2話:夢魔の刻印

「――冗談じゃない。私では…私一人では、あの『魔力バカ』を抑えられるわけがないだろう…」

白衣の青年は自分の仕事部屋を右往左往し、時折自らの淡い青色の髪をかきむしっている。

「こうなったら…今いる軽症患者・・・・を、全員重症化・・・・・させてしまおうか…?」

何やら不吉な事を口走っているようだが、本人は必死であった。
どうすれば、同僚に頼まれた事を回避できるのか…そればかりを考えている様子だ。

「…ネーメットさんも、よく頑張れたものだ」

小さく呟いた白衣の青年は、水色の瞳を窓の外へと向けるのだった。


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