化猫 序の幕
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客間に通された画師_薔[しき]は外から聞こえる蝉の声に隠れた"音"に耳を澄ましていた
湯呑に淹れられた茶はすっかり空になっており、手持無沙汰となった薔にはやることがない
成り行きで一晩泊まることとなった武家屋敷
その屋敷を覆う奇妙な空気の重さに画師は眉を
人形のような顔に人らしさが現れる
『………何を
ぽつりと独り
だが…
カリ…カリカリ…
どこからか聞こえる何かが柱を削る音
その音に薔の眉間に出来た皺はより深くなる
『…こりゃぁ、厄介になりそうだ』
*
*
場所は変わり、土間では下働きの娘_加世が謎の若い男_薬売りと駄弁っていた
今日行われている婚礼について話す内に、内容は招かれた流れの画師へと移っていた
「…画師?」
「そうそう、水江様が真央様の花嫁姿を残したいからってわざわざ呼んだのよ。それがとっっっても綺麗な顔立ちの若い男で!真央様も思わず赤くなっちゃって!あれじゃあ塩野様の家に行っても忘れられそうにないわね…」
「おやおや…それはまた お気の毒に」
婚礼の日に一目惚れしてしまう程美麗な男に出逢ってしまう花嫁の運命に薬売りは思わず苦笑する
叶わぬ恋と呼ぶにはあまりに薄っぺらく儚い想いである
加世は少しだけ見れた画師の美しさと奇抜さを更に薬売りに話し出す
「変わった
「ほぉ…」
思案顔の薬売りを見た加世は先程からずっと自分ばかりが話していることに気が付き、冷静になる
「あ、こんな事話してると、またさとさんに怒鳴られちゃう…」
「まま、お返しにいいものをご覧にいれましょう」
薬売りは屋敷について話してもらった礼にと荷物の引き出しを新たに開ける
どんな物が出てくるのかと楽しみにする加世だが、近くから聞こえた鼠の鳴き声に悲鳴を上げる
そこで薬売りは土間中にある鼠捕りの多さに疑問を抱く
加世もその数の異常さには以前から疑問があったのだと言う
"猫を飼えば良い"
薬売りのその提案に加世も賛成なのだが、どうやら屋敷には猫が嫌いな人間が居るらしく、それが原因でこの有り様のようだ
「加世!!」
「うぇえ!?」
「弥平に聞いて来てみたら、こんな時に油売ってるなんて!」
土間に荒々しく怒鳴り込んできたのは、画師の案内をしていたさとだった
どうやら先程土間に来た下働きの老人_弥平がさとに告げ口したらしく、さとは大層ご立腹の様子である
頭を下げて薬を
折角の楽しみを奪われた加世は嫌々ながらも水汲みへと出ていった
「全く…」
「お騒がせしてすみませんね。すぐ、出ていき ますんで」
薄い金色の髪から覗く薄紫の口紅に歌舞伎の隈取のような化粧
しかしそれすらも魅力に昇華させる程薬売りの顔は整っていた
画師に続く美麗な男にさとは頬を再び染めてしまう
愛想笑いも浮かべない画師に比べ、薬売りの妖艶な微笑には女をその気にさせる何かがあった
果たしてこれは偶然か
それとも、必然か