3話:幼い邪悪[前編]
「…結局、おれの休暇は休暇じゃなかった。何で、親父と一緒にアンデット狩りをしないといけなかったんだよ…しかも、ネーメットのじいさんまでいたし」
大きくため息をついた赤灰色の髪の青年が、協会内の廊下を歩きながら独り愚痴る。
それは遡る事、数日前――久しぶりに休暇がとった赤灰色の髪をした青年は、早朝に叩き起こされたのだ。
そして、半分寝ぼけている彼に父親が笑いながら声をかけた。
「――行くぞ…セネト、楽しいピクニックに」
何で父親とピクニックに行かないといけないんだ…と思った赤灰色の髪の青年・セネトだが、母親の説得もあって支度するはめになったわけである。
身支度を終えて父親の元へ行くと、そこには前の仕事で組んだネーメットの姿もあった。
そして、母親手作りの弁当を持ってそのまま楽しいピクニック…もとい、楽しいアンデット狩りに出かけたのだった。
「あれじゃ、休暇とは言えないだろうが…しかも、おれのノルマに加算されないし」
「ふーん…実に、有意義な休暇を過ごしたのねぇ~」
突然、声をかけられ足を止めたセネトは、背後の気配にため息をついて眉を顰めた。
そして、あえて嫌そうな面持ちを隠そうともせずゆっくりと振り返る。
「…全然、有意義じゃないだろう。というか、何でお前がここにいるんだ?クレリア…」
セネトに声をかけた人物は紺色の長い髪をした、セネトとそう歳は変わらない少女・クレリアだ。
クレリアはセネトの言動を無視すると、口元だけに笑みを浮かべる。
「別に、あんたに用があって待ってたわけじゃないわ。あたしはクリストフに呼ばれているの、ちなみにミカサは後から来るんだけどね」
「げっ…お前も、クリストフのやつに呼ばれているのかよ。つーことは、もしかして――お前と組むのか?」
本当にうんざりとした様子のセネトが呟くと、クレリアは目を丸くさせた。
「えっ!?あんたも…って事は――」
お互い上司であるクリストフから何も聞かされておらず、向かい合ったまま動きを止める。
そして、お互い同時に走り出すが…2人共、走る速さはほぼ同じだ。
お互い罵り合いながらクリストフに来るよう言われた会議室を目指すこの2人は、ほぼ同時期に退魔士となったのだが性格的に合わないのか…こうして言い合っていたりしている。
その為、クリストフに喧嘩両成敗されているのがよく目撃されているという……
走ったおかげか、指定された時間より早く辿り着いた2人は同時に扉に体当たりして扉を破壊した。
「…な、何だぁ!?」
長テーブルに再び座っていたらしいイアンが慌てたようにテーブルから降りるとクリストフの前に立ち、破壊され砂埃をあげている扉付近に視線を向ける。
イアンの後ろにいるクリストフは訪問者が誰なのか気づいたのだろう、大きくため息をついた。
クリストフのため息で、訪問者の正体に気づいたイアンは呆れたように扉を破壊して入室した彼らに声をかける。
「…あぁ、お前らか。何やってるんだ――会議室 の扉を破壊して」
「仕方ないだろ!こいつが、おれの邪魔をしてきたんだ!大体、何で…」
いち早く顔を上げたセネトが、クレリアを指差すとイアンとクリストフに訴えかけた。
その、セネトの頭を押さえつけたクレリアは押さえている方とは違う手でセネトを指す。
「何で、こいつなの!?あたしとミカサだけじゃ、だめなの!?大体、協会一 "トラブルメーカー"となんか…危険すぎるでしょ?」
「色々と言いたい事はありますが――とりあえず、今すぐ起きてそこに座りなさい。話は、それからですよ…」
ゆっくりと立ち上がったクリストフは頬をひきつらせて、優しい口調でセネトとクレリアに言った。
その表情で察したセネトとクレリアは慌てて起き上がると、その場で正座をする。
2人は、わかっているのだ……
彼がこういう表情をした時、説教をしながら魔法でお仕置きしてくるという事に――
「…さすがに、わかっているな。だが、わかっていて…やらかすというのも、どうかと思うが?」
感心したように頷いたイアンは正座する2人を見ながら、再び長テーブルに座り直した。
「…うっさいな!こういう時は、大人しくしておいた方がいいって……」
「そーそー、第六感ってやつ?それが言ってんのよ」
小さく悪態をつくセネトに同意したクレリアも、何度も頷いて答える。
…どうやら、2人はまだ反省していないようだ。
それに気づいたクリストフが呆れながら、術式を描きだして魔力を込めた。
「なるほど…反省する気はなし、ですか?」
術式から冷えた風が吹き、セネトとクレリアの身体を冷気が包み込む…――
「つ、つめたっ…」
「な、何…?」
わけがわからないでいるセネトとクレリアを包み込んだ冷気が、クリストフの合図で白い霜のような氷に変化してそのまま2人の腰から下を腕と一緒に拘束した。
あまりの冷たさにセネトとクレリアは声にならない叫びをあげているが、クリストフとイアンは気にせず破壊された扉の片づけをはじめる。
扉だったものを出入口横の壁に立てかけながら、思い出したかのようにイアンは口を開いた。
「まったく、協会を破壊するのが奴ら ではなく仲間というのも…まったく笑えん話だ。そういえば、先日クリストフの部屋も破壊したらしいな」
「それ…おれじゃなくて、お前の隣にいるクリストフ本人だって!だから、おれは破壊してねーって」
冷たさに耐えながら、セネトが顎でクリストフを指しているがイアンはそれを黙殺する。
「お前が元凶だろう、アホが」
セネトの額をデコピンしたイアンは何か気づいたらしく、そのまま廊下の方へ出た。
しばらくして、車椅子の少女と共に戻ってくると再び長テーブルの上に座り直し置いていた依頼書を手にとる。
車椅子の少女は元扉付近に立つクリストフや長テーブルに座るイアン…そして、氷で拘束されているセネトとクレリアの姿を順に見ると首をかしげた。
…おそらく、何があったのかを瞬時に理解したのだろう。
「あの、もしかして…また?」
「ミカサ、何でもありませんよ…この2人は望んでこんな事をしているのだから、ねぇ…?」
車椅子の少女・ミカサに微笑みながら答えたクリストフは、同意を求めるようにセネトとクレリアに視線を向けた。
その微笑みに、セネトとクレリアは何か恐ろしいものを感じたらしく小さく何度も頷く。
「クリストフのやつ…」
「目が、全然笑ってなーい…」
聞こえるか聞こえないかの、小さな声で2人は呟くのだった……
***
大きくため息をついた赤灰色の髪の青年が、協会内の廊下を歩きながら独り愚痴る。
それは遡る事、数日前――久しぶりに休暇がとった赤灰色の髪をした青年は、早朝に叩き起こされたのだ。
そして、半分寝ぼけている彼に父親が笑いながら声をかけた。
「――行くぞ…セネト、楽しいピクニックに」
何で父親とピクニックに行かないといけないんだ…と思った赤灰色の髪の青年・セネトだが、母親の説得もあって支度するはめになったわけである。
身支度を終えて父親の元へ行くと、そこには前の仕事で組んだネーメットの姿もあった。
そして、母親手作りの弁当を持ってそのまま楽しいピクニック…もとい、楽しいアンデット狩りに出かけたのだった。
「あれじゃ、休暇とは言えないだろうが…しかも、おれのノルマに加算されないし」
「ふーん…実に、有意義な休暇を過ごしたのねぇ~」
突然、声をかけられ足を止めたセネトは、背後の気配にため息をついて眉を顰めた。
そして、あえて嫌そうな面持ちを隠そうともせずゆっくりと振り返る。
「…全然、有意義じゃないだろう。というか、何でお前がここにいるんだ?クレリア…」
セネトに声をかけた人物は紺色の長い髪をした、セネトとそう歳は変わらない少女・クレリアだ。
クレリアはセネトの言動を無視すると、口元だけに笑みを浮かべる。
「別に、あんたに用があって待ってたわけじゃないわ。あたしはクリストフに呼ばれているの、ちなみにミカサは後から来るんだけどね」
「げっ…お前も、クリストフのやつに呼ばれているのかよ。つーことは、もしかして――お前と組むのか?」
本当にうんざりとした様子のセネトが呟くと、クレリアは目を丸くさせた。
「えっ!?あんたも…って事は――」
お互い上司であるクリストフから何も聞かされておらず、向かい合ったまま動きを止める。
そして、お互い同時に走り出すが…2人共、走る速さはほぼ同じだ。
お互い罵り合いながらクリストフに来るよう言われた会議室を目指すこの2人は、ほぼ同時期に退魔士となったのだが性格的に合わないのか…こうして言い合っていたりしている。
その為、クリストフに喧嘩両成敗されているのがよく目撃されているという……
走ったおかげか、指定された時間より早く辿り着いた2人は同時に扉に体当たりして扉を破壊した。
「…な、何だぁ!?」
長テーブルに再び座っていたらしいイアンが慌てたようにテーブルから降りるとクリストフの前に立ち、破壊され砂埃をあげている扉付近に視線を向ける。
イアンの後ろにいるクリストフは訪問者が誰なのか気づいたのだろう、大きくため息をついた。
クリストフのため息で、訪問者の正体に気づいたイアンは呆れたように扉を破壊して入室した彼らに声をかける。
「…あぁ、お前らか。何やってるんだ――
「仕方ないだろ!こいつが、おれの邪魔をしてきたんだ!大体、何で…」
いち早く顔を上げたセネトが、クレリアを指差すとイアンとクリストフに訴えかけた。
その、セネトの頭を押さえつけたクレリアは押さえている方とは違う手でセネトを指す。
「何で、こいつなの!?あたしとミカサだけじゃ、だめなの!?大体、協会
「色々と言いたい事はありますが――とりあえず、今すぐ起きてそこに座りなさい。話は、それからですよ…」
ゆっくりと立ち上がったクリストフは頬をひきつらせて、優しい口調でセネトとクレリアに言った。
その表情で察したセネトとクレリアは慌てて起き上がると、その場で正座をする。
2人は、わかっているのだ……
彼がこういう表情をした時、説教をしながら魔法でお仕置きしてくるという事に――
「…さすがに、わかっているな。だが、わかっていて…やらかすというのも、どうかと思うが?」
感心したように頷いたイアンは正座する2人を見ながら、再び長テーブルに座り直した。
「…うっさいな!こういう時は、大人しくしておいた方がいいって……」
「そーそー、第六感ってやつ?それが言ってんのよ」
小さく悪態をつくセネトに同意したクレリアも、何度も頷いて答える。
…どうやら、2人はまだ反省していないようだ。
それに気づいたクリストフが呆れながら、術式を描きだして魔力を込めた。
「なるほど…反省する気はなし、ですか?」
術式から冷えた風が吹き、セネトとクレリアの身体を冷気が包み込む…――
「つ、つめたっ…」
「な、何…?」
わけがわからないでいるセネトとクレリアを包み込んだ冷気が、クリストフの合図で白い霜のような氷に変化してそのまま2人の腰から下を腕と一緒に拘束した。
あまりの冷たさにセネトとクレリアは声にならない叫びをあげているが、クリストフとイアンは気にせず破壊された扉の片づけをはじめる。
扉だったものを出入口横の壁に立てかけながら、思い出したかのようにイアンは口を開いた。
「まったく、協会を破壊するのが
「それ…おれじゃなくて、お前の隣にいるクリストフ本人だって!だから、おれは破壊してねーって」
冷たさに耐えながら、セネトが顎でクリストフを指しているがイアンはそれを黙殺する。
「お前が元凶だろう、アホが」
セネトの額をデコピンしたイアンは何か気づいたらしく、そのまま廊下の方へ出た。
しばらくして、車椅子の少女と共に戻ってくると再び長テーブルの上に座り直し置いていた依頼書を手にとる。
車椅子の少女は元扉付近に立つクリストフや長テーブルに座るイアン…そして、氷で拘束されているセネトとクレリアの姿を順に見ると首をかしげた。
…おそらく、何があったのかを瞬時に理解したのだろう。
「あの、もしかして…また?」
「ミカサ、何でもありませんよ…この2人は望んでこんな事をしているのだから、ねぇ…?」
車椅子の少女・ミカサに微笑みながら答えたクリストフは、同意を求めるようにセネトとクレリアに視線を向けた。
その微笑みに、セネトとクレリアは何か恐ろしいものを感じたらしく小さく何度も頷く。
「クリストフのやつ…」
「目が、全然笑ってなーい…」
聞こえるか聞こえないかの、小さな声で2人は呟くのだった……
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