3話:幼い邪悪[前編]
先に外に出ていたクレリアとミカサは、出入口前でセネト達3人が出てくるのを待っていた。
複雑そうな面持ちで、無言で考え込んでいるクレリアを見たミカサが心配そうに声をかける。
「…まだ納得できてないのなら、わたしからクリストフ様に言っておくよ?」
友として…そして、事情を知っているだけにクレリアの事が心配だった。
ミカサの気持ちに気づいたクレリアは、背筋を伸ばすと自分の頬を2回たたく。
そして、ミカサを安心させようと笑みを浮かべて明るく振舞った。
「ううん、大丈夫…ありがと、ミカサ。あたし個人の問題で、本当に困ってる人達をほっておくのは嫌だしね」
「いざとなったら、私達が守るから…大丈夫」
クレリアを元気づけるかのように、ミカサが微笑みながら自らの胸をたたくと笑い合う。
そこへ2人より遅れてやって来たセネトは、何やら楽しそうな様子のクレリアとミカサに安堵したように息をついた。
「…元気出たみたいだな?」
その声を聞いたクレリアは、不思議そうな表情を浮かべてセネトを見る。
「あら、遅かったわね。セネト…もしかして、あんたも心配してくれたわけ?」
「ふん、お前にいつもの調子がないと…こっちの調子が狂うからな」
ふいと顔を背けたセネトが振り返ると、そこには少し遅れてやって来たクリストフとイアンが立っていた。
自分の様子を、笑いながら見られていた事に気づいて頬を膨らませる。
「おい、さっさと行こうぜ!馬車の時間だってあるだろう?」
「馬車なら心配はいらない、臨時にだしてもらえるように手配をしておいたからな。あぁ、ほら…――」
こちらに向かって来る馬車を指したイアンはポケットから煙草を取りだすと、一本くわえた。
そして、軽く手を上げると同時に馬車がセネト達のそばで止まる。
――馬車の大きさは、10人くらいが乗ってもゆったりとできる感じのものだった。
「これくらい広ければ、フレネ村までの数時間…のんびりできるだろう?」
くわえていた煙草に火を点けたイアンは、御者から手続きの為の書類とペンを受け取るとサインをする。
「おれとしては、ゆっくり横になれる寝台付きの馬車がよかったがな…」
不満そうに呟くセネトの頭をはたいたクリストフは、馬車の扉を開けた。
「そのままサボられては困りますからね…このくらいの広さで十分でしょう、セネト?さぁ…クレリア、ミカサ」
少女2人に、先に乗るよう声をかけたクリストフはクレリアが乗った後…手続きを終えたらしいイアンと共にミカサの車椅子を乗せる。
そして、そのままクリストフも乗り込み――イアンは扉付近に立つと、くわえていた煙草を携帯用灰皿に入れた。
「…しばらく吸えないのが難点だな」
「おれとしては寝られないのが難点だよ、まったく…」
携帯灰皿をポケットにしまっているイアンの隣で、まだ不満そうに愚痴ったセネトは馬車に乗り込んだ。
セネトの愚痴を耳にしたイアンは苦笑すると、クリストフの隣の席に座った。
扉付近に立ったままのセネトは扉が閉められたのを確認し、クレリアとミカサの座っている席の近くに腰掛ける。
「ちょっと、体勢維持とか大変そうだけど…寝るか」
聞こえるか聞こえないかの、小さな声で呟いたセネトはそのまま座った姿勢のまま眠りはじめた。
馬車は、そのままアルノタウム公国の東部にあるフレネ村へ向けて出発したのだった……
――フレネ村は、アルノタウム公国首都よりもかなり離れた場所にある。
首都経由で行くと比較的平坦な道で行ける為、時短ができるのでだいぶ近く感じるのだ。
……とはいえ、馬車に乗って三時間くらいかかるのだが。
セネト達はフローラント退魔士国からアルノタウム公国…そして、東部にあるフレネ村へ移動するのは合計7時間くらいはかかる長旅となった。
(…ったく、遠すぎなんだよ。フレネ村まで――)
心の中で文句を言ったセネトが外の景色に目を向けると、出発した時は昼過ぎだったのにもうすっかり夕焼け空になっていた。
少し身体を起こしたセネトは、前の方に座っているミカサとクレリアの様子を窺ってみる。
2人は乗っているだけの時間に飽いたのか、互いの身体を支えにして眠ってしまっていた。
次にセネトが見たのは後ろの方に座っているクリストフとイアンの様子で、2人は何かの書類を手に話込んでいるようだ。
前の方に座っているクレリアとミカサに気を使ってか、その話声はとても小さい。
(あの様子だと…まだ着かないようだな。なら、もうひと眠りするか)
そう考えたセネトは小さく欠伸をすると姿勢を崩して瞼を閉じて、馬車の揺れに身を委ねながら眠りはじめたのだった。
***
複雑そうな面持ちで、無言で考え込んでいるクレリアを見たミカサが心配そうに声をかける。
「…まだ納得できてないのなら、わたしからクリストフ様に言っておくよ?」
友として…そして、事情を知っているだけにクレリアの事が心配だった。
ミカサの気持ちに気づいたクレリアは、背筋を伸ばすと自分の頬を2回たたく。
そして、ミカサを安心させようと笑みを浮かべて明るく振舞った。
「ううん、大丈夫…ありがと、ミカサ。あたし個人の問題で、本当に困ってる人達をほっておくのは嫌だしね」
「いざとなったら、私達が守るから…大丈夫」
クレリアを元気づけるかのように、ミカサが微笑みながら自らの胸をたたくと笑い合う。
そこへ2人より遅れてやって来たセネトは、何やら楽しそうな様子のクレリアとミカサに安堵したように息をついた。
「…元気出たみたいだな?」
その声を聞いたクレリアは、不思議そうな表情を浮かべてセネトを見る。
「あら、遅かったわね。セネト…もしかして、あんたも心配してくれたわけ?」
「ふん、お前にいつもの調子がないと…こっちの調子が狂うからな」
ふいと顔を背けたセネトが振り返ると、そこには少し遅れてやって来たクリストフとイアンが立っていた。
自分の様子を、笑いながら見られていた事に気づいて頬を膨らませる。
「おい、さっさと行こうぜ!馬車の時間だってあるだろう?」
「馬車なら心配はいらない、臨時にだしてもらえるように手配をしておいたからな。あぁ、ほら…――」
こちらに向かって来る馬車を指したイアンはポケットから煙草を取りだすと、一本くわえた。
そして、軽く手を上げると同時に馬車がセネト達のそばで止まる。
――馬車の大きさは、10人くらいが乗ってもゆったりとできる感じのものだった。
「これくらい広ければ、フレネ村までの数時間…のんびりできるだろう?」
くわえていた煙草に火を点けたイアンは、御者から手続きの為の書類とペンを受け取るとサインをする。
「おれとしては、ゆっくり横になれる寝台付きの馬車がよかったがな…」
不満そうに呟くセネトの頭をはたいたクリストフは、馬車の扉を開けた。
「そのままサボられては困りますからね…このくらいの広さで十分でしょう、セネト?さぁ…クレリア、ミカサ」
少女2人に、先に乗るよう声をかけたクリストフはクレリアが乗った後…手続きを終えたらしいイアンと共にミカサの車椅子を乗せる。
そして、そのままクリストフも乗り込み――イアンは扉付近に立つと、くわえていた煙草を携帯用灰皿に入れた。
「…しばらく吸えないのが難点だな」
「おれとしては寝られないのが難点だよ、まったく…」
携帯灰皿をポケットにしまっているイアンの隣で、まだ不満そうに愚痴ったセネトは馬車に乗り込んだ。
セネトの愚痴を耳にしたイアンは苦笑すると、クリストフの隣の席に座った。
扉付近に立ったままのセネトは扉が閉められたのを確認し、クレリアとミカサの座っている席の近くに腰掛ける。
「ちょっと、体勢維持とか大変そうだけど…寝るか」
聞こえるか聞こえないかの、小さな声で呟いたセネトはそのまま座った姿勢のまま眠りはじめた。
馬車は、そのままアルノタウム公国の東部にあるフレネ村へ向けて出発したのだった……
――フレネ村は、アルノタウム公国首都よりもかなり離れた場所にある。
首都経由で行くと比較的平坦な道で行ける為、時短ができるのでだいぶ近く感じるのだ。
……とはいえ、馬車に乗って三時間くらいかかるのだが。
セネト達はフローラント退魔士国からアルノタウム公国…そして、東部にあるフレネ村へ移動するのは合計7時間くらいはかかる長旅となった。
(…ったく、遠すぎなんだよ。フレネ村まで――)
心の中で文句を言ったセネトが外の景色に目を向けると、出発した時は昼過ぎだったのにもうすっかり夕焼け空になっていた。
少し身体を起こしたセネトは、前の方に座っているミカサとクレリアの様子を窺ってみる。
2人は乗っているだけの時間に飽いたのか、互いの身体を支えにして眠ってしまっていた。
次にセネトが見たのは後ろの方に座っているクリストフとイアンの様子で、2人は何かの書類を手に話込んでいるようだ。
前の方に座っているクレリアとミカサに気を使ってか、その話声はとても小さい。
(あの様子だと…まだ着かないようだな。なら、もうひと眠りするか)
そう考えたセネトは小さく欠伸をすると姿勢を崩して瞼を閉じて、馬車の揺れに身を委ねながら眠りはじめたのだった。
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