3話:幼い邪悪[前編]

「――これで6人目・・・か…あの村の人間に、夜間は特に警戒するよう通達した上で常駐する退魔士に任せていただろう?確か……」

依頼書を読んだ右目に眼帯をした男は、首をかしげると呟いた。
彼の持つ依頼書は協会の受付で貰ってきたもので、そこには現場の状況などが書かれているのだ。

「…半月は何事も起こらなかったので、油断していたらしいのです。さすがに、危機感を――って、少し遅い気もしますが…感じたらしく、村長が依頼書それをだしたようですよ」

眼帯の男の問いに答えたのは、傍らにいる銀髪の青年だ。
この2人が今いるのは協会にいくつかある会議室のひとつで、室内にある長テーブルの上に座っているのが眼帯の男で銀髪の青年はきちんと椅子に座っていた。

「遅すぎるだろう、それは…まぁ、あの村は昔から余所者を入れたがらないからな」

呆れを含みながら言った眼帯の男は、持っていた依頼書を自ら座っている長テーブルの上に投げ置く。
そして、その依頼書を横目に言葉を続けた。

「ふん…必要人数が法術が使えるものを含めて5~6人、か。まったく…面倒事になってから助けを求めてくるとは――」
「一応、応援を他のチームに頼んでみたんですが…やはり断られてしまいましたよ」

銀髪の青年がそう言うと、大きくため息をつく。
――実は、今回の依頼…この銀髪の青年と部下3人、他のチーム合同での仕事になるはずだったのだ。

「…結局、すべてに断られたか」

眼帯の男が自分の灰黒髪をかきながら訊ねると、銀髪の青年はゆっくりと頷いた。
やはりな…と、小さくため息をついた眼帯の男は長テーブルから降りて言葉を続ける。

「一応、俺も出られるよう…予定を空けているが?」
「…ありがたい申し出ですが、いいんですか?その…大変ですよ?」

申し訳なさそうに俯いた銀髪の青年の顔を覗き込んで、眼帯の男は優しく安心させるように声をかけた。

「ああ…今回、お前一人でどうにかできる奴ら・・・・・・・・・ではないだろう?それに、お前一人で全て背負い込まなくてもいいのだから。何かあったら俺を頼れ、クリストフ」
「…そ、そうですね。すみません、イアン…相棒であるあなたに、初めに相談すべきでしたね。ありがとう…」

俯いていた顔をあげた銀髪の青年・クリストフは、眼帯の男・イアンに頭を下げると微笑んだ。

「そういう事だ…少しは、自分の相棒を頼っても罰は当たらないぞ?」

意地の悪い笑みを浮かべたイアンがポケットから煙草を一本取りだして口にくわえると、それに気づいたクリストフは苦笑しながら小さな術式を描きだすと魔力を込めて発動させる。
術式から現れた小さな火をイアンの煙草に点けると、煙草をひと吸いしたイアンは優しくクリストフの頭を撫でた。


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