3話:幼い邪悪[前編]

その後、クレリアとミカサ、イアンの3人は村に残り、セネトとクリストフ、ヴァリスの3人は"祈りの場"と呼ばれる場所へ――それぞれ分かれての別行動となった。

「はぁ…道中が長かったんだからさ。少しくらい休めたら、今以上に頑張れそうなんだがなー」

"祈りの場"へ向かう途中、セネトは独り愚痴るように呟いた。
ちなみに、セネトは道中…馬車の中で、ぐっすりと眠っていたのだが。

セネトの呟きに、クリストフが半ばうんざりとしたように言う。

「あれだけぐっすり眠っておいて…あぁ、そうだ。セネト…いっそ、このままここで永久に眠りますか?今なら手伝いますよ…?」
「…ネーメットのじいさんやキールにも、似たような事を言われたけどよ。それ、今の流行りか何かなのか?」

随分前――いや、先日もクリストフの言葉と似たような事を言われたセネトは首をかしげた。

本気にしろ、冗談にしろわからないが、自分に対する対応が危険なものに変わっているような……

そんな気がしているセネトに、クリストフが不思議そうな表情で答えた。

「流行り、というか…クエイトが初めに言っていたんですよ。それを話しているうちに、みんなが言うようになったんですよね」
「…あの兄は、何を言ってくれるんだ。というか、実の弟を何だと思って…」

この場にはいない兄への怒りを抑えながら、今度じっくり聞いてやろう…と心の中で決めたセネトがふとヴァリスの方に目を向ける。
そこには、笑いを押し殺しているヴァリスの姿があり、セネトの視線に気づいた彼は目に涙を溜めながら口を開いた。

「ふふっ…すみません、つい。ははは、でも…それだけ仲が良いということだと思うのですが」
「そうなのかな…うーん、そうかもしんないけど。そういえば、だけど…お前には兄弟いるのか?」

首をかしげたセネトは話題を変えようと、ヴァリスに訊ねた。
その瞬間、動きを止めたヴァリスが一瞬だけ悲しそうな表情を浮かべた後すぐに微笑みに変える。

「え…っと、いますよ。引き取られた家にはいませんでしたが、血の繋がった兄と妹が――」

ヴァリスの話によると…ひとつ上の兄とひとつ下の妹がおり、それぞれ別の家に引き取られたのだという。
一緒には暮らせていないが、たまに会っては他愛ない話をしているそうだ。

「――その時、兄が妹にとんでもない事を教えていまして…だから、あなたの気持ちもわかりますよ」
「そうか…って、そういうわかり方はあまり嬉しくないかも」

あまり触れてはいけない話題だったか…と密かに後悔していたセネトだったが、ヴァリスがまた笑いながら答えたのでひと安心したのだった。


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