1章
夢小説設定
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こんな経験はあるだろうか
自分が原因なのに、当人そっちのけで第三者同士が口論を始める現象
今、私の前でそれは起きている
「この少女は無害だ!こちらの話にちゃんと受け答え出来るだけの知性と理性を持っている!彼女は普通の子どもと同じ道を歩める筈だ!!無理に隔離する方が少女の精神面に負担を掛けるし、何より彼女の個性の中にある人格がそれを許さない!!」
「オールマイトに"許さない"と言わせるだけの力を持っているのなら尚の事監視すべきだ!連中の話が事実なら彼女には何かしら異常が出る可能性が高い!優先すべきは市民の安全だと常日頃に言っているお前が敵 の存在を隠蔽するなど許される筈ないだろう!!」
「彼女は敵などではない!!!」
研究所から連れ出されて着いたのはとあるビルの応接室
そこで、かれこれ数十分は続いているこのやり取り
平行線が続くその先に、果たして彼等が納得する結末はあるのだろうか?
椅子に座る間もなく始まった舌戦を傍観するしか出来ない私に誰も目を向けない
オールマイトも目の前で反対する人達との攻防で周りが見えていない
あんな約束、しない方が良かったのかもしれない
そうすれば、彼をこんな風に困らせることもなかったのに…新しい世界に来て精神も身体に引っ張られたのだろうか
オールマイトの存在に甘えなければ、彼にこんな損な役目を背負わせなかっただろうに…
私が撒いた種が、他人の足を絡めとるのか
1人自己嫌悪に浸っていると、突然フワリと身体が浮いた
自分を持ち上げる腕の先、手の甲には変わった赤い入れ墨が入っていて、その紋様が目に焼き付いた
《オイオイ、こんな可愛いお嬢ちゃんほったらかしにして大の大人が何してんだよ》
『……?』
それは黒髪を逆立ててサングラスを掛けた若い男の人だった
私の勘違いでなければ恐らく、この男は私の"影"から出てきた
ということは、彼は私の個性の1人なんだ
男の声で周りに居た大人達の視線を一身に浴びるハメになった私は無意識に身体が強張る
それが引き金なのかは分からないが、私の影からプライドと、見たことのない人達が現れる
「これは…!?」
「宝少女!!」
「個性が暴走したのか!?」
《ハァ~ア、プライドが任せるから放っといたけど…さっきからギャーギャー喚いてるだけかよ、ゴミ共が》
《仕方ないわ、どれだけ利口ぶっていても所詮は人間。愚かな生き物なのだから》
《これ以上話が進まないのであれば、我々も強硬手段を取らせてもらうとするかね》
《食べていい?こいつら、食べていい?》
《話、聞くの…メンドクセー》
研究所で聞いたあの声の持ち主達は中々個性的な姿をしていた
その中でも異彩を放つのはやはりプライドだ
壁を伝って部屋の中を黒く染め、無数にある目で大人達を睨む
その視線だけで人が殺せそうだ
《オールマイト…何なんですか、この茶番は。私はこんな下らないことをさせる為に貴方に宝の身を一旦預けた訳ではありません》
「プライド、落ち着いてくれ!ここで攻撃しては宝少女の自由が無くなってしまう!!」
《落ち着いていますよ、落ち着かなければいけないのは貴方達の方です。生産性のない会話をするのは勝手ですが、当人の居ない場所でするか…せめて椅子に座らせてあげるくらいのことはして頂けませんか?彼女は人形ではないのですよ》
「「「!!」」」
プライドの言葉でオールマイトは顔を青くして私に駆け寄った
だが、近付くオールマイトに比例して私は彼から遠ざけられる
言うまでも無く、私を抱えている男が原因だ
《俺達のだーいじなご主人サマをぞんざいに扱う連中に気安く触らせられねぇな》
「ッ……」
オールマイトの手は空を掻く間もなく固まり、下唇を噛んで空気を握った
彼は何も悪くない、そう思って伸ばした私の手を隣りに立つ女性が片手でそっと握ってそれを制す
何もするなと目で語った女性はそのまま艶やかで哀愁漂う笑みを浮かべて大人達に向き合う
《酷い話だわ、他人の勝手すぎる都合で生き方を決めつけられるなんて…どれだけ善人ぶっていても根元は薄汚いものね》
「なんだとッ!?個性ごときが何を!」
《"個性ごとき"に言われなきゃ分からないのね、可哀想なひと…。分かりやすく教えてあげるわ。貴方達はあの狂った科学者と同じ、命を軽んじる低能な人種だと言っているのよ》
「な…ッ!ふざけるな!!あんな人の道を外れた敵なんぞと一緒にするな!!」
《何が違うのよ、この世に生を受けた宝を"道具"・"兵器"という認識で会話していたじゃない。だから宝を危険視するのでしょう?強い個性を持つ子どもなんて探せばいくらでも居るこの世界で、貴方達は宝だけに酷い仕打ちをしようと言っていたのよ。それのどこが違うと言うの?こんなのただの差別だわ》
女性の言葉が本当なら、私と同じく変わった個性の子どもも居るのだろう
だけど、私にはその子達との違いが大きすぎる
それを、大人達は親切に教えてくれた
「っ、し、しかし!その子は人造人間なんだぞ!?お前達も普通の個性とは違う!何が起きるか分からない危険な存在を野放しにして、万が一のことがあれば――」
大人の中でも比較的若い男が最後まで話す前に、私は震える声で静かに"命じた"
『ぷらいど、だめ』
自分が原因なのに、当人そっちのけで第三者同士が口論を始める現象
今、私の前でそれは起きている
「この少女は無害だ!こちらの話にちゃんと受け答え出来るだけの知性と理性を持っている!彼女は普通の子どもと同じ道を歩める筈だ!!無理に隔離する方が少女の精神面に負担を掛けるし、何より彼女の個性の中にある人格がそれを許さない!!」
「オールマイトに"許さない"と言わせるだけの力を持っているのなら尚の事監視すべきだ!連中の話が事実なら彼女には何かしら異常が出る可能性が高い!優先すべきは市民の安全だと常日頃に言っているお前が
「彼女は敵などではない!!!」
研究所から連れ出されて着いたのはとあるビルの応接室
そこで、かれこれ数十分は続いているこのやり取り
平行線が続くその先に、果たして彼等が納得する結末はあるのだろうか?
椅子に座る間もなく始まった舌戦を傍観するしか出来ない私に誰も目を向けない
オールマイトも目の前で反対する人達との攻防で周りが見えていない
あんな約束、しない方が良かったのかもしれない
そうすれば、彼をこんな風に困らせることもなかったのに…新しい世界に来て精神も身体に引っ張られたのだろうか
オールマイトの存在に甘えなければ、彼にこんな損な役目を背負わせなかっただろうに…
私が撒いた種が、他人の足を絡めとるのか
1人自己嫌悪に浸っていると、突然フワリと身体が浮いた
自分を持ち上げる腕の先、手の甲には変わった赤い入れ墨が入っていて、その紋様が目に焼き付いた
《オイオイ、こんな可愛いお嬢ちゃんほったらかしにして大の大人が何してんだよ》
『……?』
それは黒髪を逆立ててサングラスを掛けた若い男の人だった
私の勘違いでなければ恐らく、この男は私の"影"から出てきた
ということは、彼は私の個性の1人なんだ
男の声で周りに居た大人達の視線を一身に浴びるハメになった私は無意識に身体が強張る
それが引き金なのかは分からないが、私の影からプライドと、見たことのない人達が現れる
「これは…!?」
「宝少女!!」
「個性が暴走したのか!?」
《ハァ~ア、プライドが任せるから放っといたけど…さっきからギャーギャー喚いてるだけかよ、ゴミ共が》
《仕方ないわ、どれだけ利口ぶっていても所詮は人間。愚かな生き物なのだから》
《これ以上話が進まないのであれば、我々も強硬手段を取らせてもらうとするかね》
《食べていい?こいつら、食べていい?》
《話、聞くの…メンドクセー》
研究所で聞いたあの声の持ち主達は中々個性的な姿をしていた
その中でも異彩を放つのはやはりプライドだ
壁を伝って部屋の中を黒く染め、無数にある目で大人達を睨む
その視線だけで人が殺せそうだ
《オールマイト…何なんですか、この茶番は。私はこんな下らないことをさせる為に貴方に宝の身を一旦預けた訳ではありません》
「プライド、落ち着いてくれ!ここで攻撃しては宝少女の自由が無くなってしまう!!」
《落ち着いていますよ、落ち着かなければいけないのは貴方達の方です。生産性のない会話をするのは勝手ですが、当人の居ない場所でするか…せめて椅子に座らせてあげるくらいのことはして頂けませんか?彼女は人形ではないのですよ》
「「「!!」」」
プライドの言葉でオールマイトは顔を青くして私に駆け寄った
だが、近付くオールマイトに比例して私は彼から遠ざけられる
言うまでも無く、私を抱えている男が原因だ
《俺達のだーいじなご主人サマをぞんざいに扱う連中に気安く触らせられねぇな》
「ッ……」
オールマイトの手は空を掻く間もなく固まり、下唇を噛んで空気を握った
彼は何も悪くない、そう思って伸ばした私の手を隣りに立つ女性が片手でそっと握ってそれを制す
何もするなと目で語った女性はそのまま艶やかで哀愁漂う笑みを浮かべて大人達に向き合う
《酷い話だわ、他人の勝手すぎる都合で生き方を決めつけられるなんて…どれだけ善人ぶっていても根元は薄汚いものね》
「なんだとッ!?個性ごときが何を!」
《"個性ごとき"に言われなきゃ分からないのね、可哀想なひと…。分かりやすく教えてあげるわ。貴方達はあの狂った科学者と同じ、命を軽んじる低能な人種だと言っているのよ》
「な…ッ!ふざけるな!!あんな人の道を外れた敵なんぞと一緒にするな!!」
《何が違うのよ、この世に生を受けた宝を"道具"・"兵器"という認識で会話していたじゃない。だから宝を危険視するのでしょう?強い個性を持つ子どもなんて探せばいくらでも居るこの世界で、貴方達は宝だけに酷い仕打ちをしようと言っていたのよ。それのどこが違うと言うの?こんなのただの差別だわ》
女性の言葉が本当なら、私と同じく変わった個性の子どもも居るのだろう
だけど、私にはその子達との違いが大きすぎる
それを、大人達は親切に教えてくれた
「っ、し、しかし!その子は人造人間なんだぞ!?お前達も普通の個性とは違う!何が起きるか分からない危険な存在を野放しにして、万が一のことがあれば――」
大人の中でも比較的若い男が最後まで話す前に、私は震える声で静かに"命じた"
『ぷらいど、だめ』