4話:幼い邪悪[中編]
そして、クレリアの言ったある事 が気になったセネトは、首をかしげながら訊ねる。
「半透明な女の子って…もしかして、おれらくらいの年の…ショートボブの茶髪で、ワンピースを着た子か?」
「うーん…確かに、あたし達くらいの年頃かもしれないけど――ピンクのロングで、上下ツーピースの女の子だったから…あんたの言ってる子じゃなかったわ」
自分を襲ってきた少女について思いだしながら、クレリアは詳細を語った。
それを聞いたセネトは、不思議そうに首をかしげる。
(あれ…じゃあ、もう一人いるって事か?あの子と同じような夢魔が――)
「…ひとつ聞くが、あの情報屋を呼んだのはお前か?」
にっこりと微笑んでいるコルネリオに、イアンは小さく息をついて訊ねた。
とぼけたように肩をすくめたコルネリオが、目の動きだけで窓の外――アーヴィル村の方向に向けて口元に意地の悪い笑みを浮かべる。
それだけで何かを察したクリストフが目くばせでイアンに異変を知らせると、意味に気づき頷いた彼はセネトとクレリアに声をかけた。
「さっさと戻るぞ!ナルヴァは何もできないだろうが、ヴァリスだけでは対処できない何かが起こっているようだ。ウィルネス殿がさらに腹を立てるような事が、な」
「何となくだが…それって、腹を立てるどころの騒ぎじゃねーのでは?」
遠い目をさせたセネトは小さく呟いた…それは、ウィルネスの激怒している姿が容易に想像できてしまったからだ。
慌てたイアンとクリストフ…そして、何が何だかわかっていないクレリアもアーヴィル村へ戻る為に走りだした。
――気づけば、この場に残されたのはセネトとコルネリオ、グラハムの3人だけだ。
「あれ…君も行かないの?もう、ここに用はないはずだよね…もしかして、ハミルトが帰ってくるまで待つつもりかな?」
さして興味なさそうに言ったコルネリオは、座り込んだままのグラハムの頭を優しく撫でている。
「あの子が帰ってくるのは、早くても3日後…だよ。そんなに待ってたら、君が困る事になると思うけど…?」
「ハミルトに用はあるけど、今日はそれで来たわけじゃないからな…それよりも、今回の事件を起こしたのはお前の友人なんだろう?何で止めなかったんだ?」
首を横にふったセネトが疑問を訊ねると、コルネリオは苦笑しながら答えた。
「そうだねぇ…友人である彼の気持ちを理解できたから、ぼくはあえて止めなかった。まさか、ぼくの領地であるアーヴィルに舞台が移るとは思ってなかったけどね」
「ぼくの領地、って…アーヴィル村は、お前のものじゃないだろう!」
落ち着いているが、怒りを含んだ声でセネトは指摘する。
そんな彼の様子に、コルネリオは口元だけに笑みを浮かべているが氷のように冷ややかな目を向けた。
「ぼくのものだよ…君が生まれるずーっと昔から、ね。君は、大切なものを失った事はあるのかな…?ぼくらはあるよ――君の先祖に、とても大切なものを奪われたままだからさ。だから、彼の気持ちが理解できたんだよ…」
「………」
何も答えられず、コルネリオを見ていたセネトは考える。
コルネリオの表情は、自分の領地が荒らされる事への怒りはなく…どこか愉しんでいるかのように見えた。
これ以上は何も訊きだせないだろう、と判断したセネトは踵を返して…先にアーヴィル村へ向かった3人を追おうとした彼の背中に、コルネリオが声をかけた。
「ふふふ、彼ら と…あの子 に、よろしく言っておいてよ」
振り返ろうとしたセネトの耳に、指を鳴らす音が聞こえたかと思った瞬間――視界がぐるりと回転し、意識は闇に閉ざされた……
***
「半透明な女の子って…もしかして、おれらくらいの年の…ショートボブの茶髪で、ワンピースを着た子か?」
「うーん…確かに、あたし達くらいの年頃かもしれないけど――ピンクのロングで、上下ツーピースの女の子だったから…あんたの言ってる子じゃなかったわ」
自分を襲ってきた少女について思いだしながら、クレリアは詳細を語った。
それを聞いたセネトは、不思議そうに首をかしげる。
(あれ…じゃあ、もう一人いるって事か?あの子と同じような夢魔が――)
「…ひとつ聞くが、あの情報屋を呼んだのはお前か?」
にっこりと微笑んでいるコルネリオに、イアンは小さく息をついて訊ねた。
とぼけたように肩をすくめたコルネリオが、目の動きだけで窓の外――アーヴィル村の方向に向けて口元に意地の悪い笑みを浮かべる。
それだけで何かを察したクリストフが目くばせでイアンに異変を知らせると、意味に気づき頷いた彼はセネトとクレリアに声をかけた。
「さっさと戻るぞ!ナルヴァは何もできないだろうが、ヴァリスだけでは対処できない何かが起こっているようだ。ウィルネス殿がさらに腹を立てるような事が、な」
「何となくだが…それって、腹を立てるどころの騒ぎじゃねーのでは?」
遠い目をさせたセネトは小さく呟いた…それは、ウィルネスの激怒している姿が容易に想像できてしまったからだ。
慌てたイアンとクリストフ…そして、何が何だかわかっていないクレリアもアーヴィル村へ戻る為に走りだした。
――気づけば、この場に残されたのはセネトとコルネリオ、グラハムの3人だけだ。
「あれ…君も行かないの?もう、ここに用はないはずだよね…もしかして、ハミルトが帰ってくるまで待つつもりかな?」
さして興味なさそうに言ったコルネリオは、座り込んだままのグラハムの頭を優しく撫でている。
「あの子が帰ってくるのは、早くても3日後…だよ。そんなに待ってたら、君が困る事になると思うけど…?」
「ハミルトに用はあるけど、今日はそれで来たわけじゃないからな…それよりも、今回の事件を起こしたのはお前の友人なんだろう?何で止めなかったんだ?」
首を横にふったセネトが疑問を訊ねると、コルネリオは苦笑しながら答えた。
「そうだねぇ…友人である彼の気持ちを理解できたから、ぼくはあえて止めなかった。まさか、ぼくの領地であるアーヴィルに舞台が移るとは思ってなかったけどね」
「ぼくの領地、って…アーヴィル村は、お前のものじゃないだろう!」
落ち着いているが、怒りを含んだ声でセネトは指摘する。
そんな彼の様子に、コルネリオは口元だけに笑みを浮かべているが氷のように冷ややかな目を向けた。
「ぼくのものだよ…君が生まれるずーっと昔から、ね。君は、大切なものを失った事はあるのかな…?ぼくらはあるよ――君の先祖に、とても大切なものを奪われたままだからさ。だから、彼の気持ちが理解できたんだよ…」
「………」
何も答えられず、コルネリオを見ていたセネトは考える。
コルネリオの表情は、自分の領地が荒らされる事への怒りはなく…どこか愉しんでいるかのように見えた。
これ以上は何も訊きだせないだろう、と判断したセネトは踵を返して…先にアーヴィル村へ向かった3人を追おうとした彼の背中に、コルネリオが声をかけた。
「ふふふ、
振り返ろうとしたセネトの耳に、指を鳴らす音が聞こえたかと思った瞬間――視界がぐるりと回転し、意識は闇に閉ざされた……
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