンの声で我に返ったらしいキリルはゆっくり深呼吸をすると、何事もなかったかのように次の質問に答えた。

「ごほん…イオンの事、だったな。イオンはあの方に仕えている、恐ろしいエルフ・・・・・・・だ」
「恐ろしいエルフ、か…本人が聞いていたら怒りかねない紹介の仕方だな」

お茶を飲みながら、イアンは小さく呟く…恐ろしいエルフ・・・・・・・を否定しなかったのは、イアン自身何度も恐ろしい経験をしたからなのだが――


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