4話:幼い邪悪[中編]
「…とりあえず、扉も開いたし」
「そこは、開いた ではなく…壊した に訂正しろ」
満足げなセネトにイアンが呆れたように訂正すると、頬を膨らませた彼は愚痴るように呟いた。
「どっちでもいいだろ…とりあえず、行けるようにはなったんだしよ」
「さすがは"破壊魔"、もはや才能なんでしょうけど。本当にすごいですよね…きっと、ディトラウト殿は泣いてますよ」
先ほどまで調べていた2つの塊に、近くにあった布…おそらくは、テーブルクロスなのだろうが――それをかけたクリストフが感心したように言う。
クリストフの言葉に、セネトはむっとしながら呟いた。
「だから、おれは"破壊魔"じゃねーし。自分なんか、犬並みの嗅覚してるくせに…」
セネトが破壊した扉の向こうには短いけど廊下があり…目の前とその右隣、廊下の突き当りに扉が存在している。
――その、どれもに血でべっとりと汚れていた。
「この家には、何人暮らしていたんだ…?」
あまりの酷い状況に、セネトは愕然と扉についた血を見つめて言った。
同じ事を考えたのだろうクリストフとイアンも、血で汚れた扉に視線を向けているようだ。
「…とりあえず、誰か生き残っている可能性もあります。扉は3つ――僕は一番奥の部屋に、イアンは目の前の…セネトはその右隣の部屋を、お願いできますか?」
クリストフの提案に頷いたイアンは、目の前にある扉を開けて入っていった。
それを見たセネトとクリストフも、それぞれ担当する扉を開けて生存者を探しはじめる事となった。
セネトが開けた扉の先には、また廊下が続いており…その先にも、またもや扉が3つあるようだった。
「な…なんで、また扉かよ。しかも、また3つ……」
とりあえず、少し悩んだセネトは入ってすぐ右隣りにある扉を開ける…と、そこは物置のようだった。
たくさんの荷物と一緒にあったもの ――それを見つけたセネトは、何も言わずにゆっくりと扉を閉める。
(び、びっくりした…ここにいる3人は、斬り殺されたわけじゃないんだな)
セネトが物置で見つけたのは、おそらく村長宅で働く使用人達だろう…彼女らは身を守る為にここへ逃げ込んだようだ。
しかし、見つかり――何らかの方法で殺害されたのだろう。
気を取り直したセネトは、次に物置部屋の斜め前にある扉を開けてみた。
そこは、どうやら浴室と御手洗いのようで…ここには、血痕がついているのだが誰もいなかった――見えるところには、だが。
(扉が内開きだから気づかなかったけど、いたんだな…ここにも)
ゆっくりと扉を閉めたセネトは、大きくため息をついた。
扉の陰となるそこに、2人の人間が折り重なるように倒れているようだった…おそらく、こちらは斬られての失血死だろう。
最後に残った扉――こちらは廊下の突き当りにあり、セネトは祈るような気持ちで扉を開けた。
そこは誰かの私室のようで、ここもずいぶん荒らされており…いたるところに血痕がついている状態である。
「…頼むから、誰か無事でいてくれよ」
そう呟きながら荒らされた室内を捜索していると、ベットの陰から誰かの足が見えるのに気づいて慌てて近づいた。
「お、おい!大丈夫か…?」
倒れている人物を抱き起こし、呼吸を確認したセネトは安堵する。
その時、ちょうど窓から月明かりが入り…その人物が、セネトも見知っている人物だと気づいて声をかけた。
「…やっぱり、ヴァリスか。大丈夫か?動けるか…?」
「っ…セネト殿?どうして…?」
セネトの呼びかけに、ヴァリスは痛みを堪えながら目を開けると訊ねる。
簡単な状況説明をしたセネトはヴァリスに肩を貸しながら立ち上がると、イアンやクリストフが待っているであろう場所へ向かって歩きはじめた。
「そこは、
満足げなセネトにイアンが呆れたように訂正すると、頬を膨らませた彼は愚痴るように呟いた。
「どっちでもいいだろ…とりあえず、行けるようにはなったんだしよ」
「さすがは"破壊魔"、もはや才能なんでしょうけど。本当にすごいですよね…きっと、ディトラウト殿は泣いてますよ」
先ほどまで調べていた2つの塊に、近くにあった布…おそらくは、テーブルクロスなのだろうが――それをかけたクリストフが感心したように言う。
クリストフの言葉に、セネトはむっとしながら呟いた。
「だから、おれは"破壊魔"じゃねーし。自分なんか、犬並みの嗅覚してるくせに…」
セネトが破壊した扉の向こうには短いけど廊下があり…目の前とその右隣、廊下の突き当りに扉が存在している。
――その、どれもに血でべっとりと汚れていた。
「この家には、何人暮らしていたんだ…?」
あまりの酷い状況に、セネトは愕然と扉についた血を見つめて言った。
同じ事を考えたのだろうクリストフとイアンも、血で汚れた扉に視線を向けているようだ。
「…とりあえず、誰か生き残っている可能性もあります。扉は3つ――僕は一番奥の部屋に、イアンは目の前の…セネトはその右隣の部屋を、お願いできますか?」
クリストフの提案に頷いたイアンは、目の前にある扉を開けて入っていった。
それを見たセネトとクリストフも、それぞれ担当する扉を開けて生存者を探しはじめる事となった。
セネトが開けた扉の先には、また廊下が続いており…その先にも、またもや扉が3つあるようだった。
「な…なんで、また扉かよ。しかも、また3つ……」
とりあえず、少し悩んだセネトは入ってすぐ右隣りにある扉を開ける…と、そこは物置のようだった。
たくさんの荷物と
(び、びっくりした…ここにいる3人は、斬り殺されたわけじゃないんだな)
セネトが物置で見つけたのは、おそらく村長宅で働く使用人達だろう…彼女らは身を守る為にここへ逃げ込んだようだ。
しかし、見つかり――何らかの方法で殺害されたのだろう。
気を取り直したセネトは、次に物置部屋の斜め前にある扉を開けてみた。
そこは、どうやら浴室と御手洗いのようで…ここには、血痕がついているのだが誰もいなかった――見えるところには、だが。
(扉が内開きだから気づかなかったけど、いたんだな…ここにも)
ゆっくりと扉を閉めたセネトは、大きくため息をついた。
扉の陰となるそこに、2人の人間が折り重なるように倒れているようだった…おそらく、こちらは斬られての失血死だろう。
最後に残った扉――こちらは廊下の突き当りにあり、セネトは祈るような気持ちで扉を開けた。
そこは誰かの私室のようで、ここもずいぶん荒らされており…いたるところに血痕がついている状態である。
「…頼むから、誰か無事でいてくれよ」
そう呟きながら荒らされた室内を捜索していると、ベットの陰から誰かの足が見えるのに気づいて慌てて近づいた。
「お、おい!大丈夫か…?」
倒れている人物を抱き起こし、呼吸を確認したセネトは安堵する。
その時、ちょうど窓から月明かりが入り…その人物が、セネトも見知っている人物だと気づいて声をかけた。
「…やっぱり、ヴァリスか。大丈夫か?動けるか…?」
「っ…セネト殿?どうして…?」
セネトの呼びかけに、ヴァリスは痛みを堪えながら目を開けると訊ねる。
簡単な状況説明をしたセネトはヴァリスに肩を貸しながら立ち上がると、イアンやクリストフが待っているであろう場所へ向かって歩きはじめた。